3 魔法測定
「今日遂に魔法測定があるねぇ〜。」
「私たちの中で誰がアガットの師匠になるのか楽しみだよ。」
「・・・・私の予想では私かダーラだと思うんだけど・・・」
「え〜〜〜私は?」
「カーラのところはアガットには向いてないよ。アガットが剣を振り回してるの想像できる?」
「全然全くこれっぽっちも出来ない。どっちかっていうと私と治療魔法を研究してるとかの方が、ねぇ。」
カーラは二人にそう言われたのがショックだったのかガックリ肩を落としている。
「カーラそんなに落ち込まないで。私弓とか習ってみたいの。」
「本当に!?!?教える教える!まっかせてよ!」
「アガットやめときなさい。カーラはこう言ってるけど、訓練になると鬼のように厳しいから。あんたの手が豆だらけ血だらけで包丁もまともに握れなくされるわよ。」
「そうそう。カーラもアガットの美味しいご飯食べれなくなるのいやでしょう?」
「二人ともやめたげて。カーラ泣きそうじゃない。」
カーラは既に目に涙を浮かべてる。これ以上つつくと本当に泣き出すからアガットは二人をたしなめおかわりを聞く。
朝食を食べ終わり一息ついている時に三人は色々アガットに教えてくれる。
学校は8歳より10年通うことになる。
まず測定で三つ子の中で誰が師匠かを決める。低学年では皆同じ授業を受け、高学年になるとそれぞれの師匠の元で己を高めるのだ。
「アガット測定は1時間後に学園のホールで行うからね。」
「あんまり緊張しなくていいから。」
「うん。ありがとう。」
〜〜〜〜〜〜〜
三人を見送り家の掃除を終えてからアガットは学校に向かう。
学校校舎は小さく3つの赤煉瓦の建物が正三角形のように配置されており屋根付きの廊下で繋がっている。真ん中にコンサバトリー(大きいサンルーム)があり、中央部分は生徒のランチスペースとして、行事の際はホールとして使用する場所を囲うように室内での栽培が必要な薬草のプランターが並んでいる。
コンサバトリーの中に入ると同い年の子供が7人集まっていた。
「あ!アガット来たよ。」
「アガットおそ〜〜い。遅刻だからね。」
「俺ワクワクしすぎて今日一番にここに来たんだから!」
小さい村なためみんな見知った子たちである。
アガットの周りに集まると一斉に喋って来た。伊達に前世では孫たちの面倒を一手に引き受けていない。全員に返事するのもお手の物である。子供ってなんで一人一人喋るの待てないんだろうね。
ワイワイ会話している子供たちに混じりながらアガットはホールの中央に置いてあるものを観察する。
大きいジンバルコンパスが鎮座している。文字盤の外周には色鮮やかな宝石が埋め込まれており、内周は3色に別れている。時計のような3本の針があり、中心部分には太陽と月が描かれたコインのようなものがクルクル回るようはめ込まれている。
これがツェーラ達が言っていた羅針盤なのだろう。
ボーン、ボーンという時計の音と共にターラ達三人が現れた。高貴な魔女が突然姿を表したことでこれから魔法測定が始まることへの期待と緊張で子供達は一斉に黙った。
「これより魔法測定を始めます。名前を呼ばれたら前に出て、この羅針盤の前に手をかざしてください。」
「1番外側の宝石が君たちの属性を。3色の部分が私たちの誰が君たちの師匠となるのかを。真ん中のコインが光と闇を教えてくれる。」
「測定が終わればそれぞれの師匠の前に並んでくださいね。」
「では、アニス・バニトール」
一人の活発そうな少女が前に進み出た。羅針盤に手をかざすと針がぐるぐると回り、コインが表と裏とで回転し、ピタリと止まる。指し示された宝石は光り輝いていた。
「アニス・バニトール。水属性と地属性。師はカーラ・トランドット。そして闇の恩恵を持つ。」
こうして子供達の魔法測定が進んでいく。
「アガット・トランドット。」
アガットの名が呼ばれ前に進み出た。
羅針盤の上に手をかざすとまた針が回り始め、コインがグルグルと回転する。
コインがピタリと光で止まったのに対し、宝石は全てが点滅して光り輝き、3人の師匠から学べと示しているかのように針は回るスピードを上げる。
属性が1つだけじゃなく、師匠となるものが1人以上ということはこれまでにもあった。
が、今回のような出来事は初めてなのだろう。
ツェーラ達は真剣な表情で羅針盤を食い入るように見つめ、子供達は困惑したようにアガットと魔女達を見比べる。
アガット自身はどうしていいか分からず、手をかざしたまま呆然と立ち尽くすしかできない。