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デビュー

なにで吾輩を試すのだろうと思っていたら、木の前で吾輩を身に付けだした。

『よし!』

試し打ちか。お手並み拝見といこう。

少し緊張気味に相棒は、木に吾輩を打ち込み始めた。


型はいい。速度も申し分ない。運動神経も並よりありそうだ。

しかし、重さが拳に乗っていないようだ。センスはいいと思う。

これは、是非とも吾輩が力を貸したい。そう思える素質である。

しかし、吾輩に出来ることは限られている。期を待とう。

相棒は10分ほど木に打ち込みを行い、満足そうに町の外へ移動を開始した。


いざ町の外、相棒の視線は静電気うさぎに固定されている。

頭に一本の20cm~30cmの鉄パイプを生やしており、それに触ると

涙が出るほど痛い静電気が「バチ!」っと流れる。とても痛い。

体長は普通のうさぎである。さて相棒はどう攻略するのだろうか。

相棒が近づいていくと静電気うさぎは、「なんだやんのか!?」と

警戒して体を低くしてきた。

『いっちょやったりますか!』

相棒も構えに入り、いよいよ、吾輩のデビュー戦が始まる。


静電気うさぎの戦法は、鉄パイプを前に突き出した、いわゆる

正眼の構えで、相手に「バチ!」っと喰らわして、ビックリさせて

追い払うのが目的らしい。

常に鉄パイプをこちらへ向けてくるので、金属製の武器との相性では、

静電気うさぎに部があるかもしれない。

二人以上のパーティーで挟み撃ちにすればいいのだが、

一人では少し厄介である。


相棒は静電気を喰らう覚悟で左手の小手で鉄パイプを払う。『痛っ!』

その隙に、右キックをお見舞いした。静電気うさぎは気を失い、その姿はゆっくりと薄くなっていき、

やがて消えた。

『くう~っ』

相棒はというと、少し涙をにじませながらも、『よし!次!』

と気合を入れている。

少し、勝ちグセが貯まったようだ。

相棒は2匹目の静電気うさぎを見つけたが、今度はペアの静電気うさぎである。

相棒は構えをとるが、どう攻めていいか迷っているようだ。

ここは吾輩が手を貸すところであろう。相棒に語りかけようと思う。

さてさて、相棒はどれだけ干渉を許してくれるだろうか。


この静電気うさぎは、鉄パイプを前へ突き出す構えを取ってから

10秒ほどすると、そのまま相手へ突っ込んでくる習性がある。しかも、

そのスピードはかなり遅いので、そこにカウンターの回し蹴りなどが

いいだろう。


【相棒よ、少し待ってみてはどうか?】

相棒へ、語りかけはしたが、言葉が明瞭に伝わるわけでは無い。

ただ、そういう「雰囲気」「気分」になるというだけである。

もう少し厳密にいうと、人には、認識も観測すらも出来ない

、フェロモンのようなものを出す。

そのフェロモンのような「霧」とでも表現すればいいだろうか

そういうものを漂わせて、今抱いている「気分」や「やる気」「集中」

や「気力」などに干渉する。

例を上げるとするなら、非常に集中し過ぎて視野狭窄に陥っているとする。

その場合、少し集中を削ぐような、フェロモンのようなものを漂わせて、

視野狭窄を直す。

つまり、あまり良くない状態をフェロモンのようなものを使って

良い状態へ、導き、上書きしてあげるといった具合だ。


さきほどの語りかけが巧を成し、相棒は様子見をしてくれている。

そろそろ静電気うさぎが突進してくるころだ。

2匹同時に突進してきた。

サイドステップからの横蹴りがいいと思うが、相棒の意識は間合いを見極めるのにキャパシティを

使っている。そこまで考える余裕は無いだろう。

相棒は先程と同じように、鉄パイプを2本同時に、左手の小手で払い、

1匹をサイドステップでよけながら、もう1匹へ前蹴りを放った。

前蹴りを受けた方の静電気うさぎは昏倒し、もう一方の静電気うさぎは

正眼の構えに入ろうとしている。


一方の相棒は、涙を堪えながら、突進、鉄パイプにフックを喰らわし、

その隙へ前蹴り。静電気うさぎは2匹共、薄くなって消えていった。

流れるような良い動きだった。

勝ちグセが貯まり、自信家の称号を相棒は得たようだ。

この自信家という称号、負けたらどうしようとか、ネガティブな

余計なことを考えないようになる。

今ならもう少し厄介な相手も倒せるだろう。

『いったいけどもうちょっとやりたいな~』


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