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おばあちゃんの異世界漫遊記  作者: まめのこ
【第3章】ウノート村
23/58

1 荒廃した砂漠

第二章になります。

書いたものを修正しておりますので、少し時間かかるかもです。

ヴィトエートに来てから早くも1年が過ぎた。冬になり、辺りに雪が降り白くなっていた。比較的暖かいこの地域で雪が振るのは珍しく、皆はしゃいでいる。


新年が明けて何か新しい物を身に付ける習慣があるヴィトエートでは両親が子供に健康を願い、大人は年老いた両親に無病息災を願い刺繍した物を渡す。アガットもカルナ婆もそれぞれビケとレザルに刺繍を施した上着と帽子を渡した。カルナ婆は夜遅くまで刺繍をしたせいで風邪をひき、心配したロザールと何故か大喧嘩に発展したのは記憶に新しい。


ビケが進化して以前に比べ健康状態が良くなったことでアガットとカルナ婆はツェーラから貰った〈羅針盤〉で魔力適正をロザールはビケとの運動をして身体測定を行うことにした。


適正の結果は火属性の闇の恩恵を持つものでリザードマンの等の爬虫類科に多い属性である。

魔力も申し分ないほどで、ビケはとても喜んだ。

またロザールから身体能力も高いことを伝えられ、攻撃魔法に適しているのではないかと3人で結論付けた。その日からカルナ婆による魔法の勉強が始まった。


毎日カルナ婆と魔術の勉強をし、アガットの薬草摘みについて行く。前に炎でしっぽを焼いてしまった赤毛の狐は時たま姿を現し、気が付けばビケと仲良くなっていた。


攻撃魔法特化という結果を知ったアガットにはある考えた浮かんでいた。ネーベルに戻りビケの教育をすることだった。カーラ以上の逸材はいないと思ったからだ。ヴィトエートに来て1年あまり、一度も連絡していない。手紙を出そうにも閉ざされているネーベルには届かず、魔法での連絡はアガットには出来ないためだった。


自分の故郷に戻ることを伝えるとカルナ婆はそうかい、と気にもとめていない風で、ロザールとレザル、サフサは寂しそうな顔をしていた。


ビケは渋るかと思いきや仲良くなったレザルと離れるのは悲しそうではあったが、新しい土地に行くのを楽しみにもしていた。旅の準備を済ませ、地図とにらめっこしながら通る道を選ぶ。ロザールと出会った村を通らないためだ。遠回りにはなるが少し南下してからネーベルを目指す。


出発の当日の朝、カルナ婆にピアスを渡された。植物の蔦のような金のパーツの下には黒い宝石がゆらゆらと揺れている。


「これは?」

「あんたはお人好しだからね、きっと色々面倒ごとに巻き込まれるだろう。ついている石は黒曜石だよ。魔除けとして効果を持つからお人好しのあんたを守ってくれるだろう。蔦の部分には呪文を彫ってある。」

「おばあちゃん・・・」

「アガット・トランドットへ私エンカルナ・リヒルドよりこのピアスを授けよう。あなたの旅路から悪しきものを遠ざけてくれるよう願いを込めて。」


アガットが付けて見せると、いい出来だね、と笑顔で頷く。滅多に見れない笑顔だ、アガットは目に焼き付けようと瞬きすら忘れカルナ婆を見つめる。カルナ婆はビケに向き直すとアガットと同じく黒曜石の石が嵌められているブレスレットを差し出した。


2人でありがとうと言うと同時に抱きつきギュウギュウと力を込めた。痛いよ馬鹿タレ!と怒鳴られたが気にしない。


ロザール、レザル、サフサ達にも別れを惜しみながら抱擁をする。ロザールとサフサは涙を流し、レザルはビケと離れるのが寂しく、自分と同じ小さい水晶がついたお守りのネックレスをビケに渡した。またすぐ会えるように願いを込めて、カルナ婆に習って作ったのだという。ビケはレザルに抱きつくと泣き出し、つられてレザルも泣き出した。


「絶対また会おうね!」

「うん。また会いにくるから!!」


皆に見送られながら2人はヴィトエートを後にした。


野原の近くを通ると赤毛の狐は2人の後を付いて来た。暫くしたら諦めるだろうと思っていたが、もうすぐ砂漠になろうとしても離れなかった。怒鳴っても、石を投げても離れないため2人は相談する。


「ねえ、アガット・・・・」

「このまま付いて来そうよね・・・」


砂漠に入れば危険だ。ラクダを止め、抱えると大人しく、されるがままだ。ビケがカバンの中に入れてあげると嬉しそうにキュゥンとひと鳴きした。


「名前つけてあげないとね。」

「ビケのことが大好なのね。素敵な名前にしないと。」


ラクダに揺られながら狐の名前を考える。当の本人はカバンの中で気持ち良さそうに眠っていた。


ビケに出会った村を回避するため、〈荒廃した砂漠〉を通過していくと、やはり魔物に出会う確率も多くなって行く。

一番出現率が高いワームやズノプロス(硬い甲羅に覆われた魔物)、ペディセンティ(地面のような平べったい長い体を持つ大ムカデ)に対し、驚くことに赤狐・ルルゥは勇敢でまっさきに魔物の鼻先に、目に噛み付いていく。ビケが炎で撹乱させ、アガットが弓で仕留める。討伐回数が増えていくにつれ、2人と1匹の連帯も上がっていき、指示なしでもお互いの行動が分かるようになって来た。


やはり魔物が出現する場所の近くには冒険者達の亡骸があり、道具などが飛散していることが多い。

慎重にラクダを走らせるが砂に隠れていた何かを踏みつける。


ガチャンッ  


ッチ・・バチ・・・バチバチ


転移魔法が書かれた呪文書に魔石がぶつかって火花が飛び散った。ラクダが火花に驚き、暴れだしたため、反応が遅れる。


まずい!逃げきれない!!


「ビケ!ルルゥをしっかり抱えてなさい!」


言い終わった瞬間グニャリと視界がブレ始め、体が浮き、体が四散しそうな感覚に吐きそうになる。離れ離れにならないよう、アガットはビケとルルゥを強く抱きしめ体を丸めた。




気がつくと砂漠に投げ出されていた。アガットは急いで起き上がり状況を確認する。気を失っていても、ビケを抱えていたことにホッとする。離れないようにずっと力を込めていたのだろう手は白く強張って感覚がない。気を失っているビケの状況を確認すると荷物からルルゥが顔を出してキュウッと鳴いた。強張っている手を動かし、ルルゥの頭を撫でてあげると嬉しそうに目を細め、ビケを起こそうと顔を舐め始めた。


アガットは立ち上がり、周囲を確認する。同じ砂漠だが、景色が違っていた。〈荒廃した砂漠〉とは違い、遠くに山々が見え、近くの林には竹が生息している。乾燥的なヴィトエートとは違い、雨は降るのだろう、少し湿気のある暑さが肌を焼く。


「アガット?」

「ビケ、どこも怪我してない?」

「うん。大丈夫だよ。ここどこ?」

「分からないの・・・」

「っ・・・!!!アガット危ない!」


ルルゥに起こされたビケが困惑してるアガットに寄ってくる。ぼうっと周りを見渡していると、突然背中を押され倒れこむ。すぐさま体を起こし、ビケの方を確かめる。ビケは短剣を構えながら周囲を警戒している。肩に乗っているルルゥが毛を逆立て威嚇していた。


砂漠の中に何かいる。


ペディセンティかと警戒するが地響きと共に現れたのは巨大なモグラのような魔獣だった。目がない代わりに大きな花のような形のヒダが鼻の周囲についてる。牙は小さいが口が大きく、口を開くとネバネバした毛がびっしりついている喉の奥まで見えた。消化液か・・・


初めて見る魔獣だった。


ビケに下がっているように伝え、口の中に氷魔法を撃ち込めばと弓矢を構える。

突進してくるモグラの口が再度開くのを待つ。


が、風を切る音がして、モグラの鼻を抉り、鼻先のヒダがいくつか砂地に落ち、血が飛散する。


ビギュイイイィィイイ


内臓に響く悲鳴に耳を塞ぎ、攻撃が飛んできた方向に目をやると、そこには骸骨がいた。



モグラがのたうち回り、砂漠の中に逃げ込んでいく。舞っていた砂が止むと、再度骸骨の方に目をやる。それは骸骨ではなく亜人だったことに気付く。ビケは小さく悲鳴をあげ、アガットの後ろに隠れる。ルルゥは威嚇体制のままだ。


無理もない。人間と容姿はほぼ変わらないが、片腕が無く、身長が2メートルを超えている。ガリガリな体にも関わらず骨格が太く、健康的であればさぞ強靭な肉体美を誇っていただろうことが伺えた。額には2本のツノが生えており、口の犬歯は鋭く細骨などは簡単に噛み砕けそうだ。骸骨のようになっているにも関わらず目は爛々と輝いており不気味だった。


「*****、***?」


話しかけられるが、言葉が分からなかった。


アガットは自分たちがとんでもなく遠い場所に飛ばされたのだと悟り、頭を抱えた。

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