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第16話


「あれ? 珍しい組み合わせだ」


グレンに支えられながら再びフロギーの酒場に入ると、目を丸くしたマスターが迎えてくれた。

カウンターまでくると、支えてくれていた腕がスッとおろされる。


「あ、ありがとう」

「別に礼を言われるほどのことじゃない」


はいはい。素直じゃないんだから。

前回と同じ席につくと、グレンはひとつ空けて隣に座った。


「何? グレン、仲良くなったの? 確か……リリアさんだったよね?」

「違う。仲良くなったわけじゃない。ただ手を貸しただけだ」


即座にグレンから訂正が入る。

別にわざわざ“違う”なんて言わなくてもよくない!?


「たまたま足をくじいて困ってるところに通りがかったので、手を貸してもらっただけです」


だいぶ端折ったけれど、間違いじゃないでしょう。

怪我のことを聞いたマスターは、大丈夫? と心配して救急セットから貼り薬を出してくれた。


「ヒーラーが居れば治療をお願いするんだけど、今日はまだいないみたいだからこれを貼っておいて」

「ありがとうございます」


ほのかなミントの香りがする。いわゆる湿布みたいなものなのかもしれない。

処置を終えて椅子にかけると、マスターは「グレンが、ねえ……」とにやにやしながら私たちに100%ジュースを出してくれた。


「――それにしても、リリアさんはどうしてまたこんな所に?」


心の底から不思議そうな顔でこちらを見てくる。そうよね、未成年が好奇心を抱いて何度もくるような場所ではないわね。

今日は腰を据えていろんな人を観察したいし、マスターにちゃんと理由を説明する。

魔法を使えるようになりたいこと、その為に魔法使いに出会って、観察して、可能であれば魔法を使う所をみたいこと――。

グレンは全く興味がないのか、ジュースをちまちま飲みながら受付の方を見ている。


「なるほどね。やりたいことは分かったけれど、この酒場じゃああまり望んだ結果は得られないかも」

「どうしてですか?」

「ほら、見てごらん」


そうしてマスターは受付を指さす。

そこでは、先日来た時と同じようにベルを鳴らして、討伐参加者を集めている風景が広がっている。


「ああやって依頼者が来ると該当するセンシャルを集めるんだけど、早い者勝ちでとにかく流れが速い。だから基本的に酒場ここに長く留まることはないんだ。純粋に酒場として利用している人は別だけどね」


なるほど。確かに言われてみれば皆そんなに長居せずに席を立っている印象がある。

あれ? じゃあこの人は? 先日も今日も同じカウンターでじーっと座ってる。

そんな私の視線を感じ取ったのか、グレンは「なんだよ」とふてくされ、マスターは笑った。


「グレンはね、こんなんでしょ? だから討伐メンバーを見極めたいんだってさ。そんなこと言ってたら永遠にパーティーを組むことができない」

「別にいいだろ。命をかけることだってあるんだ。下手な奴とは組めない」


それでじっと受付を見ていたわけね。この一瞬でそんな見極められるの?

でも、まあ――


「即席で組んだパーティーだと問題も起こりそうですね」

「そうそう。まあ息が合わなくて討伐に苦労する、っていう事もあるし、よく起こるのは討伐後の賞金の配分の問題だね。酒場には斡旋料として30%を払って、それ以外については仲間内で配分を決めるんだけれど、よくトラブルになっているよ」


お金が絡むことについて、ちゃんと事前に取り決めしておかなきゃ問題になるっていうのは基本のキよ……。それに斡旋料。30%も取るの!? 高くない!? ただマッチングしてるだけでしょう?


「そんな状態なのに、これだけ人が集まっているんですか?」

「そうだね、この町に斡旋所はここしかないから致し方ない部分もあると思うけれど」


独占状態ってことね。

改善点がありすぎる。それに、こんな状態だったら魔法使いも観察する事が出来ない。

私なら、もっと上手くやれる気がする。

いい仕事は、いい仲間と組んでこそ得られるのよ!


「――マスターさん、私、自分で斡旋所をつくるわ!」


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