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 放課後、いつものように下駄箱の前で待ち合わせをした私たちは他愛のないお喋りをしながら校舎を出た。


「今日はミトちゃん家寄ってもいい?」

「いいけど……珍しいね、よっぴからそんな事言い出すなんて」

「べ、別にいいでしょ彼氏なんだから部屋に行くぐらい……」


 ごにょごにょ言いながら視線を逸らす夜羽に、ついからかいたくなる。


「なに? まだ校内から出てないのにエッチのお誘いですか?」

「ふえぇぇっ」

「美酉、いじめないいじめない」


 ――なんてやり取りをする内に、校門が見えてくる。ここで萌が私の裾を引っ張ってきた。


「見て、あの人だよ。さっき話題になってた美人って」


 言われて目を凝らすと、校門の前にはすらりとしたスタイルにスーツをビシッと着こなす二十代の女性が腕組みをして立っていた。サングラスをかけてはいるが、遠目からでも目鼻立ちははっきりしているのが分かる。

 何とも近寄りがたい雰囲気に、生徒たちは気になりつつも遠巻きで見守っていた。


「え……こっち見た?」


 その女性がツカツカと私たちの方へ歩いてくる。そしてぽかんとしている夜羽の目の前で止まったかと思うと、サッとサングラスを外した。


(あれ……?)


「久しぶりね、夜羽」

「え……っと、どちら様ですか?」


 困惑する声が発せられた瞬間、バチンと凄まじい音がして夜羽が吹っ飛んだ。

 何!? 何が起こったの!?

 地べたに這い蹲った夜羽を助け起こすと、彼も自分が何をされたのか分からなかったらしく、呆然としている。そんな私たちを、女性はゴミか何かのように見下ろしていた。


「なっ、いきなり何なんですか!」

「それはこっちの台詞よ。実の姉の顔を忘れるなんて」


 実の……姉?

 改めてその容貌を見てみると、バッチリ化粧をした大人の女性であっても、言われてみれば似通った顔立ちをしていた。でも、他に家族がいたなんて聞いた事ないんだけど。夜羽ってお母さんが亡くなってから、天涯孤独みたいな感じだったから。……最近、そうでもないらしい事は判明したけど。


「うちは複雑だから、他人に家庭の事情は明かさないのよ。だけど、そうも言ってられなくなったの。

貴女、弟のお友達でしょう? だったら自己紹介しておかなきゃね……

私は角笛楽々ヱ(ららえ)……株式会社角笛組社長、角笛観史朗の娘よ。そこの夜羽の、腹違いの姉って事になるわね」


 何ですと――!?


「悪いけど、弟を借りてくわ。今から親子水入らずで、大事な話があるの」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」

「ミトちゃん!」


 夜羽の腕をぐいぐい引っ張っていく姉 (自称)を止めようと手を伸ばしたところ、逃れようと身を捩る夜羽の後頭部にズビシと手刀が当てられた。カクンと項垂れて動かなくなる夜羽。


「え、ちょ……えぇ――!?」

「出してちょうだい」


 呆気に取られる私を置き去りにして、楽々ヱさんは傍らに止めてあった車に、気絶した夜羽を放り込む。そして運転席にいたのは――


(炎谷さん!?)


 一体何故彼が……炎谷さんはこちらを一度も見る事なく、二人を乗せると車を走らせて行ってしまった。



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