何をしても褒められる女の子と何をしても叱られる男の子の話
何をしても褒めてくれる村に住む女の子は、大人たちに叱ってほしくて悪いことをたくさんしました。
悪戯をしました。
「驚いたよ、こんなことを考えられるなんてすごいね」
お店からぬいぐるみを盗みました。
「店員に気づかれないように持ち出したのかい?すごいじゃないか」
「自分から打ち明けられてえらいね」
「欲しかったのをいままで我慢してたんだね。えらいぞ」
村の大事な像を壊しました。
「もう古かったからね…君が壊してくれたから、新しく作り直す決心がついた。ありがとう」
人を✕✕しました。
「よく怪我しなかったね、すごいぞ」
「上手に出来てる。素晴らしい」
「何度も殴ったのかな?痛かったろうに、よく頑張った」
誰も彼女を叱りませんでした。
何をしても叱られる村に住む男の子は、ある時出会った女の子の悩みを聞きました。
"ほめられるばかりで、しかってもらえないの"
彼は思いました。
ーー贅沢だ。
彼は妬み、その子を✕✕した。
それを見ていた大人の口からでてきたのは当然、口汚い言葉の数々。
罵声と怒声。
もう慣れた。
村の大人は動かなくなった女の子を見て言った。
「綺麗な最期を迎えられたね、さすがだ」
「命を使って、他人の鬱憤を晴らさせてやるなんて。まるで聖母だ。すごいぞ。本当にすごい」
なあ教えてくれよ。
そいつと俺の違いはなんだ?
それを聞いた村の大人はこう言った。
"そんなこともわからないなんてやっぱりおまえは無能だな"