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昇日

 砂の海、吹き上がる砂塵に見え隠れして、少女は凛然と立っていた。

 熱く乾いた風がのどを焼く。口元まで外套のえりを引き上げ、少女は前かがみになって砂丘をのぼった。褐色のうなじにかかる黒髪は無造作に切られ、乾いた風にばさばさとなぶられる。木賊(とくさ)の外套を羽織って、腰に剣を携えたその姿は、とても十四の少女には見えない。

 少女は父譲りの赤い双眸を細め、砂漠の果てを見すえた。

「なんて風が吹くんだろう」

 育ちの故郷をあとにして、少女は枯れた大地に踏み出した。植物も生き物も根づかない死の大地。その果てに答えを求めて。


………………………………………………………………。

 ザティアレオス家がラティオセルム大陸、ならびに隣接するサルベジア大陸を統治して数百年。十代目国王の時代にそれは起こった。

 国王本家一派と王弟分家一派との争いは、長く水面下で冷戦状態を保っていた。しかし、ぎりぎりの均衡は破られ、覆水はとめどなく溢れた。

 内乱は王家、王族そのものを壊滅においやって終結した。王族の血は、唯一、王弟一族の幼い末子が継ぐのみとなった。この遺児が成長するまでという名目で、大臣により、初めて民衆から王が選定された。現女王シーナ・アルティディエ・グラトリエの即位である。

 新女王の即位から数か月、王制にもとづいていた法案などが急速に改められ、何とか国政が軌道にのった矢先。世界は新たな危機に瀕することとなった。

 命の最たるもの、生命の源流たる「(ウバス)」。海の精霊は命を引きつれて忽然と姿を消し、国土を「死の砂漠」が蝕み始めたのである。



………………………………………………………………。

 ひとり砂漠を往く娘の名はアリアテ。

 地平の彼方が朝に焼かれはじめた。アリアテは目を細めて空を仰ぐうち、ひとすじの流れ星を見つけた。星は尾を引いて落下し、ほんの数十キーマ先の泉で水音を立てた。

 かつて緑の平原であった頃から、この土地には「神の鳥の加護を受けた泉」というものが存在した。近隣の民は祠を立て、泉そのものを祀っている。その泉には、出逢うべき者を引きあわせる力がある、と村人たちは信じていた。

 アリアテは興味を引かれ、泉に向かって歩き出した。つま先が砂にとらわれ、風におされて転びそうになりながら、砂地にぽっかりと空いた窪みの底を眺める。水かさは減っているが、不思議と砂に埋もれないその泉の底に、美しい石が沈んでいた。

 あぶくを上げるこぶし大の石を拾い上げると、空に似た色をしていた。

「良かった、人の子が居た」

 突然の声にアリアテは宝石を取り落とした。獣のように目を見開き、鋭い視線で辺りを見回すが、誰もいない。そこで怪訝な顔をして、もう一度宝石を手にした。

「そうそう割れたりはしないが、乱暴にされると心が傷つく……驚かせてしまったことは謝るよ。私はこの宝石に宿っている精霊なんだ」

 ――うさんくさい。

 アリアテは腰に帯びた剣の柄に手をかけた。

「待ってくれ! ただ私を持ち歩いてほしいだけなんだ。古い友を探しているんだが、この通り、石の体では動くことができないし……」

「お前が、悪いものではないという証は」

 少女のすさみきった視線に、宝石は戸惑い、落胆し、小さく答えた。

「うーん、証明することは、できない」

 すると、アリアテは途端に噴きだし、元気のいい笑顔を宝石に向けた。

「わかった。石ひとつ増えたところで苦にはならないし、話し相手ができて嬉しいよ。僕はムジナ」

「信用してくれるのか! ありがとう。私は虚空(クオーレ)。しかし、ムジナとは変わった名前だね」

 宝石の言葉に、笑っていたアリアテの顔がすっと冷め、険しくなった。

「すまない、名前をどうこう言うのは失礼だった」

「違う。いま、何て名乗った?」

「虚空、と」

 アリアテは改めて、宝石の色と空の色とを見比べた。同じだ。白みはじめる東の空をそのまま映したように、宝石は淡く、白から青にかけて諧調がうつりかわっていた。

「クオーレ?」

 この虚空の精霊の名をクオーレと呼ぶことは、カレスターテの者なら階級の隔てなく、誰でも知っている。海と空とに宿る精霊たちは、生きとし生けるものの一生に寄りそう身近な神だからだ。

 魂は海から産まれ、親に宿る。一生を終えた魂は空へと還り、浄化されて銀の雨となって海へ注がれ、再び海から産まれ出る。それがこの世界の理。

 それと全く同じ名を冠する空色の宝石。

「多くは語れないんだ。それで信用してくれ、連れて行ってくれと言うのは厚かましい願いだけど……」

 アリアテはしばらく宝石を眺め、頷いた。

「いいよ。ここで会ったのもきっと縁だ。よろしく、クオーレ」

「ありがとう、よろしく」

 宝石が淡く光り、数珠をとおした紐が現れた。宝石をあまり離してしまうと、クオーレとは話ができないという。アリアテは宝石を首にかけ、懐にしまった。


 ゲートルを巻いた足が一歩、また一歩と砂漠に足跡を刻んでいく。刻むそばから、風がその痕跡をかき消していった。

「君は、誰かとはぐれたわけでもなさそうだね。どこへ向かっているのか聞いてもいいかい」

「それが、僕にもわからない」

「なるほど……それじゃ、どこから来たのか聞いても?」

 アリアテはおぼつか無い足取りで砂丘をひとつ越し、砂山の影で一息ついた。

「ここから半日歩いたところにある漁村」

「半日なら夜になる前には着ける。悪いことは言わない、いちどその村へ引き返したほうがいい」

 小さな皮袋の中の食糧や飲み水はわずか、クオーレは――実体があれば――頭を振った。

「行先のはっきりしない旅で、この軽装では命取りになる。戻ろう」

「戻れないんだ」

 アリアテははっきりと言った。

「もう、戻れない」

 日が頭上にかかってくると、すさまじい風は止んだ。アリアテは汗をぬぐって立ち上がり、次の砂丘をのぼり始めた。

 頂上には、砂に半分うずもれたヒト族の頭蓋骨があった。熱風に吹かれる骸が不意に、かすれた笛のような音を立てた。

「ラグナレクへ行くなら、右手のほうへ進まなくちゃ」

 ごとり、と頭蓋骨が身震いをする。泣いているようだった。

「ね、あなた。子どもが、こんなところで迷ってちゃ危ないわ。ラグナレクへ行くつもりなら、右手に見える砂丘を越えて、まっすぐお行き」

 不気味な水先案内に、アリアテは懐の宝石をおさえた。クオーレは落ちついた声でアリアテを促した。

「大丈夫、害意はない。行こう。右手の砂丘を越えてまっすぐだ」

「わかった」

 頭蓋骨のいる砂丘を後にして、アリアテは次の砂丘を越えた。その向こうはずっと平らな砂漠が続いていた。

「死んだ者の魂は空に還ると思っていた」

 アリアテはかすんだ遠い丘陵を眺めて呟いた。

「……空と海とは互いを映す鏡のようなもの。片方が欠けていては役目を果たせない。今の虚空は、すでに抱えている魂を零さないようにすることで精一杯なんだ」

「もし、虚空にある魂があふれ出したら?」

「地上は死者の国になるだろうね」

 うまく循環の輪に加われなかった魂は、地上に留まり、多くの穢れと執着を溜めこんでいく。そうして魔物に変化し、生きている者を片っ端から襲うようになるのだ、とクオーレは言った。

「地上に死者の魂が溢れても、やはり地上は死者の国になってしまう。そうなる前に海を見つけ出して、銀の雨を降らせないと」

「クオーレは海を探していたのか。実は、僕の探し物も海なんだ。漁村では魚も貝も、海草も取れなくなって、空っぽの海に漕ぎだす舟もない。村の外には死の砂漠も迫っている。どうにかしなくちゃと思って、つい村を飛び出してきた」

「無謀だな」

「それは、宛てもなく空から降ってきた君も同じだ」

 ふたりはくつくつと小さく笑いあった。

「ところでムジナ。なぜ君が死者の声を聞くことができるのかは問わないが、生きた者と死した者の境界は、本来、越えてはならない一線だ。私と一緒にいるあいだは守ってあげられるが、さまよえる魂のなかには、害意に満ちた怨念も少なくない。なるべく関わらないことだ」

「うん、姉さんもそう言っていた。死を迎えた魂は二度と元通りになることはない……だから、終わった生に未練を残さないよう、生きている者は関わり合いにならないほうがお互いのためだ、って」

「お互いのため、か。優しい考えだ、いいお姉さんを持ったね」

「うん」

 アリアテの、遠い日々を懐かしむ目がわずかに潤んだ。

 しばらく歩くと、赤い旗が砂に突き立っていた。引きちぎれそうにはためく布地を掴まえると、ラグナレクの字と方角を示す矢印が刺繍してあった。ラグナレク。水源を抱える大きな宿場町だと、名前だけは聞いたことがあった。

 アリアテは次の道標を目指し、砂から足を引っぱり出して進んだ。


 ラグナレクを目指して一日目。すぐに日が暮れたが、安全に休める場所が見つからない。仕方なくアリアテは、夜行性の魔物を避けて歩き続けた。

 夜半、月光に白く輝く砂丘をのぼったアリアテは、わずかな砂の流動を感じて抜刀した。小ぶりの鞘のどこに納まっていたのか、両刃の大剣が白く光る。とたんに、褐色の少女の体は繰られたように飛び退き、砂を巻き上げて躍り出た大ムカデの急襲をかわした。

 大ムカデは全長の半分だけを砂から出し、遥かアリアテの頭上で鎌首をもたげて顎を鳴らした。

「ムジナ、逃げよう」

 大ムカデはラティオセルム固有の巨大な虫だ。魔物ではない。だが、強い顎やしつこい毒を持つ厄介な相手だった。そのうえ、頭や胴を節ごとに切り離しても、それぞれの部位は小一時間も狂ったように暴れ続けるという。

 剣一本で太刀打ちできる相手ではない。

 しかしアリアテは切っ先を大ムカデに突きつけた。アリアテが赤い双眸をかっと見開くと、ゆらり、ゆらりと刀身に火が点る。やがて明々とした炎が剣を包むと、大ムカデは熱を嫌って地中に逃げ、それきり現れなかった。

「その剣、つば飾りは魔鉱石かい」

「詳しくは知らない。父の形見だと、ある人が届けてくれたんだ」

 アリアテは炎を消し、震える手で納刀した。その手のひらには、剣の炎に焼かれて火脹れができていた。

「どうすればいいかは、柄を握っているあいだ剣が教えてくれる。僕は剣を支えているだけさ」


 夜が明け、二日目は酷暑の中を歩き通した。干し芋は尽き、水も数滴となったところで、アリアテは見覚えのある花を見つけた。

 暗褐色の毒々しい薔薇を冠した、低木の群生。その植物の近くには魔物が寄りつかないことを教えられていた。四方にのびる鋭い刺に注意しながら、アリアテは薔薇の影に腰をおろした。

「これはザイロ種だね。この花は根からあらゆる毒素を吸い上げて、周りを浄化しているんだよ」

 赤黒い不気味な花弁を映し、クオーレは愛しそうに言うが、ザイロ種の蓄えた毒は生易しいものではない。

「刺で傷つけた者の命を容易く奪ってしまうから、近づきすぎないようにとよく教えられたよ。こんなに間近で見るのは初めてだ。内側には刺はないんだね」

 複雑に絡み合う石灰色の枝を観察するアリアテに、クオーレは言った。

「花には、この花たちには、決して傷つけるつもりは無いんだよ」


 三日目の出発は夜半だった。昼から休息が取れたアリアテは、目が覚めたついでに歩き出した。

 懐で揺られながら、クオーレが眠たげな声を出した。

「夜出歩くのは危険だ。夜は魔物や野盗の時間だよ」

 言うなり、地面の砂が踊り出した。静かな砂漠の向こうから足音がいくつも重なって近づいてくる。砂煙が見えてくると同時に、何本ものきらめく刃も見えた。

「やっぱり夕べのガキだ」

 短足毛深の馬に跨った男たちは、あっという間にアリアテを取り囲んだ。

「小僧、金目のものを全部出しな」

 言われて、アリアテはとっさに懐をおさえそうになる手を制した。見た目にはクオーレ――宝石――を持っていることはわからないはずだ。

「金はない」

「じゃあ、腰のたいそうな剣を寄越せ。坊主にゃ重いだろう」

 男たちは嘲笑し、手を出した。仕方なくアリアテは鞘ごと剣を外し、柄を男に向けた。

「悪いことは言わない。触らないほうがいいよ」

「ケガするってか?」

 熊のようながたいの男は豪快に笑い飛ばし、乱暴に剣をかっぱらった。だが、すぐに情けない悲鳴を上げて剣を放り出した。アリアテは鞘に結んだ紐をまだ握っていて、素早く剣を取り戻した。

「だから言ったのに……」

 男は馬から転げ落ち、うずくまって何度も悲鳴をあげた。男の手は焼けて、蝋のように溶け落ちそうだった。

「ばかめ、大ムカデとやり合った小僧なんだろう。得物だって普通の剣のわけがねえ。魔剣を奪う時はな、持ち主を殺すのが手っ取り早いんだ」

 頭領とおぼしきひげ面の男が手下に合図し、数人が弓を構えた。飛び道具は分が悪い。

「そうだろう坊主、魔剣てのは主人が生きてるうちは守ろうとするが、死んじまったらあっさり諦めて、次の主人が現れるのを待つ。薄情だよなあ」

「ムジナ!」

 クオーレが叫んだ時、にわかに砂の表面を抉るような風が吹いた。

「ぐわっ 何だこの風は」

 死の砂漠では予想できないことが次々に起こる。突然、盗賊とアリアテのいた場所だけが砂嵐に見舞われたとしても不自然ではない。アリアテは乱れる人馬のあいだを掻い潜って逃げ出し、窪地に身を隠した。

 やがて、盗賊団が風に追い立てられるようにして逃げてしまうと、アリアテはほっと息をついた。

「ああ、ありがとうクオーレ。助かったよ」

「私は何もしていない。情けない話、何かしてあげたくても何もできないんだ、この体ではね。君が強運の持ち主で助かったよ」

「きっと風の精霊だよ。風は空の精霊の心から産まれたものだから、クオーレを助けようと思って吹いてくれたんじゃないかな。とにかく助かった」

 窪地から這い出すと、アリアテの耳にハタハタと布のひらめく音が届いた。次の道標に従って歩き、また次の道標に従って歩き、日中にはまたザイロ種の群生を見つけて、そばで休んだ。生き物の絶えた死の砂漠では、ザイロ種の薔薇以外に植物は見当たらない。

 日が少し陰ってくると、湿気をふくんだ風が吹き始めた。

「死の砂漠にも雨は降るのか」

 アリアテは鼻をひくつかせ、歩みを速めた。次の道標に着くと、遠くに大きな壁が見えた。



………………………………………………………………。

 宿場町ラグナレクは高い外壁にぐるりと囲まれ、城砦さながらの見た目をしていた。野盗避けのために設けられた防壁だが、今では死の砂漠から押し寄せる砂や暴風から町を守っている。さらに、町の中心部から天高く噴きあがる水が、ラグナレクの空と防壁とを覆っていた。

 アリアテは、外壁に刻まれた模様と、水のカーテンとを興味深そうに眺めた。

「よう坊主、こうやって砂から町を守っているんだぞ」

 感激しながら水のカーテンに手を突っこむ姿は、どこにでもいる、好奇心旺盛な子どもにしか見えない。ロバを牽く青年が通りかかり、アリアテの背中を軽くたたいた。

「これから雨になる。濡れると風邪引くぜ、早く入んな」

 青年が門に近づくと、水のカーテンがするすると開かれた。アリアテは青年について、そわそわと町の門をくぐった。


 昼中のラグナレクは、宿場町らしく盛況していた。

 町の東西南北を十字に走る大通りは、長い年月をかけて土が踏み固められていた。店の軒先にさらに出店が屋根を連ねていても、馬車どうしがすれ違えるほど余裕がある。

 アリアテは、棒組みと幌の屋根、木箱や板を並べただけの出店を眺めて歩いた。売り物は干した果物や魚、肉など、砂漠用の携行食糧が多い。中には焼きたてのパンやナン、それと一緒に食べる煮物などを売っている屋台もあり、胃袋を鳴かせるにおいが立ち込めていた。

 けっきょく、アリアテはどの屋台にも寄らず、町の中心にある噴水広場まで来た。噴水の胴は蓮の茎のようにのびて、頂上で円形に水を放射している。水のカーテンのおかげで、町は乾燥からも守られ、息をしても鼻の中が痛まなかった。

 くきゅう、とアリアテの腹の虫が不平を漏らすと、すかさずクオーレが言った。

「お腹が空いただろう? ずっとまともな食事をしていない。ムジナ、私の体を少し欠いたらちょっとした値段で売れるんじゃないかな」

「ばかなことを言うなよ。大丈夫、売り物にする貝細工なら少し持ってきたし、いざとなったらどこかで雇ってもらうから」

 うなる腹をおさえ、アリアテは通りをぼんやりと眺めた。誰も彼もが袖のある服を着て、腰に巻いた帯にはそれぞれの石飾りをつけていた。裸足で歩く者は一人もおらず、女性はきれいに化粧をしている。

 誰の表情も豊かで朗らかで、病的に頬のこけたような者は見当たらない。

 ――この町の人々は豊かだ。漁村のみんなも、心は決して貧しくはなかったけど……

 魚も貝も、海草すら取れない空っぽの海を思うたび、アリアテは胸がしめつけられた。その海を眺める人々の沈んだ顔や、元気をなくして丸まった背中を思い出す。

(せめて、この町のように砂害を減らすことができれば、家が壊されることはなくなる)

 死の砂漠から吹く風のせいで、村には大量の砂が降り積もる。放っておけば屋根が落ちてきて家が潰れてしまうので、若い男女の仕事は毎日の砂かきに変わった。いよいよ被害がひどくなれば、村中で遊牧民の集落に加わり、故郷を捨てなければならないところまで追いつめられている。

 ――早く原因を突き止めないと。海を取り戻せばいいのなら、命を削ったって必ず見つけ出してみせる。

 アリアテは立ち上がり、途方もなく町を見渡した。すると、大通りをとぼとぼと歩く、アリアテと似たような格好の人物を見つけた。周りの町民と比べれば、女の着ているものは、まるでぼろきれだった。

 妙に気になって、アリアテは女の後をつけた。女は大通りを外れ、壁のほうへ向かい、通用口から外へ出て行った。扉を押し開けてそれに続くと、外壁に沿ってあばら屋が長屋をつくっていた。水のカーテンの外側で、あばら屋は今にも湿気た風に飛ばされそうに軋んでいる。

「坊や、金がないのかい」

 後ろから手をひかれ、アリアテはぎくっとして振り返った。着崩したたもとから、少しのぞけば裸の胸が丸見えの女が、アリアテの手首をしっかり掴まえていた。

「ここは金がない連中が町にしがみついてる、そんな場所だよ。(えき)も流行ってるから長居はすすめない」

 女が顎でしゃくった先には、ムシロの上でぼんやりと空を眺めている男がいた。全身に布きれを巻きつけ、その間に見える皮膚は乾いた大地のごとくひび割れて、紫色をしていた。

「エキ」

「見たことくらいあるだろ。海の精霊が消えてから流行り始めた不治の病さ。どうやって移るんだかは知らないけど、近寄らないほうがいいよ」

 ――もしかして、漁村のみんなも今ごろは……

 ぞっと肌を粟立てるアリアテを、女はさっさと壁の内側に連れ戻した。

「あそこに居るのは、この砂漠化のアオリをくって商売ができなくなった連中さ。坊やは商売人じゃないだろ? それ」

 女はアリアテの手を離さず、腰の剣を指さした。

「これは、護身用で」

「あんた、嘘をつくのが下手そうだね。ばかみたいにまっすぐな目をしてる」

 女は苦笑して、戸惑っているアリアテの手を引いた。

「泊まる所を探してるなら、最高の宿を知ってるよ。あたしはマウア、お節介なお姉さんだよ」

 マウアは裏道をすいすいと歩いた。

「ようマウア、今夜一杯どう?」「そんな貧乏そうなガキより俺たちとさあ」

「悪いね、アンタらよりうんと上客なんだよ」

「けっ 次は指名してやんねえぞ、おい、マウアちゃん!」

 柄の悪い男たちをあしらって、マウアはそのまま宿屋の立ち並ぶ裏手側を進む。アリアテは手を引かれながら、彼女の派手な色遣いをした服に似つかわしくない、手首に巻いた灰色の布きれを気にしていた。

 マウアはしばらくして歩をゆるめ、慣れた手つきで宿の裏木戸をおし開けた。そこは厨房で、初老の男が忙しなく料理を作ってはカウンターに運んでいた。

「やあ、マウア。かわいいお客さんだね」

 男は人の好い笑みを浮かべ、アリアテに会釈した。

「どうも、フリントさん。この分じゃロードも忙しそうだね。ちょっと食事でもして待とうか」

 マウアは厨房から食堂に出て、手近なテーブルにアリアテを座らせた。

「肉料理、淡水魚の料理、麦ごはんもあるよ。あたしはお腹を空かせた子どもなんて不憫で放っとけないからね、好きなものを遠慮なく食べな」

 言ってメニューを広げながら、マウアは不意に振り返り、後ろの席の男を掴まえた。

「ねえサッジ、あんたのおごりよね?」

 呼びかけられた男はだらしのない笑顔で激しく頷いた。マウアは満足そうな顔をしてアリアテに視線を戻す。

「それじゃあ、遠慮なく」

 アリアテは大人の三倍近い食事を平らげ、膨らんだ腹をさすった。満足そうなアリアテの様子を見て、マウアは表情をほころばせた。

「子どもはこうでなくちゃね」

 決して広くはない食堂は人でごった返していたが、いつの間にかアリアテとマウアだけになっていた。厨房からは食器を洗う音が続いている。すっかり店じまいの様子だが、近くのテーブルには新たにジョッキや酒瓶が置かれ、手つかずのままになっていた。

 そのうち、一人、また一人と客ではない雰囲気をまとった者たちが食堂に集まってきた。彼らは用意されたジョッキのある席につき、黙って人数が揃うのを待っていた。妙に殺気立った連中の輪にマウアも加わる。

「その子どもは」

「お金もなくてさ迷い歩いてたの、かわいそうで見てられなくて拾ったのさ」

 言いながら、マウアはアリアテの携えた剣を指した。

「魔剣よ。素性は知れないけど間違いなく政府の人間じゃあない」

 ――マウアは、最初からこの剣の正体を見抜いていた。

 アリアテは思わず身構えた。そのわずかな動揺に反応した数人が立ち上がり、それぞれの武器に手をかけた。

「わかっているのか、この場で賛同しなければ即刻殺すことになるんだぞ」

 最も早くアリアテの動きに反応した、ヴォルフェ族の若い女が厳しく言った。マウアは椅子を引き、アリアテを庇うように立った。

「ライヒ。この子はきっとあたしたちを助けてくれるって、そう思ったのよ。あたしの勘が狂ったことが、今までに一度でもあったかい」

「勘か。それをどうやって信用しろと言うんだ。いいか、我々は一蓮托生だ。中途半端な覚悟では困る。その子どもは事情もわかっていないように見えるが」

 マウアとライヒは一歩も譲らず睨みあい、緊迫した空気が場を支配したが、それをうち壊す柏手が響いた。

「よ、揃ってるな」

「あ」

 アリアテは小さく声を上げた。場に不釣り合いな明るい声の主は、町の門でアリアテに声をかけた、ロバを牽く青年だった。

「あれ? どっかで……見覚えのある坊主だな、うちに泊まっていくのか?」

 青年は親しげにアリアテに近寄り、大きな手で肩を叩いた。

「ひゃあ細え。飯ちゃんと食ってんのかよ」

「大人の三倍も食べたわよ」

 すかさずマウアが答えると、青年は大げさなほどに笑った。

「そうかそうか、育ち盛りはいっぱい食って大きくなれよ」

「ロード! いい加減にしろ」

 怒鳴られて、青年は目を丸くしてライヒを見つめた。もはや物騒な連中は鋭気をそがれ、あいまいな笑みを浮かべている。

「お前はいつもそうだ、厳粛な【灰の団】の空気をぶち壊しにして」

「悪かったよ。ライヒの言い分ももっともだ」

 拳を震わせるライヒをなだめ、ロードはアリアテを振り返った。

「で、坊主の返事は?」

 ロードが軽く挙げた右の手首には、灰色の布が巻かれていた。マウアと同じ布だ。集った者たちを見渡すと、全員が手首に灰色の布を巻きつけていた。

「灰の団?」

 復唱するアリアテに、マウアが頭を下げた。

「いきなり巻きこんでごめんなさいね。でも、今のあたしたちには一人でも多くの仲間が必要なんだ。あたしたちは女王シーナの圧政を推し進める影の暗君、大臣メンテス・ガヴォの魔手からラグナレクを救おうとしているんだ」

 女王、圧政、大臣。それらはアリアテにとって耳慣れない、遠い世界の言葉に聞こえた。

「この町の闇は、あんたが外壁の向こうで見た景色だけじゃないんだ」

 マウアはスカートの切れ込みをぐっと拡げ、焼けただれた太ももをアリアテに見せた。

「ささいな罪にも重罰がくだされる。平等の名のもとに子どもも厳しく裁かれる。あんたよりもっと小さい子がね、この町でも、ひとつ向こうの町でも死刑になるんだよ」

 マウアはうつむいて座ったきり何も話さなくなった。ロードがあばら長屋の方角を眺めて継いだ。

「お前、壁の外の連中を見たんだな。あいつらだって、何も俺たちが追い出したり、自分から出て行ったわけじゃない。商売のできない商人や、疫に罹った者は戸籍を凍結させられる。別の仕事をしたくてもできねえし、どこかに家を持って住むこともできねえ」

「……私は、海沿いのちいさな漁村から来たから、そういう政のことはよくわからない。でも少なくとも、病気の者を放り出してしまうような決まりは、正しくないことだと思う」

 アリアテが真っ直ぐな目をして答えると、ロードはにっと笑い、場の空気がゆるんだのがわかった。

「腕は立つと見たぜ。危険なことに巻きこんで悪いが、まあ、無理はしてくれるな。大ケガしたり死んだりしたら元も子もないからな」

 【灰の団】は、来る作戦の日の最終確認のために集っていた。彼らは役所に討ち入り、メンテスの息のかかった現統括官を排除し、新しい町長を迎えることを目的としていた。

 役所の図面をテーブルに広げ、ライヒは詳細をアリアテに説明した。

「役所勤めの兵士たちは、ほとんどが前町長の部下で信頼できる。我々が相手にするのは現統括官の部下、すなわち向かってくる者だけだ。その数も全体で10に満たず、ほぼ文官だ」

「その、統括官というのは?」

 これには、苦々しい顔で酒を飲み干した男が答えた。

「町長の椅子におさまり、偏見に満ちた政をとりおこなっている独裁者……ヤツの名はナシュク、血も涙もないセッタ族の男だ」

「本当に情のない男でな……罪人とあれば、たとえ子どもでも刑罰は軽くしない、最悪死刑ってとんでもねえ条規(きまり)を可決した」

 隣の男が付け足して、ジョッキを傾けた。

「我々の嘆願は、ナシュクはもちろん、もっと上の役人たちにも認められなかった。メンテスの息のかかった連中があちこちで圧政を強いている。もう時間はない、我々の活動が悟られる前に討って出て、力尽くでも町を取り戻す」

 アリアテはここに、この国の行く末の縮図を見た気がした。ザティアレオス王国といえば、ラティオセルムとサルベジアという二大大陸を擁する大国だ。ちっぽけな漁村から初めて宿場町に出てきた自分が、なぜ大国の未来などという途方もないことを案じているのか、まだ彼女にはわからない。

 今、目の前に困っている人々がいて、立ち上がろうとしている人々がいる。自分が彼らの力になり得るというのなら、手を貸すのはやぶさかではない。

「我々【灰の団】が為そうとしていることは、決して蛮勇ではない。ナシュクは拘束するが、今回の作戦では、誰の命も危ぶめないというのが我々の意思だ」

 ライヒが差し出した灰色の布を受け取り、アリアテは頷いた。



 宿の階段を上がりながら、クオーレが大仰なため息をついた。

「面倒なことになってしまった。本当に彼らを手伝うのかい?」

「成り行きだからね。僕は、縁はなんでも大事にするんだ」

 鍵にくくりつけられた木札と部屋の番号を見比べていたアリアテは、自分の部屋の前にロードが立っていることに気づいた。

「よ、坊主。宿帳に書いてあったのはお前の本名か?」

「あー、うん」

 歯切れの悪い返事をしたアリアテを、ロードはそれ以上問い詰めなかった。金色の芝生頭を掻き、彼は夕陽色の目を細めた。

「いや、風呂の場所を教えてなかったからな。うちは大浴場だけだが、温泉を引いてるんだ。長旅だったんだろ、ゆっくり浸かってくるといい。カウンターの手前を曲がって、突き当りを左だ。時間制限はなし、夜中でも早朝でも好きに使いな。それと、朝飯のサービスは7時から8時までだ。寝坊すんなよ」

 ロードは独特のポーズをとった手を120度くらいの傾きでピタリと止め、にこにこしながら階下に戻っていった。

 部屋を開けると、手狭だが、しつらえのいい家具がすっきりと並んでいた。小さな窓のカーテンをめくると、通りのようすがよく見えた。

「いい所だね。それに、いい人たちだ」


 ロードはカウンターに座って新聞を眺めていた。そこへ、撤収作業を終えたライヒがやって来た。

「あの子どもが来たという漁村……時々ラグナレクまで、海の幸や貝細工を売りにくる村だ。荷を負わない騎馬が駆け通して丸一日、人間の足なら三、四日はかかる。それを、馬も荷車もなく身一つ、しかも野営を挟んで。夜の砂漠はかなり冷え込むし、雨や霜が降ればもっとつらい。魔物や野盗も出ただろう……すべて越えてきたというのか、あの子どもが」

 難しい顔をして腕を組んだライヒに、ロードは眉を寄せて苦笑した。

「悪いヤツじゃないってのは俺が保証する」

「そうだな、嫌な感じはしない。不思議な子どもだ」


 アリアテは夜中ごろに目を覚まし、用意されたタオルを持って部屋を出た。ランプの火がすべて消えた廊下を過ぎ、猫のように足音もなく階段をおりると、無人のカウンターの手前を曲がった。

「突き当たり、左」

 そちらには男湯と書かれたのれんが下がっていた。どうやら、ロードはアリアテをムジナという少年だと信じているらしい。男湯には明かりがついていて、誰かがお湯を使っている気配があった。

 アリアテは突き当たりを右に曲がり、竹が敷きつめてある真っ暗な脱衣所で衣服を脱いだ。

「その、私のことは気にならない?」

「今のところ、僕のなかでは喋る石だからね。盗まれても困るし」

 クオーレは、今では夜の空と同じ濃紺一色になり、小さな光が内側で瞬いていた。

 浴場も明かりは消えていたが、アリアテはランプに火をつけずにそのまま入った。洗い場の手桶にそっとクオーレを入れ、別の手桶で頭や体を流す。こびりついた砂や汚れが流れていくのは心地よかった。

 手桶を湯船に浮かべ、アリアテは久しぶりの温泉に浸かった。

「村では、温かい川の水をひいていたんだ。冬になっても川は温かくて、長老がたしか、山の上の温泉が流れこんでいるだって言ってた」

 手足をのばしてお湯を掻くと、疲労が流れ出ていくようだった。

「クオーレも浸かってみる?」

「いや、ここでいい……ゆっくりしなさい、今夜はぐっすり眠れるだろう」

「うん。そういえばクオーレは、僕が女だとわかってたんだね?」

「私は魂の姿まで見えるからね。でもそのくらいだよ。君の心まで読むことはできない。私にとっての君は、ムジナという名前の少年らしい少女だ」

「ちょっと安心した。いま必要な嘘だから、この先ずっと貫くつもりはないんだ。いつかクオーレにも本当のことを話すよ」

「ああ、気長に待っているよ」

 アリアテは手足の凝りをほぐし、手桶を持って湯船からあがった。体を拭き、汗をすった服に着替えようとしたが、かごの中身が違っていることに暗闇でも気づいた。訝しんで、アリアテは脱衣所の明かりをともした。

 汚れた服は跡形もなく、そこには清潔なバスローブが入っていた。

「きっと宿の者が洗濯物を集めに来たんだ。剣は部屋に置いてきて正解だったね、あれに触ってしまうと大やけどをするようだから」

「……気配がなかった。ここに人が近づいたのがわからなかった」

 アリアテは眉間にしわを寄せたが、素直にバスローブを羽織って脱衣所を出た。休憩できるようにと置かれたベンチには先客が座っていて、アリアテを手招きした。

「お嬢さん、ひと休みして、ちゃんと水分をとっていってね」

 流れるような金髪を結わえた、落ちついた声の、一見すると女性だった。腑に落ちないのは、彼女の体がまだ火照っていることだ。アリアテがここに来たとき、他にいたのは、男湯を使っている人物だけだった。

「私はメリウェザー、ロードの妹よ。ちょっとお話しない?」

 彼女の浮かべる笑顔には、人の心を溶かすような優しさがあふれていた。アリアテはおとなしく隣に座り、冷ましたお茶を受け取った。

「勝手に服を借りちゃってごめんなさいね。でも、明日の朝までに洗濯しないと間に合わないの」

「いや、むしろありがとう」

 メリウェザーの雰囲気は、どことなくアリアテの姉に似ていた。

 ――あの日。

 夕日色の髪が青ざめた肌に映え、細い指先には痛々しい痣が目立った。

『私のかわいいきょうだい。私の魂が去っても、どうか悲しまないで。あなたは何にも囚われず、ただ自由に、思うように生きて……誇りを忘れないで……』

 それが姉の最期の言葉だった。わずか十八年の生涯――

「男の子のふりをして、仮の名を名乗って……なんだか私たち、似てない? ふふ。私の本当の名前はガイっていうの。これは、家族しか知らないのよ」

「……私は、何も言えない。答えられない」

「いいのいいの、それを聞きたかったんじゃないわ。何だかあなた、切羽詰まって危うい感じがしてたから、気になって声をかけただけ。お茶、もっと飲む?」

 アリアテはおかわりをもらい、黙って飲んだ。

「兄さんが関わっている危ないことに、あなたも加わるって聞いたわ。見たところ腕に覚えはあるみたいだけど、無茶はしないでね」

 作戦は明日の夕刻、役所が閉まると同時に決行される予定だった。

「こんな急場で、ひょっこり現れた私を雇うなんて、【灰の団】のほうがよっぽど切羽詰まってるんじゃないか」

 アリアテはお茶を飲み干し、コップを盆に伏せた。メリウェザーは手を組み、そうね、と眉をひそめた。

「情報が漏れて一網打尽になることを恐れて、少数精鋭だけを募ったのはいいけれど……ナシュクどころか、部下の実力すらわからないのよ。あの人たちは決して表には出てこないから、実際はどれだけ強いのか誰も知らないの」

 危険な賭けに、本当は誰も送り出したくはないとため息をつく。そんなメリウェザーの憂えた表情は一瞬で切り替わり、ひまわりのような笑顔がアリアテに向けられた。

「だめそうだったらいつでも帰ってきて。もしケガしちゃったら、少しなら私が治してあげる」

「回復術が使えるのか?」

「療術ていどの軽いやつよ。これでも徴兵は受けたことあるから」

「うん、頼もしい」

 不思議と打ち解けて、アリアテはメリウェザーと別れ、くつろいだ心地で部屋に戻った。明日がはや討ち入りだというのに、不安や恐れは浮かばなかった。メリウェザーには何か不思議な力があるらしい。

 旅に出てから不思議なことが続く、と思いかけて、アリアテはふと遠い、影のような日々のことを思った。

(それよりずっと前から、不思議なことが起こっている気がする)

 続きを考えるには、まぶたが重すぎた。

始まりは、11歳の頭のなかから。

カレスターテ冒険譚、十数年の時を経て、再誕!

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