第107話
ハタケは「何でもする。」って言ってるんだし、一緒に下校してくれるようにカジワラを説得してもらうってのはどうだろう?でも、夏休み中はナツキとハナザワさんのことに集中しないと2人に失礼な気がするから、ハナザワさんと一緒に図書室で本を読むことやナツキと一緒に下校することをやめて、カジワラと一緒に下校することはできないよなぁ。
それならデートをなかなかしてくれないカジワラと休日も一緒にいるために、ハタケやキョウヘイと一緒に4人で遊ぶ約束を取り付けるのを手伝ってもらうってのはどうだろう?4人で遊ぶのならカジワラも拒否しない気がするし。ハタケとキョウヘイは事情を知っているから、頼めば俺とカジワラを2人きりにしてくれるだろうし、この案は悪くないんじゃないか?
いや、待てよ。ナツキとは公園デートしてるし、ハナザワさんとは図書館デートをしてる。てことは、カジワラをデートに誘うことはすでに可能なのか。ハナザワさんとのデートを数に入れていいのかは少し疑問だが、デートはデートだからいいだろう!ということはハタケに頼むようなことは今のところないんだな。せっかく強力な助っ人を手に入れたのに使いどころがないのはもったいない気がするなぁ……。
「……先輩。トツカ先輩!」
「……あ!ハナザワさんどうかした?」
「もうそろそろ降りるバス停に着きますよ!」
「ごめんごめん。考え事してて全然気づかなかった。降りる準備しなきゃね。」
ナツキとハナザワさんのことに集中しなきゃいけない!と考えていたが、実際はデートの移動中に考え事をするぐらいハナザワさんのことをほったらかしにしてしまい申し訳なく感じていた。
こんなんじゃいけない!もっとハナザワさんに楽しんでもらえるようにしないと!
俺は気を引き締め直した。
県立図書館に着くとまずはカウンターに向かった。そこで俺とカジワラさんが借りた本を返却した。俺は2冊だけだったが、ハナザワさんは6冊返却していた。前回県立図書館に来た時に借りるところを見ていたので分かってはいたのだが、2週間で6冊も本を読むことができるハナザワさんの本を読む速さに驚いた。
まあ、俺の生活習慣では6冊読むのが難しいというだけで、俺が漫画を読む時間やスマホで動画を見る時間なんかをハナザワさんは読書に当ててるのかもしれないな。
本を返却し終えると席を確保してハナザワさんが薦めてくれた本を読んだ。今回薦めてくれた本も恋愛小説だったが、発行された年が古いので内容を理解することよりもまず使用されてる言葉を理解する方が難しかった。
俺が四苦八苦しながら本を読んでいたら、ポンポンと肩を叩かれた。パッと振り向くとハナザワさんが、「そろそろお昼ですけど、どうします?」と聞いてきた。
腕時計を見ると12時5分前ぐらいだった。俺は1時間以上頭をフルに使って本を読んでいたため、お腹が減ってたので、「それじゃお昼にしようか?」と返答した。
俺の返答を聞くとハナザワさんは、「それじゃあ、この前と同じく3階のラウンジに行きましょう。」と提案してきた。
ハナザワさんの提案を了承して、俺とハナザワさんは3階のラウンジに向かった。
ラウンジに着くとハナザワさんはバッグから前回よりも大きな弁当箱を取り出した。前回と同じく俺が肩にかけて図書館まで来たのだが、今回はそれなりに大きなバッグを2つも肩にかけて来たのですごく大変だった。1つはハナザワさんが借りていた本を入れてきたのは分かったのだが、2つ目はお弁当を入れてきていたことが今分かった。
「保冷剤を入れておいたので、中身は悪くなってないと思います。安心して食べてください!」
前回よりも大きな弁当箱とはいえ、あんなにバッグが重かったのは何故だろう?と疑問に思っていたがナツキの時と同じく大量の保冷剤がバッグに入っているのが見えて、俺は疑問が解決できてスッキリしていた。
ハナザワさんが弁当箱を開けると、前回よりも品数が増えて豪華になっているのが見て取れた。
「美味しそうだなぁ。いただきます!」
俺はハナザワさんが作ってくれたお弁当を食べ始めながら、これ2人で食べ切れるかな?残したら悪い気がするし、俺が食べなきゃな!ナツキみたいに食後に運動を勧めてこないよな?と余計なことを考えてしまい、もうすでに少し食欲が落ちていた。