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私の人生にはいつも猫がいた   作者: 青木幽鬼
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第1章①

前回の続きです。

意識が戻った時、私は1人でどこかの小さな広場の中央にポツンと立っていた。さびれた滑り台に、小学校低学年か幼稚園児しか使えないような背丈の低いこれまたさびついた鉄棒が2つ。周りは白いモヤに包まれててよくわからない。白いモヤのなかに、何かキラキラしたものを見つけた。なんだろう。手を伸ばしてみる。固い。これは、金属の…鉄?かしら。触ってみるとボコボコした凹凸がある。文字が書かれてあるようだ。目を凝らしてよく見てみると、それは、錆び付いたネームプレートだった。

「青木ニュータウン?………あっ」

私は、思い出した。青木ニュータウン。ここ、私知ってるわ。

気づいたら、周りの白いモヤがすっかり綺麗に晴れていた。自分を取り囲むように、モヤの中からさびれた団地が現れていた。

その姿は壮大だった。私がポツンと立っている広場を4棟の団地が東西南北に取り囲んでいた。まるで、静寂の中の裁判所で自分が裁判官と検察官、弁護士、傍聴席の人々に取り囲まれた被告人のようにちっぽけに思えた。それくらい、団地はさびれていながらも圧倒的な怖さともいえる存在感があった。いまでは、「ニュー」と呼べるほど新しい団地とは言えないが、(むしろ古い)まだ、この団地が残っていたことを知れて嬉しかった。

だって、私の思い出の場所だから。私の恩師と出会った場所だから。


少し、青木ニュータウンをぐるりと歩いてみた。あれはまだあるだろうか。よく乗っていたタヌキの遊具。さっきの広場は、たぶん中央広場と言ってたところだから…。タヌキは南広場だったかしら。すぐに南広場を見つけたのはよかったが、タヌキはなくなっていて、代わりにキツネの遊具があった。あのタヌキは化けダヌキでキツネに化けたのか。そんな妄想をしてみると面白い。あれ?でもキツネも確か化けてなかったっけ?九尾とかいう妖怪がゲゲゲの鬼太郎でいたような…。それなら、タヌキがキツネに化けてるわけじゃなく、化け合い合戦でキツネがタヌキに勝ったのか!

そんなくだらない妄想をしながらしばらく歩いていると、小さな小屋の前にたどり着いた。団地と同じデザインの1階建ての小屋。集会所だろう。ここも、随分変わったなと思った。壁の塗装が少し剥がれている。前は綺麗な純白だったのに。私が、恩師と出会ったのはちょうどこの場所だった。


あれは、1980年の夏のことだった。

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