第36話
俺とキョウヘイの出るバスケの試合はシードで2回戦からだし、カジワラたちの卓球の試合も後の方だったので、キョウヘイとカジワラとハタケと一緒に同じクラスの人の試合で一番早い女子のバスケの試合を応援に行った。相手は1年生で背の高い人もあまりいないし、試合を見てると中学の時バスケをやっていた感じの人もいなさそうなので(要するにたいしてうまい人がいないので)楽々勝利していた。
次に男子のバレーの試合の応援に行った。この試合も相手は1年生で、相手の選手が全員アンダーハンドサーブだったため、レシーブで受けるのが楽だったので次のトスにつなげやすくスパイクでガンガン点を取った。それだけでなく、1年生はまだなのだろうけど、授業でオーバーハンドサーブの練習をさせられていた俺たちのクラスの男子は、サーブだけでもガンガン点を取って行き、楽々勝利していた。
バレーの試合が終わるとカジワラたちの卓球の試合の時間が近かったので、カジワラたちの試合が行われる体育館に向かった。カジワラとハタケは球技大会が始まる前にはやる気が出ないといっていたが、試合が行われる体育館に着くと緊張しているようだった。
「う~緊張する~。」
「あれ?やる気が出ないとか言ってたのにカジワラ緊張するのか?」
「そりゃ緊張するよ!1年生相手とはいえ、うちのクラス1回戦勝ってるとこが多いから、1回戦で負け
たらクラスのみんなに合わす顔がないよ!」
「それじゃあ絶対に負けられないな!頑張れよ!」
「うん!せめて1ゲームくらいは取れるように頑張るよ!」
カジワラもやる気を出して試合に臨んでいった。
卓球の試合は3ゲームマッチで11点制のゲームを2ゲーム先に取った方の勝ちだ。カジワラとハタケはダブルスの試合に出場した。相手の選手は3年生とはいえ、パッと見た感じはおとなしそうな人たちだったので、カジワラたちと同じく消極的な理由で卓球を選んだのかもしれない!それならカジワラたちにも勝機はあるぞ!と考えたが、見た目で卓球の強さが分かるほど俺、卓球に精通してなかったな。もしかしたら中学の時に卓球部だったかもしれないよな。とも思った。えーい!前者であってくれ!と俺は祈り始めた。
「おい!試合始まるぞ!」
キョウヘイにそう言われて、俺は閉じていた目を開けてカジワラたちの試合を応援し始めた。カジワラたちの応援をし始めてすぐにとんでもないことに気が付いた。
この試合、とんでもなく泥臭い試合になりそうだな。
俺だけでなくキョウヘイやこの試合を見ている人たち全員がそう思っただろう。なぜならまずどちらもサーブが入らなかった。そしてサーブが運良く入ってもレシーブがうまく行かず返球できなかった。そのためほとんどラリーをすることなく、試合が進んでいった。そして1ゲーム目、カジワラとハタケが9点、相手の3年生が9点の同点になった時に俺とキョウヘイのバスケの試合が始まりそうになったので、後ろ髪を引かれながら(試合は全然面白くなかったが、カジワラたちの試合だったので結果だけは知りたかったため)その場を後にした。
バスケの試合が行われる体育館に向かいながら、キョウヘイが、「なあ、カジワラとハタケ勝つと思うか?」と聞いてきた。俺は願いを込めながら、「勝てるんじゃないかな?相手の人たちも全然上手くないし。ていうか勝ってほしい!」と答えた。
「そうだな。信じることが大事だよな。」
キョウヘイは俺の返答に納得したのか2度頷いた。
何とか試合5分前に着いたが、俺たちのクラスも相手のクラスもすでにコート上にいた。
俺とキョウヘイが急いでビブスを着ようとしたら1枚しかなかった。一瞬、何故だろう?と思ったが、理由はすぐに分かった。俺たちのクラスはバスケを選んだ人が6人いるので、1人は補欠になる。先に来ていた八木たち4人がビブスを着てしまっているので残りは1枚しかないという訳だ。俺が、どうしよう?と迷っていると、キョウヘイが「セイ!早くビブス着てコートに行けよ!」と言ってきた。
それでも俺が「いいのかよ?キョウヘイ?」と踏ん切りをつけられずにいると、「カジワラにカッコいい所見せるんだろ!試合に出なかったらそれもできないぞ!俺はアシストできないけど頑張れよ!」と鼓舞してくれた。
そうだよ!カジワラにいい所見せるために今まで頑張って来たんだ!この試合でもしうちのクラスが負けてしまったら、もうカジワラにカッコいい所を見せるチャンスは巡ってこないかもしれない!
「分かった!ありがとう!キョウヘイ!」
そう言ってビブスを着て俺はコートの中に入って行った。試合開始時間前には来ていたので、審判の先生は何も言わなかった。
「それではこれより2回戦2-3対3-6の試合を始めます。」
「よろしくお願いしまーす!」
いよいよ始まるのか。相手は3年なのか。勝てるかな?いやいや、気持ちで負けちゃダメだ!勝つ勝つ勝つ勝つ勝―つ!よし!やるぞ!
俺は両ほほを両手で叩いて気合を入れた。そして八木が飛ぶジャンプボールの行方を見つめていた。