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おばあちゃんの異世界漫遊記  作者: まめのこ
【第2章】丘の街ヴィトエート
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1 新しい出会い

ネーベルから旅たち2週間が過ぎた。

ダーラがくれた小部屋はとても過ごしやすかった。


だが2週間も体を拭くだけというの限界だったため、いい加減風呂に入りたかった。


地図を確認して1週間ほどかかるが比較的近い丘の街ヴィトエートに行くことに決める。


ヴィトエートに向かう道中、小さい村を見つけ早速休むための宿を取る。

地図にない村だったが、食堂も宿屋もある。最近できた村なのだろう。

早速宿を取る。村はずれの宿屋の主人はむっすりしている40代の男性で鋭い目つきと眉間のシワが印象的だ。体は大きく180ぐらいあるのだろう宿屋の主人?と疑いたくなる様な体つきだった。

「宿は1泊銅貨2枚だ。食事付きなら銅貨3枚。上等な部屋なら銅貨10枚になる。

「じゃあ安い部屋の食事有りでお願いします。」

「ラクダは後で小屋に入れておく。あんた砂漠から来たんだろう?砂落としてから部屋に入ってくれ。」

「あ、はい。食事は何時になります?実はお腹空いてて。」


部屋まで案内してくれた主人に礼を言いながら、食事時間を確認する。1時間後に出来るというから、体の砂を払って部屋に入る。荷物を置き、早速風呂場に行く。服も一緒に洗おう。着替えと一緒に持っていき、樽につけておく。


久々のお風呂ですっきりし、洗い終わった服を干しておく。乾燥してるからすぐ乾きそうだ。

宿の一階にラウンジがあるため、階段を降りる。途中でラクダに干しぶどうを上げに行くのを忘れずに。

中はガランとしており、宿は自分の他に客がいないことを物語っていた。

席についてすぐに主人からボリュームたっぷりのケバブサンドとサラダ、豆を裏ごししたスープを出された。

齧り付くとジュワッと肉汁とともにスパイシーな味が口に広がる。2口目はヨーグルトソースをかけてみると辛さが和らぎ野菜の甘みが引き立つ。スープはトマトペーストが入っているのか酸味とコクがあった。


おいしい・・・ご主人いい仕事する・・・


夢中ケバブサンドにかじりつき、あっという間に皿は空になった。

食後のお茶を飲みながら主人を盗み見るとソワソワと宿の外を見ている。


「ご主人、誰かを待ってらっしゃるんですか?」

「あ、いや。そうじゃなくてな・・・・・。」


なんとも歯切れの悪い返事をされ、話題を変えられる。


「俺はここの主人じゃないよ、雇われさ、ロザールだ。」

「アガットです。雇われ?そんなに忙しいですか?」

「いや、見ての通りだよ。」


その後も他愛もない話を続け、気がつけば1時間も過ぎていた。

ロザールに食事の礼を伝えて村にでる。保存食の補充をしておきたかった。


村をぶらぶらと歩きながら市場に向かう。市場といっても小さく日常生活に困らない程度の物しかない。


ロザールによると村自体はここ3、4年ぐらいに新しくでき、元々魔物に追いやられる形で難民となった者達の集まりであり、そこに訳ありの流浪者たちがだんだんと住み着き、今の村になったのだという。

命からがら逃げてきて、元々あった建物に住み着いたものの修復する金銭と人でが足らないのだろう。村自体どこか寂れており、住民の覇気もあまりない。


とりあえず市場で必要なものを買い、ぶらぶらと宿の方へ戻ろうとした時にそれはおきた。


火事だ!!!


誰かの叫ぶ声が耳に入った。村の端の方で煙が出でいるのだ。

みんなが火の元に駆け寄って行くのに流されるままアガットも向かう。


辿り着いた先で見たのは燃える小さな納屋とそこから逃げ出したしたのだろうすぐそばでうずくまる子供の姿。

子供はあまりにも無残だった。

全身が火事で焼けており、目を凝らして見ないと分からないくらい赤黒く爛れて動くことも出来ず、ひゅうひゅうと荒い呼吸音が辛うじてその子が生きていると分かる。


その近くには松明を持った男性が顔を真っ青にして立っている。

考えるまでもなく彼が犯人だと分かった。


なんで誰も子供を助けないの?


男性を取り押さえるのでもなく、子供を救うのでもなく皆現場に近づかず周りで傍観しているのである。

アガットは居ても立ってもいられず、子供に駆け寄る。

近くで見ると更に酷い状況に思わず顔を背けたくなる。

肉が焼けた様な匂いと納屋が焼け焦げた匂いが混じり襲いくる吐き気を堪えながら子供の状態を確認する。体の損傷が激しく急がないと取り返しのつかないことになる。


自分の上着を脱いで携帯していた飲み水を掛ける。

そして子供を周囲から隠す様に覆っていく。


「そいつを助けるのか?」

振り返れば放火した男性がワナワナの震えながこちらを見ている。


「当然でしょう?!あなたこそこんな小さな子供になんてことをしたか分かってるの?」

「当たり前だ!そいつを殺そうとして納屋に火を付けだんだ。そのままそいつをほっておけ。じゃないとお前も同じ目にあわせるぞ!!!」


一瞬何を言っているのか分からなかった。

この子の殺そうとして火を付けた?この人頭がおかしいんじゃないの?


「こんな小さな子供にどんな恨みがあるの?!?!」

「そいつは俺らをこんな地に追いやった魔物との混血児なんだぞ!憎いに決まってるだろう!!!生まれる時に殺そうとしたのにそいつの母親に囲われて出来なかった。母親が死んだ後も我慢してきたがもう無理だ。その気味の悪い姿を見るのももうたくさんなんだよ!!!!!」


男性が喚くと同時に賛同し始め、周囲から非難とヤジが飛ぶ。

多分ロザールが言っていた元難民の人たちだろう。


「確かに魔物が憎いのは分かった。でもだからと言ってこんな小さな子供に憎悪を向けるのはおかしいでしょう???文句があるのなら村を襲った魔物たちにぶつけなさいよ!!!戦いにでも行きなさいよ!!!立ち向かう勇気もない癖に、弱いものに当たる今のあなた達がやってることはその魔物達と何が違うのよ???むしろあんた達の方が卑劣で卑怯で残忍だわ!!!!」


そう返すと民衆は押し黙った。痛いところを突かれて反撃できないのだろう。

今度は男性に向かって非難を始めた。


「お、おぉ、俺は悪くない!!お前らだってこうしたいって前から言ってたじゃねえか?!お前らだって前からこいつのこといじめて、蔑んでたじゃねえか?俺だけのせいにすんじゃねえ!!!!」


男性は自分だけが犯罪者になるのが怖く、焚きつけた周囲は自分がこの犯罪に加担していたと思いたくないのか、火傷の酷い子供を見ない様にしてお互いを罵り合い始めた。


付き合ってられない。

それよりも至急この子の手当てをしないと。


罵り合う民衆の間を押し抜ける様にして子供を抱えて宿まで走る。


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