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10/22

10 ルナの不安

微エッチなのでセーフ。いやアウフ。

 ※21/10/14追記

 警告入ったので大幅カットしました。


     ◇


「おっと……あーらら、ついにこうなっちまったかぁ~」

 裸でシーツにくるまったまま、隣で報告書のチェックをしていたルナが、思わせぶりにそんなことをつぶやいた。

 つぶやくというには、ずいぶんと大きな声だが。


「……なにか、おもしろいことでもあったか?」

 聞いてほしいのだろうと思い、ヒドゥンは視線を向ける。

「おー、あったあった♪ あの女――えーっと、あれ……ティナ、だっけか?」

「ティアナのことか?」

「あー、それそれ。そのティアなんとかが、スラムで十人以上にマワされちまったみてーよ。んで、パーティは崩壊寸前だってさ」

 なかなかに衝撃的なことをサラリと言ってのけるあたり、ルナはもしかすると、そうなることを期待していたのだろうか。


 そんなことを考えているヒドゥンを、ルナの不満そうな視線がねめつける。

「おい~、なんとか言えよ~。嫉妬しちゃうだろぉ~?」

「……信用がなくなったとはいえ、あいつは幼なじみだぞ。あいつの両親にも、ずいぶんと世話になったんだ……気の毒だな、くらいには思うさ」

 不服でふくらんだ頬を軽く突くと、むくれた顔はそっぽを向いた。

「ふーん、あっそ」

「どんな状況だったんだ? あいつが杖を持っていれば、ごろつき程度じゃどうにもできないと思うが」

 なんとか機嫌を直してもらおうと、髪やあごをやさしく撫でながら、報告書の内容を確認しておく。


「……そんなの聞いて、どうすんだよぉ」

「ティアナでも勝てないほどの相手がいるなら、ギフティアのほうでも人員を強化する必要があるだろ」

「――あはっ、そういうことかよ♪」


 仕事上の話だったことに気づいてか、彼女の目がいつものように細められる。

「ま、そこは心配いらねーよ、ティアなんとかは丸腰だったらしいからな」

 ティアナだ、と返すこともできず、ヒドゥンは思わず絶句する。

 心配などではなく、純粋にあきれ返っての沈黙だ。

「はぁ……ひとりで出歩くなら、ロッドは必ず持ち歩けと言っておいたんだがな」


     …


 魔術を使うために必要なものは、才能と、魔力と、発動媒体だ。

 その発動媒体こそがワンドやロッド、スタッフなどの杖。

 あるいは高額な加工を施された指輪ということになるのだが、一般的に好まれるのは、邪魔になりすぎず周囲からも目立つ、ロッドだとされている。


 身近に魔術士がいるヒドゥンはともかくとして、実は一般的には、魔術士という存在の詳細は、あまり認知されていない。

 どのように魔術を行使するのかがわからず、けれど威力だけは知れ渡っているため、場合によっては恐怖すら与える存在でもある。


 ロッドはそのための、いわば威嚇用の武器だ。

 それを持っているということは、魔術士かもしれない――そう思うだけで、相手は手だしをためらうことになる。

 魔術が使えないのに、護身用にロッドを持ち歩く女性もいるほどだ。


     …


「はぁ~ん? まぁ、あれだな――ヒドゥンが過保護にしすぎたんじゃね?」

「ああ……そうかもな」

 ヒドゥンが護衛のような役割を果たしていたため、普通の女性なら気を配る身の危険に、意識が向かなくなったのかもしれない。

 定期的に、ひとり歩きするときはロッドを持つように言い聞かせていたが、それがかえって、そういった用意の自主性を奪ってしまった可能性もある。

「……いや、冗談だかんな? 本気にしないでくれよぉ、ヒドゥン~」

 シーツにもぐり込み、脚に抱きつくようにすがりつくルナ。

 その小さな身体を引っ張りだし、抱き寄せ、ヒドゥンは首を振った。

「いや、実際のところティアナだけじゃなく、ほかのメンツについても、俺は少し過保護すぎたと思ってるからな」


 知る必要はない、どうせ自分がいるのだから――。

 そう思って勝手に暗部を担った結果が、いまのパーティ崩壊なのだとしたら、たとえ彼らが傷ついても、現実を教えてやるべきだった。


 信じてもらえないなら勝手にしろと、あのときは冷淡に思ったものだが、自分もずいぶんと意固地になっていたことがわかる。

 追放という扱いを受け、ティアナを奪われ、彼女に裏切られ――気にしてたまるかと思っていたつもりなのに、心の奥底では恨んでいたのだ。

 だからこそ――いい気味だ、と。

 昏い感情が、心の中で嗤っている。


「……ヒドゥン、大丈夫か?」

 珍しくルナが、心配そうな表情を浮かべ、顔を覗き込んでいた。

「え――あ、ああ……すまん、考えごとをしていた」

 極力、声に感情を乗せずに言ったつもりだが、彼女には通じなかったらしい。

 泣きそうに顔を歪め、けれど涙は流さず、ルナは黙って抱きついてきた。

「やっぱり……未練あんだろ? とりあえず、レイプしたクソどもは拘束してるから、報復くらいできると思うけど――」

「……未練はない、本当だ」


 なだめるように彼女の背を撫で、脱力した肢体を横たえさせ、のしかかる。

「そっちはギフティアのやり方で処分すればいい。俺は忙しいんだ」

「忙しいって、なに……んっ、ふっ……」

 なめらかな肌を撫で、頬や耳に幾度も口づけ、体温を移すように肌を合わせた。

「ルナを安心させる役目がある。むさ苦しい男なんて、相手にできるか」

「っ……も、も~、なんだよそれぇ……ひっ、んぅっ……」

 冷たかった彼女の肌が温まり、しっとりと汗ばんでくるのを感じる。

 その温かさと艶めかしさに触れているだけで、ヒドゥンもより熱く、火照っていくようだった。


「う~わ……ははっ、そういう趣味かよぉ? 元カノのそういうの聞いて、興奮しちゃったってことかぁ……う~わぁ♪」

「……怒るぞ」

「いいぜ~、別に――んむっ、んっ……」

 憎まれ口を叩く唇を塞ぎ、口腔を舐め蕩かし、念を押すように告げる。

「俺が興奮するのは、お前が相手だからだ」

「んっ……はぁっ……だったらぁ、証明してくれよ……」

 ルナが両腕を広げ、誘うように伸ばしてみせた。

 そこへ吸い込まれるようにのしかかり、抱擁を受け止めたヒドゥンは、そのまま激しく、情熱的に、繰り返し彼女を愛していく――。


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