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おばあちゃんの異世界漫遊記  作者: まめのこ
【第3章】ウノート村
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7 魔女の手先

朝食の後、修行に出かけた2人を見送り、アガットは村人の商人のスルサールと隣町に出かけた。大きな市場があるのだ。アガットの作った薬を売りに行くのと、ビケに武器を買ってあげようと考えていた。スルザールは疫病が流行った事が嘘のように恰幅がいい。たふんとした腹を揺らし笑う愉快な人だが、物を見る目は確かだ。


午前中でアガットの薬草と薬が売り切れたため、午後は市場を見て回る。異国情緒溢れる市場に目的を忘れそうになりながら、アガットは露店を見て回る。


ビケに良さそうな中型の剣とカーラがくれたナイフと同じ短剣を購入した。値段は高価だったが、それに見合った素材を使用していることは一目瞭然だったたけ、即決だった。


市場の端、村と野原の境めのようなところが騒がしく、人々がたむろしていた。その頃、スルサールと合流していたアガットにもその喧騒が聞こえてきたため、人だかりにつられて見物しにいく。

「見てみな!!こんなすごいの討伐してきたんだぜ!」

「こいつらが村に災いをもたらしてたんだ!」


人だかりが集まっている先には、4、5人の男たちが黒い動物を捉えた檻を見せびらかすように話しをしていた。


「うわっアガットさん、ハイエナですよ。」


檻の中には2匹のハイエナの子供が入っていた。その上に吊るすようにして、母親だろう大人のハイエナの亡骸が置かれてあった。男たちの話を聞くと、村の周辺の災いは魔獣によるもので、自分たちはそれを討伐して来たのだという。


「すいません。村の周囲の災いってどう言ったものだったんですか?」

「ああ?あんたらここの村民じゃないな。実はさ・・・」


村人に話しを聞いたところ、村の災いというのは植物が枯れ、地面がえぐれていくことらしい。

村周辺の道や地面が次の日にはベッコリの凹んでいるのだ。


アガットは話を聞きながら、ハイエナを観察する。確かに魔獣ではあるが男たちが言うようなことが出来るとはとても思えない。図体が小さすぎるのだ。地面をえぐることなど、巨大な魔物でなければ不可能である。


「アホらしい・・・」

「ちょ、ちょっとアガットさん!」


人混みをかき分け男達の前に進み出た。急に出て来たアガットに面食らった男達であったが、若い女性だと分かるとニヤニヤし始めた。


「お嬢さんどうしたの?」

「檻の中の子達を買い取ります。その亡骸も一緒に。」

「はぁ?何言ってるの?これは俺たちがわざわざ討伐したものだよ?しかもこいつらトゥマーンハイエナだぞ!」


トゥマーンハイエナ、別名:霧ハイエナ。闇属性で、黒い霧を出すようにして移動するため、悪魔の化身、魔女の手先として恐れられている。獲物を集団で狩るために、物音を立てないよう移動するため、霧のようなと名付けられた。


「知ってますよ。知った上で銀貨1枚で買い取ると言ってるのです。」

「あ、アガットさん!急に何を言い出すんですか?」

「あらスルサールさん、そんなに慌てないでください。倒れますよ?」

「慌てますよ!トゥマーンハイエナですよ!?魔女の手先と言われてるんですよ!?」

「だから、私が買うと言ってるじゃないですか。」

「えぇっ!?・・??っあ!」


スルサールは忘れていたが、アガットもれっきとした魔女だ。魔法が使えないだけで・・・

魔女が〈魔女の手先〉を所有して何か問題あるのだろうか?


「いやいや、俺たちの苦労を横取りしようたってそうhっ・・・・」

「銀貨1枚で交換する。あなた達は利益を受け、私は欲しいものを得られる。これ以上何を騒ぐ必要が?」

「てめぇ!俺らが優しくしてやってると思ってちょうsっ・・・・」


なおも食い下がろうとする男の喉にナイフを当てる。剣を抜こうとする隣の男の顔にさっき買った剣を向けて黙らせる。他の男達は剣を抜いてアガットを威嚇しているが、人質がある手前むやみに動けない。一発即発の状況に誰1人口を開くものはいない。



「あ、あがっとさん!そのひ、人たちは懸賞金がほしんですよ。」

「懸賞金?」

「はい!懸賞金です。魔物を退治したら出るはずになってます!ねえ?」


スルサールが周囲の人に聞けば、皆頷く。なるほど懸賞金か・・・・だから銀貨1枚で納得しなかったのか・・・アガットは呆れつい本音が出てしまう。


「この子達がその魔物とか・・・アホですか?」

「な!なんだとテメェ!!!」

「スルサールさん。もし私が討伐したら、懸賞金は私が頂いても?」

「え?えぇ、もちろんですよ!」

「では、スルサールさんは村民の皆さんと一緒にこの方達がハイエナ達を持って逃げないように見ていてください。」



そう言うと男達のラクダに跨り、村のはずれに駆け出す。後ろからスルサールが何か叫んでいるが、距離がありすぎて聞き取れないため無視する。


スルサールは激怒した男達をなだめすかし、そのまま滞在してもらう。村民は駆け出して行った少女が本当に魔物を討伐してくるか賭けている。どうせ災いをもたらしたハイエナは捕まっているのだ。皆気楽に構えていた。


ドゴーーーンッ


突然地響きが聞こえ、砂漠の砂が舞い村に降り注ぐ。何かが暴れる音と、魔物の鳴き声が村にこだまする。村民は魔獣が襲って来たのだと恐れ、逃げ惑い、散り散りなる。


しばらくして、巨大な物が落ちる音と共にあたりは静けさを取り戻した。村民は何事かとあたりを見回し、先ほどの赤毛の少女が戻ってくるのが見えた。ラクダから降りた少女は手に持っていた物を地面に放り投げる。コンディルラモグラの触手だった。村民は唖然とするしかなかった。年幅もいかないような少女が、コンディルラモグラを討伐して来たのだ。ひとりで。

アガットは男達に向き直ると、銀貨一枚を差し出し、にっこりと笑う。


「コンディルラモグラの子供でした。植物が枯れるのは、彼らが通って土に穴が空き、栄養が無くなっていたから。地面がエグれるのも一緒。」


まだ、文句でも?といった態度で聞いてくるアガットに男達は急いで首を振るしかできない。男達の1人の手に銀貨1枚を渡し、檻の上に吊るされていたハイエナを降ろそうとする。


「スルサールさん!この亡骸を下ろすの手伝ってください〜。」

「はい!もちろん、よろこんで!」

「ちょ、ちょっと、あんたあの娘一体なにもんだよ!?」

「うちの村の救世主ですよ。それにトリブルドロスを討伐したチームの一員でもあるんです。」

「トリブルドロスを!?!?」


すごいでしょうと何故か胸を張るスルサールに男達はバケモノかよ・・・と呟き、畏怖の念を込めて少女を見やる。



スルサールに手伝ってもらい、下ろしたトゥマーンハイエナの亡骸を帰り道で通る砂漠に安置して、墓石を立る。ハイエナの子供たちを放そうと檻を開けたが、怯えていて縮こまり、しばらく放置してみても出てくる気配がない。考えた末にアガットは彼らを連れウノート村に戻った。


「ルルゥ。」


村はずれの草原にハイエナの子供を放すとルルゥを呼ぶ。まるで霧のように現れたルルゥはアガットに構えてもらると思ったのか、背後から肩に顔を埋め、尻尾を巻きつけて甘えている。


「ルルゥ、ちょっと通訳になって欲しいの。」


子ハイエナ達を見やり、何が起こるのか理解した聡明な狐は不機嫌そうにアガットの発言を無視して更に巻きつく。


「今日のご飯ルルゥの好きなコンディルラモグラのお肉手に入れたから・・・」


魔物の肉が好きなルルゥに今日狩ったコンディルラモグラを振る舞うといえば、途端に上機嫌になり、了解とばかりに一声鳴いた。現金なヤツめ・・・・


「あなた達の親はもういないの。でもあなた達はまだ幼く、狩も満足にできるとは思えない。先ほど試してみたけどやっぱり砂漠が怖かったんだね。今私もお手伝いが欲しいし。ルルゥもいてすごく楽しいと思うの・・・・だからね、うちの子になる気は無い?」


そう申し出ると、ルルゥが隣できゅうぅうんと訳すように鳴いた。妖狐のようなルルゥの姿に怯えていた子ハイエナ達もアガットの言葉を聞き、お互いに顔を見合わせる。、数分考えた後、1匹のハイエナがおずおずと進み出てアガットの差し出した手に匂いを嗅いだ。かぷりと甘かみしてみるが、アガットが動かないのを見ると、すり寄って来た。


「ありがとう・・・信じてくれて・・・」


そう言いながら頭を撫でてあげれば、安心したのだろう。一斉に飛びつかれ戯れられる。ルルゥも負けじとアガットに甘えてくるため、アガットはしばらくもみくちゃにされ、草原に転げ回った。家に連れて帰り、お風呂に入れる。水を怖がるかと思ったが、そんなことはなく嬉しそうに洗われている。流石に薬草入りの石鹸で洗った時は嫌がったが、それでも我慢してくれた。いい子達だ。



その日の夜、ビケが康順と一緒に家に戻れば、居間が毛むくじゃらに占領されていて唖然する。夕食の時間に今日の出来事を話すとビケには呆れられ、康順にはお説教をされた。アガットが苦笑いしていると、1人で魔物を討伐しに行く危険性に比べれば、説教で済むだけありがたいと思えと更に怒られた。


アガットが怒られているのが心配になったのだろう子ハイエナ達はアガットを守るようにして周りに陣取り、康順を威嚇する。その様子がおかしくてアガットとビケは思わず笑い出した。康順も面食らったが、子ハイエナのゆるい顔に怒りが相殺されたのだろう。アガット達と一緒に笑い出した。



新たに2匹の手先を手に入れた魔女は今日も敵討ちのための策を練る。

主人公も意外と強いということを書きたかったんです。

ブチハイエナの子供が意外と可愛くて、情報に「魔女の手先」とか書いてあったので、じゃあ手先にしてやろうと思いました。

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