9 更に強く?
新しい武器の話になります。
うまく表現できてないかもしれません・・・
康順達にお礼の品をもらってから1ヶ月が過ぎ、アガット達の魔法石をはめ込まれた武器が完成した。
アガットの弓はボルボラドラゴンの骨を軸とし、〈白仙竹〉を使用した2メートルもの大型の弓が完成した。持ち手の部分にはオレンジがかった清んだ風石をはめ込んだ〈龍牙石〉に花模様を彫り込んである。大型になった分、2つに折り曲げて矢筒に収納することができるよう設計されている。
ビルケッタはボルボラドラゴンの骨と鱗そして〈龍牙石〉を材料とした透き通るような細身の剣が出来上がった。つばの部分に金色に輝く雷石を埋め込まれており、魔力を注げばアガットが買い与えた普通の剣とは比べ物にならないほどの威力を発揮した。鞘にはアガットと同じく花模様が彫り込まれている。
ルルゥはボルボラドラゴンの首回りの一番大きい鱗使用したうちわが完成した。〈龍牙石〉で作られた花と木の切り絵のような軸が美しい一品だ。持ち手の中央に水色に光る水石がはめ込まれており、その先に吉祥紐と植物の種を入れる用の4つの小さな筒が結わえられている。魔力を注げば切り絵部分が光り輝く幻想的な武器となった。
ティルケとダリルにはボルボラドラゴンの骨と〈龍牙石〉を材料としたカントレットとなった。手の甲に黒、茶色、白、透明が入り混じった土石がはめ込まれ、その周囲を花模様がつたう。魔力を注げば〈龍牙石〉は形状を変え、指先に尖ったクローを、手の甲の花模様はまるで棘のように変化する。カントレットは魔力を込める分だけ肥大する。現状では2人の頭と同じくらいの大きさになった。
「「軽い!!」」
「見て見て!このうちわの切り絵みたいなところ!光にかざすと透き通ってすごくきれい~」
「この剣びっくりするほど手に馴染む・・・」
「この大きさでこの軽さはすごいですね・・・あとは乗馬しながら弓を使いこなす訓練をしないと・・・」
4人とも新しい武器に気分が高まっていた。
さっそく武器を使いこなせるよう都周辺の魔物討伐に参加させてもらう。
「今回の討伐は墨熊です。〈白仙竹〉が好物で荒らされていることが多く、討伐に行きます。」
路普に今回討伐する魔獣について話しを聞くと、名は墨熊。鋭い牙と爪と俊敏な体を持ち、知能も高いため捕まえるのは至難の技だという。体はあまり大きくはないが、集団で生息し、狩をするため襲われたらひとたまりも無いのだという。
馬に跨り山道を走る事1時間。更に奥地に歩く事1時間。ついに〈白仙竹〉の生息する地域についた。ここで野宿をしながら墨熊を待つという。
ガサッガササ
夕方になり辺りが薄暗くなって来た頃、〈白仙竹〉の周囲の草むらが物音を立て始めた。魔獣が周囲を囲っているのだが、長く伸びた草むらに阻まれてその姿は確認できない。
アガット達はいつでも迎え打てるように武器を構える。
突然黒い影が飛び出して路普に飛びかかる。イノシシぐらいの大きさだろう、路普は反動で後ろに吹っ飛ぶ。飛び出して来たその魔獣の姿を見てアガットはどうしていいかわからなかった。混乱状態というのはこのことを言うのだろう。
「え?えぇ〜っえ〜っと・・・・」
「これって・・・・え?・・・・」
「アガット嬢何を躊躇してますか!?」
ビケもアガットに続き混乱していて、武器を持つ手に力が入らない。
それはそうだろう、飛び出して来たのはパンダなのだから。
そう、パンダなのである。
記憶の中のパンダとは多少違っておりイノシシ大のパンダの軍団なのだ。アガットたちの周囲を囲みぐるぐると歯茎を見せながら威嚇するが、そのちんまりとした姿にアガットとビケは士気を削がれまくりだ。
「アガット、あれってさ・・・あれだよね?」
「パンダ、だね・・・」
「パンダってこの世界にもいるんだね・・・・」
「ま、まぁ、ほらルルゥとか普通のアカギツネだったし、いる可能性はあったよね・・・」
「しかもなんか小さくない?可愛いよ??」
「あぁ〜もう〜手を出しにくい〜。あれって魔獣って言えるの?」
「いやでも、ほら、現に路普さん吹っ飛ばされてるし・・・ねぇ?」
「「「どうしたの?」」」
「お二方!この凶悪そうな魔獣に対して怯えてるのですか?!」
アガットとビケがコソコソと話しをして攻撃をしないので、ルルゥたちもどうしていいのか分からず、ただ防御している。路普に至ってはトンチンカンな事を言い出し、アガット達を守ろうと兵と一緒に盾になってくれようとしている。
「うぅ〜〜〜〜ん・・・どうしよう・・・」
「とりあえずルルゥ!ツタで全匹拘束しちゃって!!!」
ビケは剣を収め悩みまくっている。しょうがないのでアガットはルルゥにパンダの捕獲をお願いする。どんなにすばしっこくてもツタで絡まれて逃げ場がないのであれば意味がない。
捕まえたパンダ達は合計で15匹。イノシシ大なのは成獣であり、その子供は更に小さい。アガットとビケその愛らしい姿を見て悶絶している。とてつもなく可愛いのだ。短足をバタバタと動かし威嚇するが、遊んでと駄々をこねてるようにしか見えないのだ。
「こんな凶悪な魔獣が15匹とは・・・警備を強化しなければなりませんな・・・」
「「え?」」
この可愛い姿を見て路普は凶悪と表現しており、周囲の兵達も同意するように頷いている。凶悪ってなんだっけ?とアガットとビケは顔を見合わせる。
ティルケとダリルはパンダ達と何か話している。お互いの鼻を近づけキュインキュイン鳴くその姿は大変愛くるしい。アガットは膝を着き、ビケはアガットに隠れてその背中を叩く。これが萌えというやつか・・・
「ねえ、この子たちがね、タケはじぶんたちのだって。」
「なのになんでとってちゃうの?っておこってるよ?」
話しを要約すると、〈白仙竹〉はこのパンダもとい墨熊の主食なのだという。それを人間が横取りし始めたので、怒って人を襲うようになったのだ。つまり悪いのは人間の方なのだと。
「ゔ〜〜ん。」
「どうします?」
「いやいや、どちらにしろ私の一存は・・・」
「じゃあこうするのはどうです?」
ルルゥにちゃんと通訳してもらい、話しを確認したアガットはある考えが浮かぶ。
〈白仙竹〉の栽培を墨熊にしてもうのだ。頭がいい墨熊の事だ、生息している竹の場所を知っているはずだし、多くは取らないよう出来るだろう。人が踏み荒すよりよっぽど効率的だし、墨熊も人間から食料を調達できるため、〈白仙竹〉だけを食べなくてもよくなる。
「いや、ですが、魔獣にそこまでの知能があるかどうか・・・」
「この子達魔獣じゃなくて聖獣らしいですよ?しかもちゃんと路普さんの話してる事分かるみたい。」
路普が悩でるとルルゥが首を横に振る。ぱんd・・・墨熊の方を見るとさも失礼だと言わんばかりに路普の足を殴りつけている。
とりあえず路普は話を持ち借り雍清に報告するのだそうだ。
ティルケ達は墨熊と仲良くなっており、よく遊び行っているらしい。アガットもたまに一緒に行ってもふもふを堪能させてもらっている。ビケは墨熊たちにメロメロのようで、蕩けた顔で両手で抱え頬ずりをしている。
最初の目的とは違った結果になったが、アガットにとっては子パンダのような墨熊と一緒に遊べる機会をゲット出来たのだから結果オーライなのだと思いたい。




