第13話 思い出はよみがえる
ポツリ・・・・・・・・・・
私の目から涙がこぼれた。
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私たち10人の半分ほどは、育成中学校の卒業生だ。
私も、そう。
つい、走り出してしまった。
「そうそう、ここであの子とけんかしたっけ。」
「そうそう、ここで落ち葉をたっくさん拾ったっけ。」
「そうそう、ここで・・・・・・・」
とびきりの笑顔で笑ったっけ。
「そうそう、ここでみんなと、写真、撮ったのよね、、、、、」
折れた桜の木に触れてとどめなく流れ出る 涙。
最初の一粒が嘘みたいに。
よみがえる思い出。
あの子たち元気でやってるかしら。泣いてないかしら。
私の背を越してるかしら。
なんで思い出すの?
今はこんなこと、思い出してる時じゃないでしょう?
それも全て、なんで、桜の木の前で写真を撮った時のこと。
私の目に、あの、大きな大きな桜の木が見えた。
「そうなのね。」
「あなたは、忘れてほしくないのね。自分が生きた時を。」
「そうよね。楽しいこと、たくさん、あったもんね。」
私は、桜の木を見た。そして一本、若い枝が折れていることに気づいた。
心臓のドクン、という音がやけに大きく聞こえた。
枝を拾って、桜の木が生きていたところに植えた。
「何やってるの?」
「枝を植えるとね、大きくなるの、また。」
「ふぅん。」
「きっとまた見守ってくれるんだよ。だって」
「命のカケラを残してくれたんだもの。」
いつの間にか集まっていたみんな。
そのみんなが、桜の木が、優しく微笑んだような気がした。