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 スマホを捨てて逃げようとした牧神の体は、再び飛んできた椅子の足にすっぽり嵌まり、壁に縫い留められた。あぶな……あいつの事なんて心配する必要もないけど、目の前で流血沙汰はちょっと勘弁。

 さらに夜羽は椅子をグッと押さえ込んで牧村が逃げられないようにした後、股間の下ギリギリの壁をガンッと蹴り付けた。


「ひぃっ!?」

「あーあー、かっこわりぃ。こんなとこ見られたら、ファンの女どもはどう思うかなぁ?」

「や、やめろぉ! 撮るなぁ……」


 どうやら恐怖のあまり失禁してしまい、その様をスマホで録画されている模様。じたばたと暴れようとするが、腕ごと椅子に挟まれてしまい動けない。


「よく言うぜ、美酉(ミト)を犯した映像をネットで流そうとしたくせに。自分のお漏らし映像の一つや二つでなに泣き言垂れてんだ、あぁ!?」

「あ、あれは本気じゃないっ! 別れるのを撤回してくれればそれで……」

美酉(ミト)は俺の女だ。スマホのデータを俺のパソコンに送っといたから、今度近付いたらネットだけでなく、お前の交友関係全てにこの動画を送ってやるからな」


 は?? いや、さすがにそのハッタリは……こいつと別れたの昨日なのに「俺の女」って、無理なくない? 昔『美酉(ミト)ちゃん』って呼ばれてたの思い出して、ちょっと懐かしかったけど。


「畜生、腹いせのつもりだったのに本当にそいつとも付き合ってたのかよ!? ふざけんなよ、このビッチが!!」

「ふざけてんのはてめぇだ!!」

「おわぁ!?」


 椅子の背を掴み、牧神を挟んだままグルングルンぶん回した夜羽がパッと手を離すと、無理やり走らされていた牧神は足をもつれさせ、椅子と共にガターンとすっ転んだ。


「アハハハ、バーカ!!」

「て、てめぇ……こんな事してただで済むと思うな!? 俺はこの辺のボスとも仲いいんだぞ。生意気な二年がいるって言えばすぐに……」

「お前こそ、俺が誰だか知らねぇのか。角笛組の首領(ドン)の跡取りっつったら俺の事だよ」


 牧神が不良のリーダー格とつるんでるのは、昨日の電話とこいつらとのやり取りで薄々感じていた。が、夜羽はそれを超えるヤバい話をぶっ込んできた。

 いやいやいや、何かその筋の関係者っぽく言ってますけども。『株式会社角笛組』って、ただの建築企業だからね? いくら同じ苗字だからって、勝手に息子名乗るのは詐欺でしょ!?


「ま、まさかそのサングラス……あの伝説の『赤眼のミシェル』!?」


 え、まんまと騙されてる? と言うか『赤眼のミシェル』って何……そんな中二病伝説、聞いた事ないんですけど。裏の世界で何やかんやあるのかしら……交友関係もヤバそうだし、牧神と別れて本っ当よかった。


「分かったらとっとと失せろ、ションベン野郎。次会ったら××踏み潰すからな」


 ダンッと思いっきり床を踏み鳴らす夜羽に竦み上がった牧神は、倒けつ転びつ教室から逃げていった。



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