第22話
俺が何も言わずに見ていたからか、三つ編みの女子は少し怯えながら俺のことを見ていた。
あ!早く何か言わないと俺が威圧しているように彼女は感じてるかもしれない。と思い、咄嗟に、「ごめんごめん。どうぞ。」と言いながら俺は本を譲るようなジェスチャーをした。すると三つ編みの女子も
「いえ、私は大丈夫ですのでどうぞ。」と言い返してきた。
「いや、俺のことは気にしないでいいから。どうぞ。」
「いえ、私の方が手を伸ばしたの遅かったですから。どうぞ。」
お互いに譲り合ってどっちが本を借りるか決まらなかったので、俺は正直に、「俺絶対この本を読みたいと思っている訳じゃないんだ。何か面白い推理小説はないかなと思って探してたらこの本を見つけて、たまたま手に取ろうとしただけなんだ。だから俺のことは気にしないで。」と打ち明けた。しかし三つ編みの女子は「でも……。」と言ってなかなか踏ん切りをつけられずにいた。
「そうだ!キミ、推理小説に詳しい?詳しいんだったらこの本以外で面白い推理小説を俺に教えてくれない?俺はそれを借りるからさ。」
「そんなに詳しいわけじゃないですけど、『東〇圭吾』のガリレオシリーズに興味を持ったのなら、1作目の『探偵ガ〇レオ』を読んでみるといいと思います。確か、こっちに……。」
三つ編みの女子が本のある場所に連れて行ってくれるみたいなので、「場所まで教えてくれるの?ありがとう。」とお礼を言った。
「これです!これ!」
三つ編みの女子が指差すところに目的の本があった。
「ありがとう。それじゃあ、俺はこれを借りるから。」
「はい。それじゃあ、私はこれで。本譲ってくれてありがとうございました。」
「こっちこそありがとう。」
俺は三つ編みの女子にお礼を言って、薦められた本を手に取り、カジワラのいるカウンターまで行った。
「この本貸してくださ~い。」
「トツカくんが図書室に来るなんて珍しいね。しかもガリレオシリーズ借りるなんて。どうしたの?急に推理小説に興味がわいたの?」
「まあ、そんなとこ。カジワラはこれ読んだことある?」
「あるよ。すごく面白かったよ。この小説の犯人はね~……。」
「ちょっと!ネタバレ禁止!読む楽しさ無くなるじゃん!」
「アハハ!冗談だって!そういえばさっきの女子とは仲良くなれた?」
「え⁈」
「ほら、さっき本を取ろうとして手がぶつかっていた女子だよ!仲良くなれた?」
俺はさっきの三つ編みの女子とのことを一部始終カジワラに見られていたのだと思うとすごく恥ずかしい気持ちもあったが、もしかしてカジワラは俺が他の女子と仲良くなることを気にしているのかな?と考えると少し嬉しい気持ちもあった。
「気になる?」
「うん。少しね。だってトツカくんは早く誰かと付き合わないと私と付き合えないよ。私いつまでも待つつもりはないからね。」
予想だにしないカジワラの返答にショックを受けて俺はそれ以上何も言えなかった。