第12話
「今日帰って来るの遅かったじゃん。何してたの?」
「何でもいいだろ。今日は俺の方が遅かったけど、いつもは夏希の方が帰って来るの遅いじゃん。」
「それは私が部活やってるからでしょ!部活やってないセイが私より遅く帰って来るのはおかしいでしょ!キョウヘイに送ってもらったみたいだから、キョウヘイと何かしてたんでしょうけど、私に言えないようなことしてたの⁈」
さっきから隣の家の窓から俺のことをずけずけと聞いてくる女子の名前は日向夏希と言って、俺の保育園の時からの幼馴染だ。ちなみに小学2年の時に転校してきたキョウヘイとも幼馴染だ。中学・高校も同じでバレー部に所属していた。詳しくは知らないが今はバレー部のエースと言っても過言ではないくらい活躍してるらしい。
「うるさいなぁ。中間試験の勉強をキョウヘイとやっていただけだよ!別にやましいことはしてないよ!」
「それならそうとすぐ言いなさいよ!……そっか。中間試験の勉強していただけか。中間試験の勉強?ねぇ、何で3週間も先の中間試験の勉強してるの?人それぞれだとは思うけど、3週間前から始めるのは早くない?」
「別にいいだろ!いい点とりたいんだよ!」
「それはそうだろうけど……。セイ、昨日から何か変だなぁ?と思ってたけど、昨日何かあった?」
ナツキとは昨日家に帰ってきた後に今みたいにちょっと話しただけ(カジワラに振られたことは話していない)なのに、ナツキは俺の様子がおかしいことに気付いていたのに驚いたが、俺が驚いたことを悟らせたらまずいと思い、努めて平静を装いながら、「別に、何もないよ。」と答えた。
ナツキは俺の返答に納得できなかったのか、「嘘!そんなの嘘だ!私たち何年の付き合いになると思ってるの⁈そんなの嘘だってすぐ分かる!ねぇ?本当のことを話してよ。」と始めは強い口調で否定し、後にお願いするときは優しく弱い口調で話すという話し方に強弱をつけて俺から本当のことを話させようとしてきた。
それでも俺はカジワラに振られたことをキョウヘイ以外に知られたくなかったので、「ナツキが俺を心配してくれてるのは分かったよ。でも、今はまだ誰にも話したくないから話せない。」と答えた。
俺としてはこれでも十分さらけ出したつもりなのだが、ナツキはそれでも納得できない顔をしていた。しかし、ナツキは数秒後何かをやっと飲み込んだような表情をすると、「分かった!これ以上は聞かない!でも話したくなったら、いつでも話して!」と言ってきた。
「分かった。それじゃあ、もう寝るよ。おやすみ~。」
「おやすみ。」
俺は窓を閉めてカーテンも閉めると着替えを持ってお風呂に入るため洗面所へ向かった。