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第32話

 試験が終わった次の日の昼休み、お昼を食べ終えた俺は図書室に来ていた。

図書室に来た理由は1つ、もう一度ハナザワさんと会うためだ。さすがに会う約束をしたのに会いに行こうとしないのはおかしいだろう。と思い、会えても会えなくても1週間に一度は図書室に来ようと考えた。お昼はキョウヘイと食べたため、理由をつけて1人になるのは少し難しかった。とりあえず、午前中に受けた英語の教科書とノートを手に取り、「ちょっと授業で分からなかったところがあるから、藤井先生に質問して来るな。」と言って、職員室に行くふりをして図書室に来た。


ここまでしたのだからハナザワさんには絶対に図書室にいてほしいな。と思いながら図書室に入った。図書室は試験前に来た時とは打って変わってガラガラだった。カジワラに会うために来た時もここまでではないが人が少なかったので、このくらいが通常運転なのだろう。と考えた。これだけ人が少なければ、いたらすぐ見つかるだろう。えーと。三つ編みの女子。三つ編みの女子。あ!いた!俺は特に苦労することなくハナザワさんを見つけた。ハナザワさんは本棚の近くで本を読んでいた。人も少ないし小さい声で話しかければ大丈夫かな?と考え、「ハナザワさん。」とハナザワさんにだけ聞こえるくらいの声で話しかけた。ハナザワさんは少しびくっとなりながら、本から俺の顔に視線を動かし、「トツカ先輩……?」と言った。


「ごめん。驚かせちゃったかな?また本の話がしたかったから話しかけたんだけど……。」


「ホントですか?私もトツカ先輩と本の話がしたいと思って、あれから何度も図書室に来たんですけど、トツカ先輩いらっしゃらなかったので、もう諦めかけてたんですけど……嬉しいです。また話しかけてくれて。」


「ごめんごめん。ちょっといろいろ立て込んでてさ。でも良かった。まだ俺と本の話をしてくれる気があるみたいで。それじゃ、ここで話すと他の人の迷惑になるから場所変えようか?」


「そうですね。」


俺とハナザワさんは図書室を出て、以前話をした特別教室に移動した。

特別教室は前と同じく他に人が1人もいなかった。俺とハナザワさんは昼休みが終わる十数分間、俺がこの前読んだ「探偵ガ〇レオ」の話をした。やっぱり面白いという気持ちを共有するのは楽しかった。

気付いたら昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。楽しい時間は過ぎるのが早く感じる。


「それじゃあ、今日はここら辺でやめておこうか?」


「はい……そうですね……。」


明らかにハナザワさんは話していた時よりも元気をなくしていた。


「あの……また本の話、一緒にしてくれますか?」


「うん。全然いいよ。それじゃあ、また今度図書室で会ったら話そう!」


「そう……ですね……。」


ハナザワさんは納得できてないみたいだが、あまり頻繁に会う約束はできそうにないし、まだ3回しか会ったことがない下級生の女子に連絡先を聞くことは俺にはできなかった。


「じゃあ、また……。」


「はい。また……。」


なんとなく心残りがあるまま、俺とハナザワさんは自分たちのクラスに戻った。


 放課後、いつもの4人で漫画の話を教室でした。ホントはバスケのシュート練習をしたかったのだが、中間試験の時と違い、球技大会の特訓をするために放課後集まれない。とカジワラとハタケに言うのは恥ずかしかったので、キョウヘイの迎えが来る5時まではいつも通り漫画の話をすることにした。話題はほとんど「チェン〇ーマン」についてだった。


カジワラたちと話すのはハナザワさんと話すのとは違った楽しさがあった。趣味の漫画の話だからだろうか?それとも人数が多いからだろうか?いや、きっとカジワラが笑っているところを見られるからだろう。そんなことを考えていると、あっという間に5時になってしまった。俺たち4人は下校して、俺とカジワラとハタケは駅に向かった。駅で2人と別れると、迎えに来たキョウヘイの家の車に乗ってキョウヘイの家に向かった。キョウヘイはハナザワさんと会ったことに気付いてないらしく、何も詮索してこなかったので伸び伸びとシュート練習ができた。


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