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マリオネットモンク

この日も街の外に出かけた相棒である。

今日のお目当てはマリオネットモンクと呼ばれる、空手を得意とする

人形である。このマリオネットモンク、カウンターを綺麗に決めると昏倒してくれる。

しかし、他の倒し方が無いのがネックである。

カウンターを綺麗に決めるということがマリオネットモンクにとっての

プライドに関わってくるのであろう。「お見事!」と言っているのかもしれない。

相棒は吾輩を装備し、マリオネットモンクと相対した。

このマリオネットモンク、機械ではない。攻めは一級品なのだが、

人のようにミスをする。つまり、マリオネットモンクを相手にする場合、理詰めでカウンターを

当てるのでなく、ミス待ちをするように守るのが主体な戦法になるのだが、

これも機械でなく人のように、ある程度のレベルの攻防ではミスをしてくれない。

マリオネットモンクのキャパシティを超えるような攻防をさせた時に、

ミスを初めてしてくれる。つまり、マリオネットモンクの処理能力を超えるような

守り方を自分が分かっていないと、正攻法でカウンターを当てるしかないのである。


相棒がカウンターの構えをとったと同時に、マリオネットモンクが攻めてきた。

ポイント制の空手のようにマリオネットモンクはステップインとステップアウトを

生かした早さ重視の体重の乗っていないストレートを放ってきた。

相棒はステップアウトと頭部を後へ逸らすことでよけた。

マリオネットモンクもストレートを放った後、ステップアウトして、

その場でリズムを取るようにぴょんぴょんとその場ステップをきざんで、

また、ステップインして間合いを詰めてくる。今度はジャブがわりの相棒の視線を邪魔するように

片方の手を相棒の顔の前にずっと置いている。相棒が嫌がってその手を払いのけると、

マリオネットモンクのストレートがとんできた。

相棒は先程と同じように避けようとしたが、半歩間に合わず、

僅かに喰らってしまった。

『くう~』

相棒は目の前が一瞬見えなくなったであろう、悔しさと痛さの混じった声を出した。

ふむ、ここは吾輩の力のかし時であろう。


このマリオネットモンク、正解を求めるような動きをしてはいけない。

例えば、マリオネットモンクのストレートにただ反応して、

避けるか片手でいなしてカウンターを叩き込むという、自分の能力に任せた戦法では

なかなか昏倒させることが難しい。ではどうやるかというと、

何処に、面白味を見つけるかということである。

マリオネットモンクにカウンターを当てるのは確かに、爽快で快感を覚えるほどである。

それが理由で人気の相手であるのだが、

まず、カウンターを当てるということは、一旦置いて、マリオネットモンクのストレートを

避けるということに面白味を見つけれるかが、昏倒させるための近道である。

ここに面白味を見つけれると次はどうやって避けよう、こういう構えなら避けやすいな、

など、避けるためのプロセスを考えるようになる。それこそ面白くなって多種多様な

守りを思いついては試す。そうこうしている内に、マリオネットモンクは

ミスを起こして、隙をさらすのでそこに簡単な攻撃をするだけでよい。

なんだこんなことかと思うべからず。

考えない人は、何年経っても、自分の能力を上げることしか頭になく、

他人の作った攻略法しか実践しない。

機械が相手であれば効率がいいのであるが、マリオネットモンクは機械とは違い

、ミスをする。

ミスをする相手には、自分のプロセスを組み、相手のキャパシティを超えるような、動きや思考をさせて、

キャパシティオーバーになって認識力が落ちたところで、相手の認識外の動きで攻める、

もしくはキャパシティオーバーからのミスを誘ってそこを突くのが、勝率が高くなってくる。


なので吾輩のすることは、仲の悪い人が、無様にこけたときに、心の中で

「プッ、あの娘こけてやんの!」

と、嘲る位の気概をもってもらうことである。ちょっと極端かつ相棒が少し嫌なやつになってしまうが

相棒のステップアップの為に目をつぶろう。


まず、相棒の頭の中から、カウンターの五文字をきれいさっぱり消し去ろうと思うので、

忘却のフェロモンを出す。

そして次に、相棒はとてもいい娘なのだが少し卑屈になってもらおう。

ここは、とりまきのフェロモンを使おう。

なんで、こんなフェロモンあるんだと我ながら思うところはあるが気にしたら負けである、

っと、効いてきたようである。


相棒が構えを取り直すと、マリオネットモンクがステップインしてきた。

のだが、そこで少しつまずいて、よろけたようである。相棒チャーンス!!と

吾輩、応援したのであるが、相棒はというと、

『プッ!』

と鼻で笑い少しにやけている。

あ、フェロモン効いてるわと思ったものの、吾輩は、相棒、それ以上卑屈にならないでねと、

思いをはせることしか出来ない。

若干マリオネットモンクが「イラ!」っときてるような気がするのは気のせいだと思う。

相棒は、ほらほらどうしたの?、みたいな感じで、サイドステップよろしく

マリオネットモンクを翻弄しだした。

うん、しょうがないよね、、、。こういう相棒もありである。


これで勝負は見えたようなものである。マリオネットモンクはステップインからのストレートを放つも

相棒は、カウンターなど頭になく、わざと頭を撃ちやすい位置にしたりして、挑発しはじめた。

マリオネットモンクは「イラッ!」っとやっぱりきてたらしく、限界以上のスピードで

ステップインをして、足を滑らせて、転倒。そこへ相棒の蹴り下ろしが、側頭部へ決まり、

マリオネットモンクは昏倒。

相棒は勝ちグセを得て、「目的忘却」と「後の先」の称号を得た。

「後の先」は相手の思考を誘導する、思考誘導が強化される。相手の思考を上手く誘導して、

カウンターをとりやすくするのですあろう。

「目的忘却」は、一見マイナスのように思うが、他人の攻略をなぞるような、こうなったら、

こうなって、こうなる、という一般的な教科書のような論理展開ではなく。

こうなったから、こうしよう、という能動的で自発的な、目的そっちのけの論理展開で

、結局、目的達成に行き着くという、無茶ができる。

希少な称号である。

だだし性格にも多大に影響が現れるので、吾輩としてはありっちゃありだが、

なしっちゃなしの、扱いづらい称号である。

『んふふ、今日はこれ位にしとこ』

相棒はご満悦で帰宅の途についているのである。

吾輩、こういう相棒、有りである。

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