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第106話

 キョウヘイとの通話があった次の日の水曜日から金曜日までの3日間は単調に過ぎて行った。


午前中は夏期講習を受けて、午後はいつもの4人で漫画の話をして、それが終わったら図書室へ行ってハナザワさんと一緒に本を読んで、図書室が閉まったら昇降口でナツキの部活が終わるまで待って、ナツキと一緒に帰宅するという行動の繰り返しだった。


まあ、4人で漫画の話をしている時のハタケの俺を見る目が日に日に鋭くなっているように感じたことが唯一の変化というか気がかりなことだった。しかし、目つきが鋭くなるだけでハタケは俺に何も言ってこなかったので、俺の勘違いなのかな?と思わなくもなかったが、勘違いではなかった。


俺がそれを知るのは夏期講習がない土曜日の午後だった。俺が次の日に県立図書館に返さなきゃいけない本を読み切ってしまおうとしていた時、スマホからメッセージの着信音が鳴った。


誰からだろう?明日のこともあるしハナザワさんかな?と考えながらスマホの画面を見ると、画面にはハタケからのメッセージが来ていることを知らせる通知が映っていた。


ハタケからだ!うわぁ~。どんな内容だろう?


俺は恐る恐るハタケからのメッセージを開いた。するとそこには、「ちょっと話したいことがあるから通話してもいい?」とあった。


メッセージじゃなくて通話で話したいことって何だろう?まあ、昨日までの様子を見ると決して俺にとっ

ていい内容ではないだろうな。これを断って月曜日に直接話をする度胸は俺にはない。これは了承するしかないな。


俺は覚悟を決めて、「いいよ。」と返信を送った。

俺が送ったメッセージはすぐに既読になり、数秒後にはハタケから音声通話がかかってきた。


「もしもし。」


「もしもし。トツカくん?ごめんね。休みの日に突然。でも、どうしても聞いておきたいことがあってさ。」


「うん。」


「もしかしてトツカくん……ヒナタさんとの関係に悩んでない?」


「え?ナツキとの関係?……別に悩んでないけど……。」


本当はがっつり悩んでいたのだが、そのことを話したら、ハナザワさんとのことも話さなくてはいけなくなるので、とてもじゃないが言えなかった。


「ホントに?」


「ホントホント。でも、どうしてそう思ったんだ?」


「最近のトツカくん、様子が変だったから。もしかしてヒナタさんに別れ話でも切り出されたのかな?って思ってさ。」


本当はその逆?なのだが、黙っておいた。


「トツカくんに彼女がいなくなると私が困るからさ。」


「え?何でハタケが困るんだよ?むしろハタケの友だちと愛人関係で付き合っているんだから、ナツキと別れた方が嬉しいんじゃないのか?」


「え?だってトツカくんが一番好きなのはレーちゃんでしょ?」


「え?」


「だってそうでしょ。トツカくんが最初に告白したのはレーちゃんだし、レーちゃんのことを諦められなかったからヒナタさんに彼女になってもらって、レーちゃんには愛人になってもらったんでしょ。これってどう考えても、トツカくんはヒナタさんよりレーちゃんの方が好きだって丸わかりだよ。」


そうか。ちょっと考えれば分かることだよな。うわぁ~どうしよう?ハタケに分かるってことは……。


「たぶんレーちゃんも分かってると思うよ。」


だよなぁ。うわぁ~どうしよう?今更ながらすごく恥ずかしくなってきた。月曜からどんな顔してカジワラに会えばいいんだ?


「トツカくんがレーちゃんを愛人にしたって聞いた時は、これはチャンスだ!と思ったんだ。レーちゃんがトツカくんのことを好きなれば愛人志望なんてバカな考えをやめてくれるんじゃないかと思ったんだ。」


「ん?ハタケはカジワラが愛人志望なのを納得してないのか?」


「するわけないでしょ!何でそんなこと聞くの?」


「だって、以前カジワラを説得するのはやめたって言ってたからさ。」


「説得するのをやめたからって納得してるわけではないよ!レーちゃんに本気で好きになった人が現れて考えを変えてほしい!ってずっと思ってたよ!そしたらレーちゃんにトツカくんから告白されたって聞いたから、もしかしたらってずっと思ってたんだ。だから今トツカくんにヒナタさんに別れられると非常に困るんだよね。」


ハタケの考えはよく分かった。俺とカジワラが愛人としでも付き合っていれば、いつかカジワラが本気で俺を好きになる日が来るんじゃないか、そしたら愛人じゃなくて彼女になることを選ぶんじゃないかと考えていたんだと。俺が考えていた青写真と一緒だった。


てことは今後カジワラを彼女にするためにハタケの協力を求めることが可能になるんじゃないかと俺が考えていたところに、ハタケが、「私に協力できることがあったら、何でもするからヒナタさんとは別れないで!お願い!」と頼んできた。


「大丈夫だよ!別れ話なんてしてないから。でも、いつか協力をお願いするときがあるかもしれないから、その時はよろしく!」


「そう?それならいいけど。それじゃあもう切るね。トツカくん、また月曜日に。」


「うん。また月曜日に。」


ハタケとの通話が終わった後、俺は、「何でも」って言ってたけど、どのぐらいのことだったら協力してくれるのかな?とハタケの発言で気になることを考えていた。


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