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第30話

 キョウヘイとの関係が少しぎくしゃくしそうになりながらも、中間試験の勉強を一緒にした次の日の日曜日、俺は自室で試験勉強の追い込みをかけていた。キョウヘイは先週や先々週と同じく、用事があったため一緒に勉強はできなかった。決してキョウヘイと一緒にいるのが気まずいからではない。


俺が集中して勉強しているとラインのメッセージの着信音が鳴った。スマホの画面を見るとナツキから「窓開けて。」とあったので、「今忙しいから無理。」と返信した。返信するとすぐに「いいから開けて。」とナツキからメッセージが来た。俺がそれに「無理。」と返信すると、「開けろ。」「開けろ。」「開けろ。」……と何度も同じメッセージが送られてきた。


俺はそれに苛立ち、窓をガラッと開けて、「おい!いい加減にしろよ!」と怒鳴りつけた。ナツキは俺の怒鳴り声を気にする様子もなく、「あ!やっと開けた。ねぇ、この問題分かる?」と質問してきた。俺はイライラしながらも、問題の解き方を教えればこのやり取りも終わるだろう。と考え、「どの問題だよ?」と聞き返した。


「だからこの問題!」


「え?どの問題?」


ナツキは問題集を開いて、ある問題を指差しているが、距離が遠くて俺には何の教科でどの問題かが分からなかった。


「だからこの問題!」


「あーもう!この距離じゃ分からないから、どの問題集の何ページ目のどの問題か言えよ!」


「分かった。えーと、数学の問題集の23ページ目の③の問題!」


「数学の問題集の23ページ目の③の問題……この問題か。教えてやるから俺の部屋に来い!」


「え⁈」


「『え⁈』って何だよ?このまま窓越しで教えられるわけないだろ!それとも俺がナツキの部屋に行く

か?」


「そ、それはちょっと……。」


「だろう?だから俺の部屋に来ればいいんだよ。」


「分かった。ちょっと待ってて。」


そう言うとナツキは窓を閉めた。それから10分後、家のチャイムが鳴ったので玄関のドアを開けると、ナツキがバッグを持って(たぶん教科書や問題集を入れてきたのだろう)立っていた。


「よぉ。」


「……よぉ。」


軽くあいさつしたあと、いくら待っても家の中にナツキは入ってこなかった。


「何やってんだよ?早く入れよ。」


「う、うん。お邪魔します。」


ナツキはおずおずとした様子で、やっと家の中に入ってきた。


「部屋の場所は分かるよな?先に行っててくれ。」


「分かった。」


ナツキが通り過ぎるとシトラス系の香りがした。

制汗剤の香りかな?汗のにおいを気にするとはナツキも女子なんだな。と思った。

俺が麦茶を2人分持って俺の部屋に行くと、ナツキが借りて来た猫のような状態で座っていた。


「何かしこまってるんだよ?初めて来たわけじゃないだろ?」


「そ、そうだけど……。」


「まあいいや。それじゃさっさと始めるか。」


俺がナツキの分からない問題の解き方を教えると、ナツキはまた別な問題の解き方を聞いてきた。それを教えるとまた次。それを教えるとまた次といった具合に質問攻めに遭った。それから解放されたのはナツキが来て4時間後の午後6時だった。


「これで終わりだよな?」


「うん。分からない問題は大体解き方教えてもらったから大丈夫。ありがとね。それにしてもセイすごい

ね。私の分からない問題全部解いちゃうんだから。」


「ああ、それはほとんどキョウヘイのおかげだな。俺はキョウヘイに解き方教えてもらったから。」


「なんだ。そうだったんだ?感心して損した。」


「いやいや、解き方を全部覚えるのも大変なんだぞ。」


「アハハ!それもそうだね。今身をもって理解したところだった。それじゃ私帰るね。」


「ああ。玄関まで送るよ。」


俺がナツキを玄関まで送ると、ナツキが、「お互い試験頑張ろう!」と言ってきたので、「ああ。それじゃまたな。」と返事をした。


「うん。また。」


ナツキはそう言うと玄関のドアを開けて自分の家に帰っていった。

俺はナツキが帰った後も夜11時くらいまで勉強してから寝た。


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