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異世界散文録  作者: lithium
3/5

今日のサムル

 ふと時計を見る。確か今日は礼拝の日だったはずだ。礼拝の時間まであと30分しかない。ベッドから跳ね起き、シャワーを浴びに向う。熱い水が目を覚ましていく。いつもは湯船に入るのだが、今日は寝坊をしてしまったためゆっくり浸かっている時間は無い。シャワーを浴びた後、髪をふきながら朝食の用意をする。あまりに時間が無いから今日はパンは焼かないでいいや。下着を着ながらパンを口いっぱいに頬張る。飲み物を用意するのを忘れてしまい、口の中が砂漠である。

 パンを牛乳で食道に流し込み、私は衣類部屋に向った。片づけるのが億劫で、衣類が散乱している。雑多の中に入り、聖職者であることを表す制服を探し出す。私が礼拝堂に出勤するのは月に一回の定例礼拝の日だけなため、毎回制服を探し出すところから始まるのである。然し、今日は時間が全然ないため、見つけたところでシワシワの制服で礼拝に参加することになってしまう。聖職者としてはあるまじき行為であるのは承知なのだが、この性を持って生まれてしまった訳で、何も悪くはない。神様だって許してくれる。

 「やっとみつけた…」

なぜか今回は律義にハンガーにかけられ、カーテンの裏に下げてあった。いつもなら絶対にありえない位置にあるせいで、時間がかかってしまった。しかもアイロンまで掛けてある。こんなことしたっけ。全く以て記憶にない。

 運がいいことに私は礼拝堂から徒歩一分圏内に住んでいるため、遅刻する可能性は低い。

 皴がきれいに伸ばされた制服を身に着け、礼拝に用いる道具を仕舞った鞄を持ち、家を出る。鍵を閉めたことを確認し、礼拝堂へ歩を進める。礼拝が始まるまであと10分位だろうか。結局ちょうどいい時間である。次からはちゃんとアイロンをかけて、ハンガーにかけておくことにしよう。寝坊しても間に合うはずだ。


 「寝坊したのか?」

礼拝堂の扉を開け、聖職者控室に入ると、タマン堂長が声をかけてきた。彼はとても勤勉で、この自治体のお偉いさんでもある。ウリル教の中でも、なかなかに権威のあるお方だ。

「はい…すみません」

「なに、謝る必要はない。『ウリル記録』の第39項には、"伝令の神が寝坊をして、東方の聖地の礼拝が遅れた。ウリルは怒らず、務めを果たしたことを褒めた"と書いてある。君はこの項から何を感じる」

この書は聖職者になるときに必ず読む、ウリルの日常を記したものである。最近では、国語の教科書にも載っているらしい。これはその中でも有名な一項である。

「確か、不測の事態が起きても、務めは果たさねばならない…でしたっけ」

「違う。ウリルはこのことから、評価するべきは過程ではなく結果であると教えたいのだ。君は寝坊をしたが、遅刻はしていない。何も気にすることはない」

「ありがとうございます」

もっと読み込まなくては。もっと感情を移入せねば。聖典の奥は深い。聖典の沼にはまる、それは神が私を受け入れたことを示す。


 私が聖典を読みあげる声が、聖歌を奏でるラクスの音色にのって聴者に響く。あるものは聞き入り、あるものは天を見上げ、あるものは聖典を呟く。教会の中は温かい音に包まれ、すべての邪悪が浄化され、すべての善良が舞い降りてくる。囁く悪魔に天使が諭し、己を省みる罪人はクサタによって許される。


お疲れ様です。

タイトルから予想していたとは思いますが、この作品はこういうものです。

暇な時に適当に選んで読むことをおススメします。

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