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第39話

 俺とキョウヘイが試合に出るためにビブスを着ようとしたら、すでに八木たち4人がビブスを着ていた。そのため残りはまた1枚になっていた。しかし、今度はキョウヘイも黙っておらず、同じクラスの伊東に向かって、「伊東、ちょっといいか?俺、前の試合出てないから次の試合には出たいんで代わってくれないか?」と交代してくれないか頼み始めた。


「え?だったらビブスは1枚余ってるんだし、それを着れば?」


伊東はそう言って、自分が着てるビブスを渡さなかった。


「これはセイが着る分だから。俺の分が必要だから頼んでるんだよ!」


「え~?いくらイチノミヤとトツカが仲良くて、一緒に出たいからって、何で俺が譲らなきゃいけないんだよ?」


伊東は正論と取れなくもないことを言ってまた断った。

キョウヘイはそう思わなかったのか、はぁ~。とため息をつきながら、「俺たちのクラスが勝つためにセイが出た方がいいと思うから、伊東に頼んでるんだよ!だってそうだろう?前の試合で点を取ったのは八木とセイだけなんだから!伊藤たち、3人は八木にボールを回すことしかしてないじゃないか!点を取れる人が試合に出るのは当然じゃないのか?」と説得した。


「分かったよ!トツカが試合に出る理由もイチノミヤが試合に出たいことも分かったよ!でもそれなら、交代するのは俺じゃなくて近藤や清水でもよくない?」


「それもそうだな。じゃあ近藤と清水にも頼んでみるよ。おーい!近藤!清水!ちょっといいか?」


キョウヘイに呼ばれてやって来た近藤と清水にもキョウヘイは訳を説明してビブスを渡してもらおうとした。しかし、近藤と清水もビブスを渡すのを渋ったので、キョウヘイは、「とりあえず3人で話し合って誰でもいいからビブスを俺に渡してくれ!」と指示を出した。

3人は仕方なくじゃんけんをしてビブスを渡す人を決めていた。結局負けた伊東がビブスをキョウヘイに渡していた。そしてなんとか今回は俺とキョウヘイが一緒に試合に出られることになった。


俺とキョウヘイ、八木、近藤、清水の5人がコートに入った時には、すでに相手チームの選手がコート中央で待っていた。ビブスのことでもめていたので、まだ試合開始時間前だが審判の先生は少し何か言いたそうだった。結局注意はされず、試合が始まった。


八木と相手チームの一番背の高くてガタイのいい選手(前の試合で点を取りまくっていた選手だ)がジャンプボールをした。身長は2センチも差はなかったが、ジャンプの高さに差があり八木がジャンプボールに勝ち、近藤がボールをキャッチした。俺はすぐに相手コートから近藤に「パス!パス!」とパスを回すように呼び掛けたが、近藤はフリーだった清水にパスを回し、清水がゴールに走っていた八木にパスを回し、八木がレイアップシュートを決めた。


前の試合と同じような展開だったが、ここからが前の試合の3-6とは違うところで、シュートを決められた1-4の選手がすぐにボールを出し、前の試合で点を取りまくった選手が受け取って速攻を仕掛けてきた。その速攻に反応できたのは八木とキョウヘイだけだった。相手チームの点取り屋がレイアップシュートを決めようとジャンプすると、それをブロックしようと八木とキョウヘイもジャンプした。八木とキョウヘイのブロックは抜けないと判断したのか、相手チームの点取り屋はほぼノールックで味方の選手にパスを出し、受け取った選手がシュートを決めた。前の試合では分からなかったが、1-4には他にも点が取れる選手がいたみたいだ。


だがそれに驚いてる暇はなく、キョウヘイがすぐにボールを出して俺がボールを受け取った。俺はすぐにキョウヘイの家で練習していた距離までゴールにドリブルして近づこうとしたが、相手も速攻を警戒していたのか、すぐに2人の選手に囲まれた。俺はパスを出さずに24秒経ってしまっては良くない!と思い、仕方なく近藤にボールをパスした。そして近藤は即座に八木にパスを出し、パスを受け取った八木は今まで通りレイアップシュートをしようとしたが、今度は相手チームのブロックに阻まれてしまった。


そのシュートしそこなったボールを1-4の選手が取り、そのままドリブルして2-3のコートに攻めて来た。しかしそれを近藤と清水がブロックした。ブロックされた相手チームの選手はすぐに味方にパスを出したが、それをキョウヘイがパスカットした。


ボールを取ったキョウヘイはすぐに1-4のコートに攻めていった。しかしキョウヘイは自分でシュートせずに俺にパスを出した。俺はすぐにシュートを放ったがそれは決まらずにリングに当たって跳ね返った。


そのボールを取った相手チームの選手が俺たちのコートに攻めていったがそれをうちのクラスが防ぎ、八木がボールを取って1-4のコートに攻めていったがそれを相手チームに防がれた。


そのあとの数分間の展開はこっちのチームが攻めていったら相手チームが防ぐかリバウンドを取り、逆に攻めてきて、それをこっちのチームが防ぐかリバウンドを取り、逆に攻めていくのを繰り返すだけで、お互いあまりシュートは決まらなかった。


八木のシュートは最初の1本しか決まらず、キョウヘイは何度もパスカットしたボールを俺に回したが、緊張からかシュートは1本しか決まらなかった。しかし相手チームは最初の1本以外に2本決めて、4対6でうちのクラスが負けていた。


そして残り20秒で相手チームのボールをキョウヘイがパスカットして相手チームのコートに攻めていった。しかし、すぐに相手チームの1人にブロックされた。八木は2人にマークされていて俺は1人にマークされていた。キョウヘイはどうしようか1,2秒迷っていたが、俺はその間に俺をマークしている人をかわして、キョウヘイに向かって「パスパス!」と叫んだ。キョウヘイはちらりとこっちを見たが、すぐにジャンプしてシュートを放った。そのシュートは綺麗に決まり、3ポイントシュートだったので7対6で俺たちのクラスが逆転した。すぐに相手チームはこっちのコートに攻めていこうとしたが、そこで終了のブザーが鳴った。


俺たちのクラスが勝ったのだ。キョウヘイのシュートのおかげで。


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