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おばあちゃんの異世界漫遊記  作者: まめのこ
【第5章】謎の古代遺跡
42/58

2 遺跡探索

次の日、朝早くに起床してルルゥとビケを起こす。部屋を出るとカシュンがティルケとダリルを抱っこして廊下を歩いていた。ティルケはまだ寝足りないのか目をゴシゴシ擦り、ダリルはカシュンの肩に頭を乗せて寝ている。


「おはようございます。ダリル起きなさい。」

「ん〜〜〜〜。」

「「カシュンさんおはよう!」」

「おはようございます。よく寝れましたか?」

「えぇ、ティルケ達はどうでした?寝る前にぐずったりしてません?」

「問題なかったですよ。」


談笑しながら食事を終わらせ、遺跡調査に向かう。謎の遺跡は山の近くの樹海といっても過言ではない森の中にひっそりと存在していた。呪いの言い伝えのせいか、アガット達以外には人がおらず、静寂の中に鳥のさえずりが響いている。


1時間ほど歩いただろうか、アガット達の目の前に遺跡の残骸と巨木の根が見えるほど澄んだ泉が現れた。太陽の光に当たり、泉の底からキラキラした光が覗く。泉の間にかかっている壊れた橋を渡りながら近づくとそれが宝石だと分かった。レサントから預かった宝石を泉にもどしてアガット達は戻ろうとするが、遺跡の方から音がした。


ガサッ・・・ガチ・・・ゴン


アガット達は顔を見合わせ物音の方へ近づいて行く。木影から覗くとそこには男達が10人ほどだろうか、遺跡から出てくるところだった。全員武器を携帯して、満身創痍で逃げるように遺跡を離れていく。


男達がいなくなるのを確認してアガット達も遺跡に近づいてみる。


「どう思います?」

「魔力的なものを感じます。ルルゥ、ティルケ、ダリルはどう?」

「あの宝石から感じた嫌な匂いがする・・・」

「くさい・・・」

「なんかね、カビてるみたいな匂いがするの。」

「アガット中入ってみようよ。さっきの男達が何してたのか気になる。」


ビケの一言で各自武器を構えながら中に入っていく。半壊している巨大遺跡にはツタと木の根が絡みつき絶妙なバランスを保っていた。奥に進むにつれて薄暗く、空気に土臭さが広がっている。


キィイィ。キュイイィィ・・・バサバサアササ


コウモリが生息していたのだろう、アガット達目掛けて飛んで来た。身を伏せてコウモリを躱し、更に奥に進んでいくとそこには古い螺旋階段があった。地下に続いているのか・・・・


下層に到着すると薄暗い中に男達が逃げる際に投げたのだろう、松明がいくつか転がっていた。周囲を見渡すが何かいる気配がないため、更に奥に進んでいくと、急に目の前に緑の光が点滅し始める。光は大きくなり四散すると土と岩で出来た魔物が地響きと共に現れた。


「ゴーレムですな。」

「さっきの緑の光はゴーレムを呼び起こすための魔法でしょうね・・・」


カシュンと話している間にも4体のゴーレムはアガット達目掛けて襲ってくる。カシュンとビケが攻撃を受け流し、剣でゴーレムの関節部分、岩の間を抉っていく。手足が千切れるが、緑の光が漂い、また元に戻っていく。ティルケとダリルはカントレットに魔力を込めて増長させると後ろにいた2体のゴーレムを殴りつける。爆音と共にゴーレムは壁にぶつかるが同時に天井までヒビが入る。このままでは遺跡が崩壊する・・・


「ティルケ、ダリル!殴るんじゃなくて、空中に浮かせて!ビケは正面2体の注意を引いて!その間にカシュンさん土魔法で体の動きを止めてください!ルルゥはツタを出して倒壊しそうな遺跡を補強して!」


各自に指示をしながらアガットは暴れまわるゴーレムの体を確認していく。首の付け根に緑色の魔法石が埋め込まれているのを確認してカシュン達に動きを止められてその体に飛び乗り、ナイフで魔法石を掘り出した。途端にゴーレムはバラけ、地面にこぼれ落ちていく。


ルルゥが成長させたツタは巨大化して天井と床の日々を補強していく。遺跡に入る前に何かゴゾゴゾしていたのは巨木に絡みついたツタの種を取っていたからだった。


ゴーレムが岩に戻ったことで更に地下に続く螺旋階段が現れた。アガットはゴーレムの魔法石を懐にしまうと、階段を降りていく。


地下2階は水たまりと植物が広がっていた。空気がじっとりしており、湿気がひどい。注意深く進む泥がもぞもぞし始めた。球体になったかと思うと触手を広げて襲ってくる。アガットは矢を連射して氷の壁を出現させて防ぐが、触手には何か分泌しているのか、壁がジュワリと溶けていく。球体の泥はまた触手を作り出すと、今度は翼のように羽ばたき始め宙を漂っている。ウジュルウジュルとタコのように触手を動かしてアガット達の様子を伺っている。


「うえ〜〜気持ち悪い!」

「ベトベトしてる!!!ティルケ触るのヤダ!」

「僕もやだ・・・・」

「スライムですな。」

「え?スライムってこんななの?もっと透明じゃないの?」

「そういうのもいますが、これは仲間でしょうな。」

「と、とりあえず皆下がってて・・・」


想像していたスライムよりだいぶ気持ち悪いその姿にビケ達は引いている。アガットも鳥肌を立たせながら、宙に浮いている汚いスライム達に向けて炎、氷、風、土など別々の魔法呪文が刻まれた矢を当てていく。

風の矢は当たるとスライムを吹き飛ばす。ビチャッと弾けるその姿に吐き気を覚える。ビケがシールドを出現させ、液体がかからないようにしてくれた。

炎の矢はスライムの体内の何かと混ざって爆発した。その悪臭にアガットは数秒前の自分を殴りたくなった。涙目になるぐらい臭いのだ。

土と氷の矢はうまくいったといえる。氷はスライムを瞬間冷凍させ、土魔法はスライムの泥を土に変えて、両方は地面に落ちると共に粉々になった。

被害を考えアガットは土魔法の刻まれた矢を連射していく。土魔法の矢を使い切ってしまったが、仕方ない。射止めたスライムは水たまりと混ざり、歩きやすくなった。ある程度スライムを撃退したところで敵わないと判断されたのか、他の宙に浮いているスライムが引いていく。それと同時に地下に続く階段が現れる。


螺旋階段を降りていくと今度は何もない空間が現れた。ルルゥが持っていた松明の炎を強くして奥を確認すると、何かの尻尾が見えた。


「だいぶでかいですね・・・」

「ドラゴンだと思われます。」

「ここに来てドラゴンかぁ。」

「ドラゴン美味しいよね。」

「うん。僕も好き。」

「私も。」


ルルゥ達は〈真龍の都〉でも戦で食べたドラゴンの肉が忘れられないのかその尻尾をじっと見ている。とりあえず暴れて脆い遺跡を壊されたら困るので食べたらダメと言うしかない。ブゥブゥ言う3人を黙らせていると、うるさかったのかドラゴンが身じろぎをしてこちらに向かってくる。松明に照らされたその顔にアガットは違和感を覚えた。何故か目隠しをされているのだ。口を開いて炎を吹く準備をしているドラゴンにビケが動く。吐き出された青い炎を双剣でなぎ払いその口を閉じさせるために脳天に回し蹴りを決めた。丁度目隠しの部分にあたり、激痛にドラゴンが悶え、目が見えないため壁に激突しながら長く強靭な尻尾を振り回す。壁と地面にヒビが入り始め、ルルゥが魔法でツタを成長させるよりも早くアガットのいる地面が割れ、崩れた。落ちていくアガットに反応したダリルがその手を引っ張ろうとするが、もろくなった地面が割れ、一緒に落ちて行く。


「「「「アガット!ダリル!!!」」」


心配する4人の声を聞きながらアガットは状況を確認する。ダリルはアガットを抱えて崩れた床石を飛び移りながら下層に着地した。ダリルに降ってくる床石を薙ぎ払ってもらいながらアガットは雷石で光石を起動させ周囲を確認する。遺跡の最下層なのか、この階だけ異様に天井が高く、壁に模様が刻まれた柱が等間隔で設置され、その間に何かの彫刻がポツポツと置かれている。その先を見わたそうとするとやたらと綺麗に清掃されていることに気がついた。前までの階はある程度埃臭さがあったが、この階は空気が澄んでいるのだ。


誰かがいるのか?こんなとろこに?


疑問を持ちながら周囲を確認するアガットにダリルは後ろを警戒しながらついてくる。曲がったり扉だった後がある道を進みながらアガットはここに誰か住んでいると確信する。綺麗すぎるのだ。何故か徐々に明るくなってくる遺跡を進むと、急に太陽の光が差し込む広場のような場所にでた。天井が倒壊し、瓦礫に巨木が絡みついて成長している。地面には雨のせいか、池ができていた。数時間しか遺跡に潜っていないのにまるで長い時間いるような感覚になり、澄んだ空気に深呼吸をしていると突然目の前に火花が飛び散った。


エンカレア婆くれたピアスが『何か』を弾き返したのだ。すぐにダリルを後ろに隠して、弓を構える。


「誰かそこにいるの?」


奥から出てきたのは、魔物・・・なのだろう。


アガットは前世で読んだ神話の話を思い出した。

蛇の髪を持ち、見るもの全てを石に帰る魔物、ゴルゴンの怪物。

魔物の肌は青白く、キラキラとした黒い目と青白い蛇の髪をと蛇のような下半身をもつ怪物。その顔の造形だけみれば十分美しかった。


アガットは自身のピアスが弾いたのは石化の魔法を弾いてるからだと理解し、武器を下ろすが、いつでも抜けるように警戒は続ける。


「あなた、私の目を見ても石にならないの?」


ゴルゴンの娘はアガットに呪いが効かないのだと気付くと嬉しそうに近づいてくる。


「ちょっとそこで立ち止まってもらえますか?出来ればいいと言うまで目を瞑ってもらえるとありがたいです。」

「え?」


悲しそうな顔をしたゴルゴンの娘にアガットは状況を説明する。自分には呪いは効かないが、自分の後ろにいる子供には危険だということ、もう直ぐ自分の仲間がここにやってくることを。


「こちらに向かってくる可能性が高いんです。また戻ってくるので時間をくれますか?」

「・・・・本当に戻ってくる?」

「えぇ、必ず。」


アガットが怯えることなく約束を取り付けたのが嬉しかったのだろう。微笑みながら近くの瓦礫に隠れてくれた。アガットはダリルと来た道を戻り、上の階に戻る。戻るとティルケとルルゥが穴を覗き込んでおり、その横でドラゴンが倒されていた。更にその奥ではカシュンとビケが倒れている。何事かと聞く前に閃光がはしる。目を開けるとカシュンとビケが寝ていたところに見慣れたサナギが2つ転がっていた。


「このタイミングで!?」


ルルゥとティルケの頭を撫でながら、アガットはこれからどうしようかと悩む。


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