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新米国王、街に住む  作者: 彩森 いろは
第1章イルガード入団編
11/26

10話 模擬試合、1回戦

 中庭に団員達の乱打ちの音が響き渡っている。


「みんな聞いてくれ。これから模擬試合を始める。トーナメント方式で、上位4人が来月の班別対抗武道大会に出るメンバーとする。心してかかってくれ」

 乱打ちをしていた団員達に聞こえる様にフェヴィルが叫ぶ。

「「「はい!」」」

 団員達は各々返事をすると準備に取り掛かる。

 

「カイン!トーナメント表を作るから、受付で紙と書く物を貰って来てくれ」

 まだ10代ぐらいだろうか。フェヴィルが、近くにいたカインと呼ばれる若い団員に声を掛ける。

「わかりました!」

 カインは受付の方に走っていく。


「メイル。お前も全力で戦ってくれ。さっきの乱打ちの様子だときっといい試合になるぞ」

 フェヴィルが、期待しているぞと言わんばかりの眼差しを送ってくる。

「はい。がんばります」

 私自身、久々に模擬試合ができることが楽しみだった。

 

「紙と書く物、貰ってきました!」

 カインが紙をフェヴィルに渡す。

 団員に礼を言い、フェヴィルは紙にトーナメント表を書き始める。

「よし。これでいいだろ。みんな集まってくれ」

 フェヴィルはサラサラとトーナメント表を書き上げ、団員を集合させる。

「トーナメントを発表する。いまからいうペアが1回戦の相手だ。もちろん私も参加するからな」

 そういうとフェヴィルは団員達に1回戦の相手を発表していく。

「1回戦の最初は俺とライリー、…………1回戦の最後はメイル!お前はカインとだ」

「はい!」「はい!」

 私と、カインはほぼ同じタイミングで返事をした。

 

「それでは、ルールを説明する。今回は試合に使う防具が人数分ないので、寸止めで決まり手を出した方の勝ちとする。では早速始めるぞ」

「「「はい!」」」

 

 「――エイッ!」「ハッ!」「セイヤッ!」

 団員達が気合の言葉と共に模造剣を振っている。

 模擬試合をしていない団員は、試合を囲むように円をなして応援している。

 

 剣の名手であるフェヴィルの試合はあっという間にフェヴィルが勝った。、

 その後も次々と勝敗が決し、ついに私の番になった。

「次は、メイル対カインだ」

 トーナメント表を見ながらフェヴィルが言うと、私もカインも円の中へと入る。

 

 カインはおそらくこのギース班の最年少だろう。10代に見える顔立ちに、まだ背もあまり高くない。

「準備はいいか?」

 フェヴィルが聞く。

「はい!」「はい!」

「それでは、はじめっ!」

 審判をしていたフェヴィルの号令と共に模擬試合が始まる。


「エイッ!」

 試合が始まったと同時にカインが模造剣を振り下ろし仕掛けてくる。

「よっと」

 パシッ!

 いきなりの攻撃に少し驚いたが、振り下ろされた模造剣を受け止め、落ち着いて対処する。

「ウリャッ!」

 カインは今度は左から素早い切りを繰り出す。

 カンッ! 

 私も、模造剣を素早く動かし弾き返す。

「クソッ!まだまだっ!」 

 カインは右から左からと何度も切りを繰り出してくる。

 私はカインの模造剣の動きを読み、身をかわしたり、弾き返す。

「セイヤッ!」

 カインは、今度は模造剣を振り上げた。

 

 カインの攻めはあまりにも単調で拙い。

 まだ若いということもあるだろうが、こんな攻めでは通用しない――。

 

「ウォリャー!」

 カインは一際大きな声で、力いっぱい模造剣を振り下ろす。

「ハッ!」

 私は振り下ろされた剣を素早く弾く――。

 カランと音を立てカインの模造剣は地面へと落ちた。

 それと同時に、一歩間合いを詰め、カインの右首に当たらぬように模造剣を寸止めする。

 

「そこまで!勝者メイル!」

 フェヴィルが私の決まり手を見て模擬試合を止めた。

「すげぇ……」「なんだ今の速さ……」「剣が見えなかったぜ……」

 周りを取り囲む団員から驚きの声が上がる。

 

「よし。これで1回戦は終了だな。2回戦の前に少し休憩にする」

 フェヴィルが休憩を告げると、円が解け各自休憩を始める。

 

 16人しか団員はいないため、実質次の2回戦が、上位4人を決める試合になる。

 つまり、2回戦に勝てば、班の代表として来月の武道大会に出ることが決まるのだ。

 勝ち残っている者はまだ気を抜けない。

 

「メイル。ちょっといいか」

 フェヴィルに呼ばれる。

「どうしました?」

「今日1日見学してもらってから聞こうと思っていたんだが、イルガードに入らないか?剣の腕も確かだし、俺達と武道大会にも出てほしいと思っているんだ。メイルさえ良ければ、今日にでも、手続きをしてしまおうと思うんだが……」

 突然の誘いに驚いたが、イルガードに入れば、この街をもっと知ることができると思っていたので、断る理由は無かった。

「ええ。私でよければ入らせてもらいます」

 私は、あまり時間を置かずに答えた。

「本当か!嬉しいよ。それじゃあ、受付に入団の申請をしに行こう」

 

 早速、フェヴィルと私は受付にイルガード入団の申請をするために移動した。

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