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第41話

 「キョウヘイ、もういいから試合を見ようぜ。次の対戦相手がどこのクラスになるか見なきゃ。」


「それもそうだな。でも次の対戦相手は決まってると思うぞ。」


「え?あー、言われてみればそうかもしれないな。さっきから女子の『キャーキャー!』言う声が聞こえてるからな。」


「え?そんな強いクラスがいるの?」


カジワラが俺とキョウヘイの会話を聞いて、疑問に思ったことを聞いてきた。


「とりあえず、試合を見ながら説明するよ。ほら、今ボールをドリブルしている選手のクラスが俺とキョウヘイが次の試合で当たると思っている3-2だよ。」


「あのクラス?そんなに背の高い選手がいないし強そうに見えないけど?」


「スコアボード見てみなよ。」


俺に促されてカジワラとハタケはスコアボードを見た。そして2人とも点数を見て愕然としていた。


「え?まだ5分しか経っていないのに25点も取ってる!相手チームが弱いわけじゃないよね?」


「たぶん3回戦だからそれはないよ。3-2にはすごい点取り屋がいるんだよ。ほら、今ボールをパスカットした人!」


俺がカジワラとハタケに3-2の点取り屋を説明しようと指差した時に、試合を観戦していた女子たちの黄色い声が上がった。


「え?なにこれ?まだ点を取ったわけでもないのに、なんでこんなことになってるの?」


「カジワラ、女子なのに堀田先輩知らないのか?」


「堀田先輩?あー、あの人が堀田先輩なのか。聞いたことはあるよ。元バスケ部なんだよね?」


「そうそう。元バスケ部でシューティングガ……。」


「キャー!!」


俺がカジワラとハタケに堀田先輩の説明をしている最中に堀田先輩が3ポイントシュートを決めて、周りの女子たちが黄色い声を上げた。


堀田先輩は2年までバスケ部だったが、家の方針から3年では部活をやらずに受験勉強に集中しているらしい。噂では父親が医者で堀田先輩も医者になることを望まれていて、部活は高校2年までと決められていたらしい。身長は180センチいくかいかないかぐらいだが、顔もイケメンで頭も良く、性格もいいらしいので女子人気は高かった。同じようなスペックの男子なら俺の知り合いにもいるが、そいつは趣味が漫画だから少し残念イケメンだと周りの女子から思われていた。


「でも、いくら元バスケ部の堀田先輩がいるからって、こんなに点を取れるの?」


カジワラがもっともな疑問を聞いてきた。


「確かに堀田先輩しか上手くなかったらこんなに点は取れないと思うけど、3-2の選手は昼休みによくバスケをして遊んでいる先輩ばかりだから、堀田先輩をうまくサポートもできるし自分たちで点も取れるから、まだ6分ぐらいしか経っていないのに点を28点も取れるんだよ。ほらまた決めた。」


俺が説明している間にも堀田先輩がまたシュートを決めて2点取っていた。そして周りの女子たちから黄色い声がまた上がった。


「キョウヘイどうだ?3-2にうちのクラスが勝てると思うか?」


俺は半ば諦めかけていたがキョウヘイに勝機があるか尋ねた。


「セイ……諦めたらそこで試合終了だぞ。」


「キョウヘイ……お前それ言いたいだけだろ?」


俺がツッコむとキョウヘイは照れくさそうに笑いながら、「バレたか。だって一度は言ってみたいセリフじゃん。」と答えた。


「確かに一度は言ってみたいセリフだけどな。」


「だよな。まあ勝てばラッキー、負けて当たり前の精神でやるしかないな。」


「そうだな。」


3-2と3-8の試合は39対2で3-2の勝利だった。残りの2試合も観戦したが、3-2より強いチームはいなかった。


そしていよいよ準決勝第1試合2-3対3-2が始まった。うちのクラスの出場選手は俺、キョウヘイ、八木、伊東、近藤だった。ちなみにこの試合は俺とキョウヘイと八木が出場するのはすんなり決まった。伊東、近藤、清水が怖気づいて出たがらなかったからだ。でもあと2人は出なくちゃいけないので、仕方なくじゃんけんをして勝った伊東と近藤が出ることになった。


結果から言ってしまうが5対33で俺たちのクラスがぼろ負けした。

調子が良かったのは最初のジャンプボールで八木が勝ったところまでで、あとはいい所がなかった。

戦力である八木とキョウヘイが徹底的にマークされて、さらに伊東と近藤という弱点を突かれてしまいぼろ負けした。一応俺のシュートが1回とキョウヘイの3ポイントシュートが1回決まったが焼け石に水だった。試合中は堀田先輩への黄色い声しか聞こえてこなかった。


試合が終わり、コートから出るとハタケとカジワラが近づいてきた。


「お疲れ。トツカくん。イチノミヤくん。強敵相手に頑張ったと思うよ。ね!レーちゃん。」


ハタケが労いの言葉をかけてくれたが、俺は今回の球技大会で全くカッコいい所をカジワラに見せられなかったので落ち込んでいた。


「うん。私も頑張ったと思うよ。あのクラス相手に点を取れたのがすごいと思うよ。」


カジワラも労いの言葉をかけてくれたが俺はそんな言葉より、「カッコよかったよ!」と言ってもらいたかった。


「ありがとな。カジワラ。ハタケ。そう言ってもらえて嬉しいよ。な!セイ?」


「……うん。そうだな。ホントありがたいよ。」


「ちょっと俺とセイは飲み物買ってくるな。ほらセイ行こうぜ!」


キョウヘイが俺のことを気遣ったのかカジワラから離れられる機会を作ってくれた。


「ああ……。」


俺は返事をしてキョウヘイと学校の自販機まで歩いて行った。自販機に着くとキョウヘイが、「いやー、セイは頑張ったと思うよ!球技大会ではカジワラを振り向かせられなかったかもしれないけど、まだ高校生活が終わるわけじゃないんだからチャンスはあるよ!次のことを考えようぜ!」と俺を慰めてくれた。


そんなキョウヘイに向かって俺は3-2との試合が終わってからずーっと考えていたことを口にした。


「キョウヘイ、俺……。」


「ん?どうした?」


「俺、彼女を作るよ!」


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