【コント】遅刻
場所:高校の職員室
役:生徒=ボケ 教師=ツッコミ
ガラガラとドアを開ける音。
生徒「失礼します」
生徒が職員室に入ってくる。
教師「おお、来たか。何で呼び出されたかは、分かってるよな?」
神妙な面持ちで頷く生徒。
生徒「はい。今年の龍神様への生贄に、僕が選ばれたんですよね」
教師「何の儀式だよ。違うわ。お前の遅刻グセがひどいから呼んだんだよ。」
生徒「遅刻?ああ、あれは遅刻じゃなくて、翌日の分の前乗りなんです」
教師「どんなシステムだよ。ウチそういうのやってないから」
生徒「そんな・・・!ずっとダマしてたんですか」
教師「何で被害者ヅラなんだよ。そこは反省するとこだろ」
生徒「・・・ゴメンな」
教師「友達か」
生徒「いやいや、僕にだって友達を選ぶ権利くらいありますよ」
教師「失礼なヤツだな」
生徒「さっきちゃんと、『失礼します』って言いましたよ?」
教師「あれそういう意味だったの?いや、そんな事より遅刻の話だよ。まったく、毎日毎日遅れて来やがって」
生徒「毎日じゃないですぅ~。週末は含まれませ~ん」
教師「ハァ・・・。まぁ確かに厳密には毎日じゃないけど・・・」
生徒「そうですぅ~。金土日は休みですぅ~」
教師「いや、金曜は来いよ」
生徒「そうですか。伝えておきます」
教師「誰にだよ。お前に言ってんだよ。てか何で、来る・来ないの話になってんだ」
生徒「遅れる・遅れない・遅れるの話ですよね」
教師「花占いか。しかもちゃっかり『遅れる』で終わりやがって。お前さ、そもそも、何時までに学校来ないと遅刻か知ってんのか?」
生徒「諸説ありますよね?」
教師「ねぇよ。8時半一択だよ」
生徒「8時半っていっても、朝・昼・夜とありますよね?」
教師「朝に決まってんだろ。昼の8時半って何だよ」
生徒「そんなのあるんですか?」
教師「お前が言ったんだよ。いいか、明日は絶対、朝の8時半までに学校に来いよ」
生徒「その心は」
教師「これ以上どう噛み砕けと?・・・ったく、もし明日遅刻したら、規則に従って、停学だからな」
生徒「えー!それだけは勘弁してください!ちゃんとピーマンも食べますから!」
教師「子供か。どういう交換条件なんだよ。ピーマン嫌いなのか」
生徒「大好きです」
教師「好きなのかよ」
生徒「ピーマンにピーマン詰めて食べたいくらい好きです」
教師「そんなに好きなのか」
生徒「でも一番好きなのは、先生です」
教師「キュン。いや、キュンじゃなくて。なんで急に媚びだしたんだ」
生徒「吊り橋効果を狙ってみました」
教師「どこがどう吊り橋効果なんだよ。吊り橋どころか綱渡り級の賭けだよ」
生徒「じゃあそれで」
教師「テキトーか。オレの心をもてあそぶな。とにかく、明日は朝の8時半までに学校に来い。いいな?」
生徒「僕なりの8時半でいいですか?」
教師「それ何時なんだよ」
生徒「神のみぞ知る、といったところでしょうか」
教師「いや、お前は知っとけよ。自分の置かれてる状況わかってるか?あと一回遅刻で停学だぞ?もう後がないんだぞ?」
生徒「敗戦の弁ですね」
教師「背水の陣だよ。まだ負けてないから諦めるな」
生徒「わかりました」
教師「ところでお前、いつもどうやって起きてるんだ?」
生徒「こうやって・・・」
上半身を起こすジェスチャーをする生徒。
教師「いや、体勢の話じゃなくて。目覚ましとか使ってないのか?」
生徒「メザ・・・マシ・・・?」
教師「どんだけ馴染みないんだよ。使ってないなら明日からスマホのアラームでも使えよ。それなら遅刻しないだろ」
生徒「チコ・・・ク・・・?」
教師「いや、『遅刻』は散々言ってただろ」
生徒「なんなんですか!さっきから遅れるな遅れるなって!健康に育ってくれればそれだけで十分だって、言ってたじゃないですか!」
教師「言ってねぇわ。オレはお前の親か」
生徒「ウチの親はそんな事言いませんよ!」
教師「それは・・・なんかスマン。でもな?規則は規則だから。わかるだろ?」
生徒「・・・はい」
教師「おお、わかってくれたか」
生徒「じゃあ逆に、ちゃんと時間どおり来られたら、ゲーム買ってくださいよ?」
教師「全然わかってねぇな」
おわり