1 新しい目覚め
暖かい日差しに照らされて意識が浮上する。
目覚めるとさあさあと風に揺られる木々の葉の緑色と遠くに見える青く晴れ渡る空とのコントラストに思わず見入ってしまう。なんと綺麗な空なんだろう。天気は初夏ぐらいだろうか、新緑が華やかに木々を飾り、動物たちの新しい生命が躍動するのを遠くに感じながら時間がゆっくり過ぎていくのを感じる。
ここはどこだろう・・・・
周りを見わたそうとして顔がうまく動かせないことに気付く。
目をできる限り動かし確認すると視界の隅には布があり、それが自分を固定していると理解するのに時間はかからなかった。手でそれを払い避けようにも一緒に包まれているのか身動きがとれず、みの虫のようにモゴモゴ動くしか出来きない。
なにが起こってるんだろうか?
「あうぅぅえぁ?」
口がうまく動かせない。舌のせいなのか顎のせいなのか呂律がまわらず、発音できないのだ。
体は布にぐるぐるに巻かれて、言葉はまったく喋れていない。
一体どうなっているのか幸恵には訳が分からなかった。
〜〜〜〜〜〜
どのくらいの時間がたっただろう。
喋る練習をしてみたが、あうあうとした音にしかならず、途中下半身が湿っていく感覚に嫌な予感がして体を起こそうとしたがうまくいくはずもなく、やっぱり手足がまごまご動くだけ。
格闘すること数時間、幸恵は諦めた。
だってどうしようもないんだもの。
澄み切った空かで鷹が円を描いて飛んでいる。
ぼーっとそれを眺めていると遠くから物音が聞こえてくる。カサカサと草木を踏みしめる音だ。
動物であれば最悪幸恵の命に危険が及ぶ可能性だってある。
どうか肉食動物ではありませんように・・・・
ぎゅっと目を瞑り、できるだけ気配を消す。自分の鼓動が早くなっていくのを感じながら幸恵は息をひそめた。
だが足音は幸恵の近くで止まる。
やっぱりダメだったかと思い切って目を開けるとそこには人がいた。
少女がいた。
いや、美少女だ。
燃える様な赤い髪をなびかせた美少女がこちらをじっと見ている。
バサバサ音がしそうなまつ毛と緑色の美しい大きな瞳が神秘的であり、
ふっくらしたピンク色のほっぺたと赤色のぷっくりとしたリップが白い肌と合わさりなんともいわれぬ色気を出している。歳は16、7ぐらいだろうか、少しあどけなさを感じる。
西洋画から出てきましたと言われても納得してしまいそうなほどその少女は美しかった。
「******?」
「あぅ?」
「****、**。****。」
「****?」
幸恵は美少女に見入っており、話しかけられているのだと気付くのに時間がかかった。
声に耳をすまし、出来るだけ言葉を理解しようとする。
「****、*****?」
「えううぅああぁう?」
だめだ。
何を言っているのか分からないし、私も言葉らしい言葉を発せない。
どうしようかと悩んでいると急に体を引かれた。
美少女に抱っこされたのだ。
胸に抱えられて幸恵はあることに気が付く。
あれ?この子すごく大きくない??
抱えられている幸恵がすごく小さく感じるほどその少女は大きかった。
「*****、***。」
「****〜〜〜 **〜〜」
話しかけられるが、彼女の豊満な胸と体温、そして歩く振動が幸恵に眠気を誘う。
起きていようとする努力虚しく、幸恵は深い眠りについた。
〜〜〜〜〜〜〜
夢をみた。
ぼんやりとした夢の中子供たちがまるで迷子になった小さい子みたいに泣いている。
部屋の隅では孫たちがお互いに身を寄せ合って笑顔なく座っていた。
そこがどこだか分からなかったが、何故か幸恵のために泣いているのだと感じた。
声は聞こえてこないが、ぼんやりとそう思ったのだ。
あぁ、泣かないで。
伝えようにも声は出ないため、一人一人をぎゅっと抱きしめてまわる。
私の自慢の子供たち。
私の可愛い孫たち。
どうか私のために泣かないで・・・・・
どうか元気になりますように・・・・
笑顔を取り戻して欲しくて幸恵は子供達に寄り添い、孫たちを撫でていく。