民主化の宣伝
民主化の宣伝
第2次細菌戦争のウィルスは着々とそしてじわじわと人間の住む場所を無人に変えていく、この国の北側はすでに人類が生存できなくなりウィルスの漏洩が有った内モンゴル自治区からすでに半径数千キロは浸食されていた。
早い内に国外へ逃げることのできたモンゴル人や韓国人は日本や台湾そしてオーストラリアへウィルス難民として各国の用意したウィルス避難区へ助けを求めた。
歴史ではこの第2次細菌戦争でこの国は2億を割るところまで人口を減らし周辺の国もほぼ似たような状態に追い込まれたと記述されている、可哀そうなのは発生地の近くで何も知らされなかった国々、対処が遅れた国も同様に汚染されていた。
バイロは今TV局のM番へジュディと共にアルバムの宣伝で生放送の収録現場へ来ていた。
「それでは本日新曲5曲を含めたアルバムの発表をされたジュディ・クウォンさんにおいでいただきました」パチパチパチ・・・
「今回の曲のテーマは何ですか?」
「今回のテーマは今起こっているウィルスの脅威についてです。現在国会では民主化についての話し合いが続いています、すでに地方の〇産主義派は粛清され。ほぼ鎮圧し後は国会で各法案が通るだけですが。この騒ぎについて国民の皆様は何もすることはありません、いつものように自宅で普通に過ごして頂ければ大丈夫です。追って政府から発表があるでしょう」
「あ あ あの今のは本当ですか?」
「はい本当です、ですからこの放送は止められることもございません」
「私は大丈夫でしょうか?まずくないですか」
「やっと私たちが望んだ民主主義が実現するのです、これからは罪に問われてもちゃんと普通に裁判し善悪を正当に決めることとなるでしょう。近い内に投獄されている政治犯や無実の方々は釈放になるはずです。」
(ほら歌いきますよ)
MC(そうですね・う 歌行きましょう)
「それでは歌っていただきましょう新曲ウィルス撲滅」
この爆弾発言は録画されて各放送局で流されインターネット上でも拡散された、ほとんどの者が大声を上げ喜んだ。
政治関係の出来事はこれで収束したが現在もウィルスの脅威は終わったわけではない、各TV局が今まで発してこなかった情報をニュースで流し始める。
責任をとやかく言うよりもまずは現状を正しく伝え国民の安全を第一に物事を伝えるそれがこの国のマスコミに求められる民主化された最初の仕事となった。
最初は放送局での発表にバイロが話すはずだったのだが、ジュディが乗り気になりどうせ同じことを言うなら出演者本人の口から説得された方が解りやすいという事で、彼女から魅惑の魔法がTVを伝って出るように細工しておいた。
民主化はバイロが思った形とは少し違っていたが、国民同士が争わなければその方が良いし、結果思ったより巧く行ったならそれは良い事なのでバイロは苦笑いするしかなかった。
この国はこれから全てを吐き出し、間違いを正さなければならない、嘘を正すそれはなかなか勇気のいる事だろう。自分達の罪を認めなければいけない、後に投獄されるかもしれないし最悪死刑になるかもしれない。
だがある法案が通り民衆を虐げていた政治家や軍部の将校にとっては朗報となった。
その法案(〇産主義化における犯罪は人の罪では無くその主義によるものである、今後いかなる罪が明らかになっても人を罪には問わない)
だからと言って責任は棚上げにするわけではない、だれが取るのかという事になる。まあ単純に今までもしてきたことだがお金で責任を取るしかなくなるのだが。民主化した段階で過去にしてきた罪は全て国が負担すると法案によって決められた。
民主化による個人の刑罰不可法案1・(民主化に伴う過去の罰は原則国が負う、人には問わない、但し悪政を野放しにし私腹を肥やしたものは全財産の没収と地位の剥奪を命ずる)
2・(没集した財産は全て国に属し今まで虐げられてきた弱者に賠償金として支払われる)3・(罪の大小により財産の差し押さえは猶予される、罪を認め早期に国へ資産を収めたものは地位のはく奪を軽減する)
この法案によって私腹を肥やしていた政治家や裏で手を引いていた企業や軍部は預貯金や財産のほとんどが没収された。人には罪を問わないが物には罪を問うと言うわけだ、建物や預金・株式などは一時国のものとなり、投獄されていた政治家や罪のない民間人に慰謝料として支払われる。
罪の量刑によって差し押さえられた一部の財産は返還されるが、地位などは戻らず会社のトップだったものは良くて平に格下げ。軍人や警官も同様に粛清されて行った。
それから1月後TVでは今まで放送できなかった西側の映画やドラマが毎日のように放送さるようになった。
ジュディのアルバムは今月の国内売り上げNO1となり過去最高の売り上げを上げた。
「あなたのおかげよ」
「いいえ歌が良かったからですよ、まあタイミングも良かったからでしょうけどね」
「バイロこれからどうするの?」
「私はこれから日本へ行かなければならない」
「私もついていく」
「それはやめておいた方が良い」
彼女の父であるシャオクンが今は軍のトップになり、その娘がこの時期に国外へ行くとなるといらない噂の元となる、民主化はされたが軍の微妙な状況が父親の立場を悪くする可能性がある。
「僕は又戻ってくるから、待っていてくれ」
「本当に?本当に戻ってくるのね」
「嘘はつかない」
「解ったわでも約束して、どんなことになっても貴方を愛しているから、私を捨てないで」
「ぜったい捨てたりしない約束する」
次の日デイバック一つを背負い、バイロは彼女の家から姿を消した。