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第46話


ポガセルの国民向け図書館は一つしかなく、タウンハウスエリアの王城側の修道院の中にある。蔵書量はそこそこあると思うけれど、あまり人気がないのか、週末にも関わらず人はまばらだった。


「魔法について知りたいのよね……」


もちろん、蔵書検索機なんてあるはずもなく。また、司書さんのような人も見当たらない。これは気合を入れて自分で探すしかないわね。


――そして数刻が経ち。

私は、壁に設えられた木製のベンチに腰掛け、絵に描いたようにうなだれていた。


「ぜんっぜん何かどこにあるか分からない……」


そもそも、この図書館、誰かに書籍を紹介しようという気がない。

ジャンル表示もないし、索引表示もない。調べたい本を見つけるためには、しらみつぶしに背表紙を見ていくしかない。

無理でしょ。

これは数日掛けないと目当ての本にたどり着けないわね……。

明日も再びここに来ることを心に決めて、探索を再開しようとしたその時、じっと見つめていた床に影が落ちた。


その出どころを見るため視線を上げると、そこにはいつもの制服やキチっとした服装ではなく、黒のパンツに白シャツのみというラフな格好をしたギルが立っていた。


「え……? ギルさま……?」

「リリア、どうしてここに?」

「私は少し調べものがありまして……ギルさまこそどうしてこちらに?」

「週末はここで勉強をしているんだ。人が少なくて静かだからな。だからリリアが来たことにもすぐ気づいたんだが――先日はすまなかった」


先日、とは舞踏会のことだろう。あれ以来ギルと会うこともなかった。今思い返してみれば、あの一日は夢だったんじゃないかとも思えてくる。


「あの日、用意した馬車が使われなかったと聞いて心配していたんだ。何事もなく家まで帰れたか?」

「ええ、ご心配ありがとうございます。ちゃんとあの後自宅まで無事に帰ることができました」

「そうか……。それは、グレンとか?」

「え、ええ……」


なんだか重たい空気になってしまった。


「そ、そうだわ! ギルさま、この図書館で魔法について書かれた書籍がどこにあるか、ご存じありませんか?」

「魔法?」

「はい。私たちが普段何気なく使っている魔法ですが、その起源というか、私たちが魔法を使える理由を調べたくて来たんですが、上手く見つけることが出来なくて」


ギルは私が魔法を使えないことを知らないので、やんわりと濁して調べたいことを伝える。本当に知りたいのは“魔法の使い方”なんだけれどもね。きっと起源にもヒントはあると思うから。


「なるほど。それはこの図書館にないな。学園の図書館にならあると思うが……」

「えっ、ここにはないのですか!?」

「ああ。修道院の中に作られた図書館だから基本的には宗教関連の書籍しか集まっていないんだ」

「こんなに本があるから何かしらはあると思ったのに……」

「そんなに学びたいのであれば、学園に復帰したらどうだ?」

「それは――」


無理ね。今更のこのこ学園に通う気はさらさら無い。学園の図書館は魅力的だけれども。

黙りこくってしまった私をみかねて、ギルが口をひらく。


「まあ、起源については俺が知っていることを伝えることは出来るが――」

「良いのですか!?」


まさに渡りに舟。

そして私たちは窓際に設置されたデスクに対面で座り、ギルによる魔法の起源講座が始まった。


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