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おばあちゃんの異世界漫遊記  作者: まめのこ
【第6章】精霊都市タオフェ
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15.5 手がかりは・・・・

領主の屋敷は騒然としていた。


突然現れたアサシンに3名と忽然と消えたアガット。


押しのけられたディオスは訳も分からず、アガットの治療をしていたハンカチを握りしめ、血の跡が真新しい絨毯を凝視している。微動だにしない王を心配し親兵が声をかけるがディオスは返事すらない。

ティルケとダリルは状況をうまく飲み込めておらず、しきりに周囲の匂いを嗅ぎ、悲しそうに鼻を鳴らしてアガットを呼んでいる。

そんな中いち早く対応したのはカシュンだった。

3人のアサシンが只者ではないと手合わせした瞬間にわかっていたため、逃亡できないよう拘束すると同時に魔法を封印する。そして意識のある者を尋問し始める。

「どこに転送させた!」

「・・・・・・・」


騒ぎを聞きつけ、ビルケッタとルルゥがトムス将軍と共に現れる。床に着いた血と転がる薬瓶、動かないディオスと何者かを問いただすカシュンに悲しそうに鼻を鳴らすティルケとダリルの状況にただ事ではないと悟ると直ぐに話を聞く。


「実は・・・・・・」


口を破ろうとしないアサシンに業を煮やし、締め上げ気絶させたカシュンが状況を説明する。

話が進むにつれてルルゥとビケの顔が険しくなっていく。話が終わっても張り詰めた空気のまま静けさだけが残り、3人は倒れているアサシンたちを凝視していた。

考えいることは同じだった。


〜〜〜〜〜


アサシンは地下牢に閉じ込められ、話を聞き出そうと尋問されていた。それでも彼らは口を破ることはなく、みんなのイラつきだけが増していく。


状況はずっと変わらず、アガットがどこに飛ばされたのかは分からずじまいだった。


そんな中、数日が経ったある日、アサシンの一人が苦しみ出した。

痙攣を起こし、吐血し始めたのだ。


監視兵が気づいた頃には遅く、息を引き取っていた。魔法医が確認しても容体が分からず、毒を飲んで自害したのでは無いことしか分からなかった。


急遽話し合いの場が設けられたが、他殺だという者もいれば、自害と信じる者がいるなど結局結論は出ないところに、更にもう一名同じ症状で息を引き取った。

最後の一人の監視が強化され、カシュンがつきっきりで見張りをするが、それも虚しく2日後に同じくなくなる。


焦る周りが死因を解明しようと3人のアサシンの様子を確認するが、全員全身が青白く変色し、血管だけが不気味に浮き彫りとなり、吐血と脱毛の症状がある以外に原因は不明だなままだった。


どの病状にも毒物反応にも当てはまらなかったためである。


ガンッ


「なんで何も分からないの!?」


焦るビケが拳を振り上げるが、虚しく痛みを感じるだけだった。


「ビルケッタ。落ち着きなさい。」

「っでも!」

「今は焦るより、落ち着いて状況をもう一度整理しよう。何か見逃しているかもしれん。」


カシュンの言ってることは最もだった。


ディオス、魔法医数名とカシュン、ビケ、そしてルルゥが集まり、情報交換と状況整理を行っていく。


「アガットが部屋を離れてディオス殿の部屋まで行こうとしてまず、一人目の男に拘束されるが、すぐに返り討ちにする。」

「こいつはなかなか有名な盗人ですが、後の3人よりも弱く、魔法も使えません。」

「だが、その後で現れたアサシンはかなりのやり手だった。」

「そいつらが離れの警備兵たちを倒したことに間違いございません。最初の男では無理でございましょう。」

「その男に刺さったナイフを見た限り、3人の上級アサシンによるものでしょう。」

「仲間に手を掛ける必要性があったということ?彼らの関係性がよく分からないんだけど・・・・」

「実際に仲間だったかどうかも怪しい者ですが・・・・」


可能性はなくはない。ただその可能性に焦点を当ててしまえば、変死した3人のアサシンが何者なのか、誰の指示で動いていたのかという手がかりが一切なくなってしまうのだ。


しかし、最初の盗人が仲間であれば、話は別だ。


男はこの地域いったいでも有名な例の盗賊団の元一員だった。自分の実力を知った上で集団で盗みを働くよりも単独で仕事した方が儲かると判断し、盗賊団を抜けたのだ。しかし盗賊団を抜けた後でもうまい話があると分かれば情報を共有したり、一緒に仕事をすることもあった。


そのため彼らが仲間であるならば少なくとも盗賊団との関係性も浮上してくる。


「失礼します。たった今得た情報になるのですが・・・・・」


トムス将軍が慌ただしく会議室に入って直ぐに話を始めた。


牢屋の警備を担当している兵から話が上がり、牢屋に急いで向かい領主とその側近たちを尋問すれば命惜しさに直ぐに話したのだ。


領主とその側近たちが今の現状を打開するために考えたのが、ディオスの失脚だった。


今までの全てのことをディオスのせいにすれば、市民はまた自分の話を信じるだろうと。そこで考えたのが、盗賊団を抜け、自分の手下として働いている男だった。奴にディオスが雇った植物学者を誘拐させ、こちらの話の証人になってくれるよう“お願い”をする。今までの奴らだってあっさりと自分の言うことを聞いてくれたため、きっとこの作戦がうまくいくと確信していたのだ。


それがまさかこういう結果になるとは思っていなかったらしい、気の迷いだった。考えたのは側近だ。領主自身だ。とお互いに罪のなすりつけあいが始まった。


トムスの話を聞いてディオス、カシュン、ビケは一気に力が抜け椅子に重く腰掛ける。



絶望に近い思いが全身の力を奪い、動けなくさせる。



領主の話が本当ならば、



これでアガットとの繋がりは絶たれたことになる。


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