フラウ・キルム
フラウ・キルム
ショッピングモールから出ると先ほど聞いていた警察署へ向かう事にした。
行く先々にいた警官や軍人には片っ端から隷属の魔法をかけまくる、警察署に着いた頃には約100人に隷属の魔法を掛けていた。
隷属の魔法に人数制限は無い、かける側に魔力があれば何人でもかけられる、一種の催眠術に近い。
かけた後は掛けられた者の魔素で固定されるので、掛けられたものが死ぬかそれとも極度の魔素切れ、気功力切れを起こさなければ何年でも効果が持続する。
バイロにしてみればかけ放題なので、なかなか効率がいい魔法だった。
隷属の魔法と奴隷紋の魔法はかなり違う、奴隷紋の場合血の契約が必要だが隷属はそこまで縛るものではない。命令以外は自由で本人がいつも通り行動できるのが良いところ。
この調子で次の日も又次の日も軍人や警官を味方につけ命令しウィルス騒ぎが治まるのを待った。
途中で司令官クラスに質問したところすでにこの国の国民は4億まで減っているとの情報も得た、もうクーデターする頃には壊滅的なダメージを受けていそうだ。
(もしかしておれがお膳立てしなくてもこの国詰んでるんじゃないのか?)
まあそれでもちゃんとお膳立てしないと民主主義に変わらない限り又同じ間違いは繰り返されるので、面倒でもしつこく軍人や警官を見つけては隷属の魔法をかけ続ける。
約1週間をかけて最前線の兵や警官たちに隷属の魔法をかけまくり、おおよその舞台は整った後は時期を待つのみだが、ついでにあと一押ししてやろうと思いこの国の国会に乗り込むと、若そうな議員や割と民主的に見えた(見た目だよ)おじさんたちに隷属の魔法をかけクーデターを後押ししてもらう、後の政権は民主主義でと声をかけておいた。
何だかトントン拍子に進み過ぎて不安を感じながらも約半数以上の全人代議員に隷属の魔法でクーデターの協力を命令し議事堂を後にした。
一通り終わると次の手を考えるために今度はインターネットカフェへ入り各国の情報を検索。ウィルスにより各国の人口の推移を検索すると情報ではこの国はまだ8憶いることになっており、アメリカは3憶インドは4億、要はどの国も国民の半分が犠牲になっているのにこの国だけは数が3分の1しか減ってないよとW○O(国際保○機構)に嘘の情報を出しているらしい。しかも特効薬が出来たとかのたまわっているし。
元々特効薬はウィルス研究の過程で何年も前に用意されているのに今頃になってようやくできたとか、嘘もここまで白々しく言うのを見ると、あきれかえってしまう。
さすがに気功術を手に入れた日本は人口9千万人をキープしている実質5百万人の死者数で押さえ込んでいるらしい。
ネットを検索すると他国の情報はそれ以上入手できないように閲覧禁止のマークが出てくる、はっきり言ってこんな嘘情報にこの国の国民は常に騙されているとは…。
まあそれもあと少しで終わるけど、さてそれではこれからどうするか。
とりあえず潜伏して事の成り行きを見ながら微調整していこう。
そう思いながらインターネットカフェを出ると、何やらもめている声が。
「何するのよ、ちょっと買い物に出ただけでしょ」
「戒厳令中は外出禁止だ!許可証が無ければ署まで来い」警官
「放してよ、何するのよ」
「どうしました?」
おもむろに近づくと隷属の魔法を警官に掛けた。
警官に話すふりをして肩に手を置く、固定完了。
「大丈夫?」
女性に声をかける。
「有難う、あなたは?」
「国民解放協議会のバイロです」
(嘘ですそんな団体ないです)
と口からでまかせを言いながら警官に耳打ちする。
「国民に危害を加えるな民主主義に協力するんだいいね」
そう耳打ちすると、警官はその場を立ち去って行った。
「今のは?何をしたの?」
「ああ事情を話して了解を得たのさ、それより君の名前は、買い物はもう済んだの?」
「フラウ・キルムよ、買い物は済んだところ」
「それじゃ頼みを聞いてもらえる?」
と言いながら魅了の魔法を軽くかける。
「♡はい なんでも言ってください♪」
完了、女性は車でこの近くのスーパーマーケットに来ていたらしく。
彼女の家に行きたいと言うとすぐそばの駐車場に止めてあった車に乗り込み郊外にある彼女のマンションへと向かった。
買った食べ物の量と種類それと着る物の恰好で彼女が独身で結構金持ちである事を予測していたが、やや外れていたのを後で知ることになる。
魅了の魔法をかけるまでもなかったのだが念のためだ。
彼氏のふりをして車に積まれた荷物を持ち、マンションの駐車場からエレベーターで15階の彼女の部屋へ行くと、思っていた通り豪華な部屋だった間取りは4LDKだがLDKが15畳はありそうな広いリビングだった。
さてと…
「君の仕事は?」
「モデルよ、それとダンサーかな♡」
「他にはお父さんの仕事とか、お母さんは?」
「父はIT関係の社長をしているわ、でも最近売り上げが落ちて大変なの」
「それじゃ今のうちにお金をおろして日本へ行った方が良いよ」
「なんで?」
「この国がクーデターに見舞われるから」
「そんな話聞いたことないわ♡でもあなたの話なら信じる、父に話してみるわ」
「兄弟がいるなら一緒に日本に行けばいいよ、その前に良い事教えてあげる。」
そういうとバイロは気功術を教えることにした。
前にアスラという学生だった頃を思い出し、この国の兵士が気功術を知らなかったことに違和感を覚えたからだ。
日本やアメリカの国民のほとんどが気功術を取り入れていたのに中国の兵士が気功術を利用していなかったからだが。たぶん憶測だが気功術は確かに素晴らしいが国民に知られると力を付けた国民を制圧することが出来なくなり、危険だと感じた政府が外国の気功術に関する記事を閲覧禁止にしたせいなのではと思った。
フラウに気功術を教えて日本へ逃がせば不審者として捕まる事もないだろう、今ならクーデター前だし逃げ切れば安全だ。
いつものように気功術をレクチャーすると。
「面白―い、何で光るの?」
「光ると言うより光るように見えているって感じかな。人は皆気の力を持っていて意識を集中することによってその力を外に出すことが出来るようになる、今見ているのはその力だよ」
それからは中級の初歩まで教えると何故かフラウは興奮してしまったらしい、目を潤ませてキスをせがむように目を閉じる。
いわゆる魔力酔いという状況、蟲の体が思ったより多くの魔力を纏っていた為、少し制御が甘くなってフラウへ通常より多くの魔素が流れた為だ。
フラウは顔を斜め上に上げ唇をややあけながらすり寄ってくる、据え膳食わぬは何とかだ、久しぶりに人のしかも女性の唇の感触を確かめた。
(半分蟲でなければなー)
2人はソファに座るとフラウがすぐ横に座り体をすり寄せる、久しぶりの香水の香り。店でもごくたまにしか嗅いだことがない、今店に来るのはおば様ばかりなので思わず鼻腔を広げてしまう。
(体は蟻だけど)
フラウはモデルなだけあってスタイルは抜群今着ている服もピタッとしたミニスカートにラフなTシャツだけだ。少し盛ってある胸のふくらみだが、パットを外してもそんなに小さくはないだろうC以上はありそうだ。
一方俺は半分蟲の体なわけでこの体が一応オスなのはわかるが、あそこが何処にあるかわからないし興奮してもどこも変化しない。
残念な体なのだ、まったく馬鹿な研究者どもだよ。
仕方ないから全て性感マッサージで済ませることにした、バイロのテクニック(60おじさん)でフラウは数回昇天するとぐったりとしてしまった。
その後彼女はシーツにくるまり幸せそうな顔をして寝ている、たぶん数分は起きないだろう。最後まで出来ない分丁寧に触りまくりました、マッサージならお任せです、一応店でも簡単なマッサージはするからね。
勘違いしないでほしいが、こういうマッサージはお店のメニューにはありません。
(ここは強調する)
ついでだから夢心地な彼女にシャワーを借りると言ってシャワー室へ向かう。
この部屋のシャワーもシャワー室も良くできており全部電気式のタッチタイプだった。
こういう所は進んでいるのに人の考えだけは昔に囚われているんだから。
シャワー室から出ると、いつの間にかフラウは起きていて用意したバスタオルを手に俺の体を拭きだした。
「有難う」
「良いの、私の方こそ♡」
魅了の魔法はすでに切れているはずなのだが…
そういうと又キスをせがむので、答えてあげた。
交代でフラウはシャワー室へ入ると、俺はリビングにあるTVモニターのスイッチを付け、チャンネルを操作する。
はっきり言ってつまらない昔のドラマ(全部この国の)と料理番組ばかりでニュースは交通事故や消防の記事ばかり。軍隊や警察が何でこんなに出ているのかはどのチャンネルを回しても放送していないのだ。
まあそのうち解るだろう、こんな政治が長く続いたのが奇跡だったという事が。
フラウはシャワーから出ると何か食べるかと聞いてきたので、飲み物を貰うと答えた。
TVのチャンネルを一通り見終えると今度はネットにつなぎ情報検索を始める、まずは外の情報そしてフラウの情報も検索してみる。
検索した情報の中にはなかなか面白い情報も見つけたが、フラウがキッチンから出てきたので画面をTVに変更した。
フラウが持ってきたペットボトルを受け取るとオレンジジュースをコップに注ぎ飲んでみる、やはり飲み物かそれに近い物しか受け付けなさそうだ。
体の中身もかなり違う、人間の様な消化器官はあるがたぶん固形物は消化できない可能性が高い。
夢から戻る時はこの身体をどこかに隠すか処分するしかないのか、それともこの時代に生きている俺を探すか・どちらにしても厄介な事に変わりはない…
昔見た映画、ア〇ターだったかな異星人の体に入り込み異星人と仲良くなり征服するってやつだ。
体だけで中身がないから本物の体から意識だけ乗り換えるように使うと言う映画。
状況はかなり違うが、映画とは違うのでまあなるようになるか悩んでも仕方ないことだ。
そんなことを考えながらTVのチャンネルをしつこく変えていると、フラウのスマホに電話がかかって来た。