第33話
6日後の水曜日、この日は試験の順位が張り出される日だ。
順位が張り出されるといっても1位から最下位まで張り出されるのではなくて、張り出されるのは上位50位までだ。この日までの授業で解答用紙は添削されて返却されているので、中間試験の点数はもう分かっている。俺の場合、一番点数が良かったのは世界史の92点で酷かったのは数Bの86点だった。
キョウヘイに俺の試験の結果を伝えると、「これなら50位以内には入れると思うぞ。」と太鼓判を押してくれた。なので、あとはカジワラより上の順位であることを祈るだけだ。
朝、登校したらすぐに順位が張り出される掲示板の前にやって来た。もう数人の生徒が張り出されるのを待っていた。全員ではないが名前を知っている人も2人ほどいたが、どちらも50位以内に入っているのを見たことがある人だった。しかし、1位と2位をいつも争っている上田と神田の姿がなかったので、朝すぐに順位を見に来る人は俺を含めて、そんなに上の順位に入る人たちではないのかもしれないと思った。
俺が掲示板の前にやってきて2,3分後、藤井先生と早乙女先生の2人が中間試験の順位が載っている紙をもってやって来た。そして藤井先生と早乙女先生が協力して掲示板に紙を張り出す作業をしている中、それを待っていた数人の生徒は何とかして順位を早く見ようとしていた。俺はそこまでする度胸がなかったため、掲示板に完全に貼りだされるのを待っていた。そして先に結果を見て喜ぶ生徒や落ち込む生徒が去って行ったあと、ゆっくり順位を確認した。俺は50位から見て1位まで視線を上げていった。
えーと、戸塚誠……戸塚誠……あった!42位か!まあ、いつもは80位から90位辺りをうろうろしていたから、それと比べたらかなり上の順位に来たな。あとは申し訳ないけどカジワラが俺より上の順位にいないことを願うだけだな。えーと、梶原れもん……梶原れもん……あ!
「トツカくん、イチノミヤくん、そしてレーちゃん!中間試験50位以内おめでとう!」
放課後、いつもの4人で集まった時にハタケが拍手しながら、俺たち3人が中間試験で50位以内に入ったことをお祝いしてくれた。
「ありがとう。ミーちゃん。ミーちゃんも惜しかったね。56位だったんでしょ?」
「うん。でも、いつも100位くらいの私からしたら、それでも十分嬉しいけどね。それよりも惜しいのは12位だったイチノミヤくんだよ!もう少しでトップテンに入れたのにね。まあ、12位でも十分すごいけどね。」
「ありがとう。ハタケ。でも俺よりすごいのは今までより40位以上順位を上げたセイとハタケだよ。俺はセイと一緒に早めに試験勉強を始めたから結果が良かっただけだよ。」
「いやいや、俺がキョウヘイに教えてもらってばかりだったのに何言ってんだよ!」
「でも、トツカくんもすごいと思うよ。42位だもん。」
カジワラに褒められて嬉しくてこそばゆい気持ちになったが、俺はすぐに、「いやいや、34位のカジワラの方がすごいじゃん!」と反論した。
「ハハハ。でもそれはイチノミヤくんと一緒で、トツカくんが早めに試験勉強を始めたのに触発されたからだから、トツカくんのおかげだよ!ありがとう!」
「そうかな?まあ、そういうことにしておくか。もう試験の話はいいだろう?漫画の話をしようぜ?」
俺はこそばゆさに耐えられず試験の話題から漫画の話題に変えようとした。
「それもそうだね!ねぇ、『チェン〇ーマン』は読んだ?」
「読んだ読んだ。面白かったよな。特に……。」
俺の希望通り、すぐに試験の話題は終わり、漫画の話題に移って行った。そのあと5時まで漫画の話をして下校した。カジワラとハタケと一緒に駅まで行き、駅で2人と別れたら、俺を迎えに来たキョウヘイの家の車に乗ってキョウヘイの家に向かった。
俺が車に乗り込むなり、すぐにキョウヘイが、「良かったな!セイ!」と言ってきたので、「どこが良かったんだよ?俺の順位、カジワラの順位より下だったんだぞ!これじゃ、カジワラより勉強できるアピールができないじゃないか?」と俺はキョウヘイの意見を否定した。
「うん。確かにそうだけど、いつもより順位を上げたセイのことをすごいって褒めてたし、カジワラ自身の順位が上がったことをセイのおかげだってお礼を言ってたじゃないか。これはある程度プラスの印象をカジワラに与えることができたと思うぞ。」
「……そうかな?ならいいけど。」
俺は言いくるめられているような気もしたが、実際にカジワラは俺を褒めてたし、お礼も言っていたので、キョウヘイの言う通りいい方にとらえることにした。
「あとは球技大会で結果を出すだけだな。」
「分かってるよ!ここまで頑張ってきたことを無駄にしたくないからな!」
キョウヘイの家の庭でのシュート練習も気を抜くことなく一本一本真剣に行った。シュート練習も3週間も行うと効果があるのか、ゴールのボードから斜めの位置でのシュートも7割くらい成功するようになったので、明日からはゴールのボードの正面から90度の位置からシュート練習することになった。
シュート練習を終えて帰宅すると、「窓開けて。」とナツキからメッセージが来た。俺が仕方なく自室の窓を開けると、ナツキが満面の笑みで、「ありがとね。セイ。」と言ってきた。俺は訳が分からず「え?何が?」と聞き返すと、ナツキは「ほら、中間試験前の日曜日!私に勉強教えてくれたじゃん。そのおかげで全科目赤点を回避できたよ!だからありがとう!」
「へー。全科目赤点回避できたのか?確かうちの学校の部活って赤点取ると公式戦に出られなくなるんだよな。良かったじゃん!これでレギュラーから外される心配もないな。」
「そうそう。だから期末試験の時もよろしく!」
「おう!任せとけ!」
「じゃあ、おやすみ~。」
「ああ、おやすみ。」
ナツキが窓を閉めたあと、今回の中間試験は必死に勉強したからナツキに教えられたが、次の期末試験は教えられるかな?と心配になった。仕方ない。期末試験も必死に勉強しなくちゃいけないな。俺はそう心に決めてベッドに入り眠りについた。