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第3話

 「ねぇ。トツカくんは昨日更新されたスパ〇ファミリー読んだ?」


「え?う、うん。読んだよ。面白かったよな。」


「そう!面白かったよね!特にアー〇ャが——。」


女心というものは難しい。「私、愛人志望だから。」という理由で昨日俺のことを振ったカジワラが、今日何事もなかったかのように俺と会話している。

もちろん昨日のことでギクシャクした関係になるのも嫌だったが、告白する前と全く変わらずに接して来るとは思わなかった。大人になっても女心が分からない男性がいるのだから、高校2年生の俺が理解できなくても、そんな不思議な話ではないのかもしれないが、こんなに難しいと一生理解できないんじゃないかと思えてくる。


「———ところが面白かったよね?」


「う、うん。確かにそこが一番面白かった。」


「……どうかした?トツカくん?」


「え?いや別に……。」


「そう?何かいつもと違うよ?ね、ミーちゃんもそう思うよね?」


「うん。私もそう思う。ホントに何もなかった?トツカくん?」


今、カジワラにミーちゃんと呼ばれて大きな瞳(実際かなり大きい)で俺を見つめてくる女子は畑 美々(ハタケ・ミミミ)という名前でカジワラとは小学校からの付き合いらしく、お互いを「ミーちゃん。」、「レーちゃん。」と呼び合っている。


俺とキョウヘイとカジワラとハタケの4人は部活に入っていなかったので、誰も用事がない時は放課後4人で集まって漫画談義に花を咲かせていた。


ハタケは目も大きく整った顔立ちをしていて、身長も170㎝以上ありスタイルも良く、「モデルをやっている。」と本人に言われたら、鵜呑みにしてしまうくらいの美人だった。クラスの男子からの人気も高いのだが、あまり他人と話すのが得意ではなく、俺とキョウヘイとカジワラ以外の人に話しかけられるとおどおどした対応を取っていた。


ただ無類の漫画好きで漫画の話題を振ると相手が誰でも目を輝かせて話すのだが、相手が話す余裕がないくらいまくし立ててしまい、大抵の人は圧倒されてハタケに再び漫画の話を振ることはなかった。


ただカジワラは違ったらしく、小学3年生で同じクラスになった時、カジワラの方から話しかけてからずっと友だちで、俺が高校でカジワラに紹介された時には「親友だ。」と言っていた。


俺とカジワラが高一の時に仲良くなって、お互いに漫画好きだと分かった俺は親友で漫画好きのキョウヘイを、カジワラは親友のハタケを紹介し合ってから放課後4人で集まって漫画の話をしていた。


クラスメートから人気があるというとハタケだけでなくキョウヘイもそうだった。

身長180㎝近くあり、濃い顔ではなく今どきのあっさりとした顔のイケメンで短いさっぱりとした髪型も合わさって清潔感もあり、更に一宮グループというグループ企業の御曹司ということもあり、クラスの女子から人気があった。


キョウヘイとハタケの2人が純文学の小説の話でもしていれば、とても絵になる光景だが、実際に話しているのは漫画の話だったため、2人の見た目しか知らない漫画に理解のない人たちからはがっかりされることもあった。


俺はカジワラとハタケの疑問にどう答えようか悩んだ。「昨日カジワラに振られたからちょっと気まずいんだ。」とはとても言えない。なぜならカジワラが全く気にしていない素振りを見せているのも理由の1つだったが、ハタケに俺がカジワラに振られたことを知られたくないのが一番の理由だった。


もしかしたらすでにカジワラがハタケに俺を振ったことを話してしまっているかもしれないとも思ったが、ハタケが「何もなかった?」という発言をしていたので、おそらく話していないのだろうと思う。そうなるとますますなんて答えたらいいか悩む。でもずっと何も言わずにいるとすごく重大なことがあったのではないか?と思われるかもしれないので、早く何か言わなくちゃいけない!え~と?そうだ!


「いや、ホントに何もないよ。ちょっと考え事していただけ。」


「「考え事?」」


カジワラとハタケが同時に聞き返してきた。


「そう、考え事。今度ある中間試験のこと考えててさ。」


「中間試験?3週間も先のことを考えてるの?気が早い気がするけど?ね?ミーちゃん?」


「そうだね。レーちゃん。私なんかまだ大丈夫だと思って何にもしてないよ。イチノミヤくんはもうテスト勉強始めてる?」


「いや、俺もまだ始めてないよ。」


「よく言うよ!そんなこと言ってキョウヘイはずっと学年30位以内に入ってるじゃん!裏で隠れて勉強してるんだろ、どうせ⁈」


「試験勉強はしてないよ。毎日予習復習はしてるけどな。」


「それは悪かったな!試験前にしか勉強してなくて!」


「全然悪くはないけどな。全くしないよりは。……もう5時過ぎだな。そろそろお開きにするか?」


キョウヘイの発言を受けて教室の時計を見るともう5時5分を過ぎていた。


「もうそんな時間か。門限がある家は大変だな。それじゃあもう帰ろうか?」


キョウヘイの家はグループ企業の御曹司であるキョウヘイの身の安全を考えているのか門限が18時に設定されていた。それを理解していた俺たち3人は放課後4人で集まって話すのは夕方の5時までにしていた。


「そうだね。帰ろうか?ミーちゃん?」


「そうだね。レーちゃん。」


俺たち4人は帰り支度をして昇降口へ向かった。


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