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 次の日、私は一人で登校した。お母さんから辛いなら休んでもいいと言ってくれたけど、家に引き籠ってたっていい考えは浮かばない。心配もかけちゃった事だし、一人で抱え込まずに萌や琴亀君に相談しなきゃ。


 朝一番に職員室へ行き、先生にサボった事を謝ってから教室へ向かう。途中、琴亀君に会ったので、これまでの顛末を説明した。


「それでか……あいつ、この世の終わりみたいな顔して項垂れてたぜ。杭殿はお構いなしに引きずって連れ回してたけどな……結構力あるよな」


 後半はどうでもいいけど、そっか夜羽も気にしてたんだ……悪い事しちゃったけど、私個人じゃ家庭の事情にはそんなに踏み込めないし、夜羽が踏ん張ってくれなきゃ、このまま流されたら観司郎さんと同じで私が愛人一直線よ?



 その日の昼休みは萌と教室でお弁当を食べていると、教室に戻ってきたクラスメートが私に話しかけてきた。


「輿水さん、角笛君と付き合ってたよね? あっちのクラスの転校生が婚約者とか噂されてたけど」

「うん、まあ……」


 ややこしい事情なもんで何とも説明し辛く、言葉を濁しておく。


「何か、中庭でその彼女といるところを、不良に絡まれてたよ」

「不良!?」

「しかも他校の生徒が乗り込んできたっぽい」

「~~」


 不良と聞いて即座に思い当たった私は、お弁当箱を乱暴に閉めると中庭目指して飛び出した。


  △▼△▼△▼△▼


「ダメじゃない、他の学校に無断で侵入しちゃ」


 私が行った時には既に警備員に摘まみ出されていたようで、トボトボと校門に向かっているところに声をかけた。予想通り、不良とは自称・夜羽の舎弟である赤井君と火山君だった。


「それに、揉め事にはもう夜羽は巻き込まないって約束だったよね?」

「いや、今回はそんなんじゃないっすよ、姐さん」

「そうっすよ。風の噂で夜羽さんが婚約したって聞いて、一言祝いに来たら……何か、姐さんじゃない女といちゃついてるじゃないっすか」


 だから姐さんはやめてって……


「何なんすか、あの女。そりゃちょっと……かなりマブいですけど、姐さんとは別れたんですか!?」

「俺は姐さんの方が好みだけどな」


 あんたらの好みなんてどーだっていい。とは言え彼らなりに気遣ってくれているようだし、夜羽の家の事情を掻い摘んで説明する。


「――というわけで、親が決めた婚約らしいのよ」

「姐さんはそれでいいんすか!? 俺ら不良だから、二股なんてやってる奴もいますけど、夜羽さんは昔から姐さん一筋でしたよ」

「いいって事はないけど……」


 そう言えばサングラスを壊されたから、もう夜羽が彼らに応えられる事もなくなったのよね。事実、先ほどの騒動では夜羽にその事を謝られたらしい。あったとしても『赤眼のミシェル』本人に勝てるとは思えないけど。


(ヤンキーになんてなって欲しくない……だけど、サングラスがなくても、ちょっとだけでもあの強気モードになれないもんかしらね)


 そんな事を考えるくらい、私もこの状況に参ってしまっている。赤井君たちは、本当にお祝いしに来ただけのようで、私に別れを告げた。


「龍さんも寂しがるだろうな。いつでも遊びに来いって言ってたから」

「まあ、夜羽さんも迷惑がってたから無理だろ。特に今はヘタレちまってるし」


 その時、私の脳裏にあるアイディアが浮かんだ。とても危険な賭けだけど……やれるだけの事はやっておきたい。


「ねえっ、お願いがあるんだけど!」



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