ロック・ユー!
楽しんで頂ければ幸いです!
「さあ、始めましょうか」
鈴を転がしたような綺麗な声と黄金に輝く髪、透き通りキラキラと光を吸い取る瞳で、部屋の中に集まったキュートな動物達に微笑みかける。
そんな彼女は“ある物“を手に取り、陶器のような白い手で優しく撫でる…かと思うと
途端に部屋中に音が切り込まれた!
稲妻の模様が入り、白と黒を基調の色としたエレキギターを白く細い指が掻き鳴らす。
淡いピンク色のフリルをあしらったドレスが激しく揺れるほど、体を上下させその度に黄金の髪もうねる。
「ヘイ!ドラム!」
お姫さまの白い右手の人差し指がドラムを指す。
するとドラムからリズミカルな音が繰り出される。演奏者は…
鮮やかな黄色、緑、青の毛…
ではなく羽のカワイー鳥達だ!協力し合って、くちばしでバシバシ叩き見事なリズムを作り出す。
「ハーイ!ピアノ!」
ギターを弾きながら、お姫さまはピアノに寄り添う。
優しい音だが、ギターの音に負けない音色を生み出すピアノの奏者は、生意気そうな顔をした…
猫だ。
白と茶色のまだら模様の猫二匹が、器用に前足を使い撫でるようにピアノを鳴らす。
「ラスト行くよー!」
音は大きく激しくなり、
「ヘーイ!!」
お姫さまが飛び上がり、着地と共に音が下に吸い込まれた。
「あ〜!皆サイコー!」
エレキギターを体からはずし、ギタースタンドに戻す。
そして、音がもれないように締めていた窓に近づき、ガラっと開ける。一気に入ってきた風でお姫さまの髪が舞い上がる。
お姫さまの部屋の窓からは広い庭園が眺めることが出来る。そこでは今、二人の男性がゆっくり歩きながら話している。
一人はこの国の王様。グレーの髪と厳しそうな表情を常にしているが、瞳にはまるで青年のようなキラキラとした光を宿している。
その隣の男性は隣国の第一王太子。そう、お姫さまの婚約者だ。
「ハァ〜」
窓からお姫さまは王太子をうっとりとした表情で見つめる。
どの年代の女子にも受けそうな甘いマスク、スラッとしたスタイル、そして何より声!
「おはよう」
その一声だけで、卒倒する女子は多数いるだろう。程よい深みと心地よい波長。素晴らしい。
素晴らしい!
「素晴らしい!ボーカルよ!」
そう…彼こそ、このバンドに必要よ!長年探し求めていたボーカル!まさかこんな形で見つかるなんて!
「絶対に、絶対に、ぜーったいに!スカウトしてみせます!」
ぐっと赤くなるまで拳を握り、瞳に炎を灯すお姫さま。今、彼女の心にはロック魂が燃え上がっている。
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