異世界召喚編-5
実在の人物・団体・宗教とは一切関係ありません。
完全フィクション作品です。
少し修正です。
『召喚』は意外とあっけなかった。
ゼフィロスにお礼御述べた直後に一瞬の浮遊感が来て、それが収まるとすでにそこは異世界『オルディス』だった。
そして飛ばされた場所は確かに教会だった。そう教会ではあったのだ、しかし…。
「古いな」
「古いね」
「古すぎる」
教会はもう何十年も人の入った形跡はなく、天井は朽ち外の木々が見て取れ、床は風化し、大理石の切れ目から雑草が生え、所々にこの教会のものであろう、ステンドグラスの破片が散乱している。
そして、教会の最奥にある女神像が唯一ここを教会であると証明するアイテムなのだろうと見て取れる
そして、その女神像の下にいる人物がよりここの違和感を助長している。
「ようこそ、オルディスへ。私は七つの美徳が一柱『救恤』のガブリエルと申します。以後、お見知りおきを。」
ハルト達の存在に気付いた服装はザ,執事みたいな恰好をした20代中頃のその青年は一礼し、そう自己紹介した。
「ご丁寧にどうも。俺は九条陽斗です。そして、こっちのでかいのは高城優真。でこっちの女が五十嵐雫です。」
「よろしくお願いします。」
「よろしく。…ハルト、でかいのってもう少し紹介の仕方なかったのかよ?」
「すまん、緊急事態だ」
そう、愚痴をこぼす、ユーマに悪びれもせずハルトは答えた。
「そーかよ。後で覚えていろよ。」
「すまん、失言だった」
「謝るの早いな!?」
「気のせいだ、俺はいつも素直だぞ?」
「どの口が言う、どの口が!この口か、おい!」
「ひたひ、ひゃめほ(痛い、やめろ)」
「ちょっと、二人とも止めなさい!」
「クスクス…」
ハルトとユーマが恒例の漫才をしていたら、前から笑い声が聞こえてきた。
それは、ガブリエルからだった。
「失礼、お三方は本当に仲がよろしいのですね。」
そう微笑まし気な表情をするガブリエルにやや居心地が悪くなり、ハルトとユーマはじゃれていた手を離した。
「まあ、幼馴染ですからね」
そしてそう呆れたようにシズクが答えるのだった。
「お話を遮ってしまってすみません。」
「いえいえ、私も楽しいものを見させていただきましたので、お気になさらず。」
謝るシズクにガブリエルは楽しそうに笑いながら答えた。
「しかし、時間もありませんし、ヒューマン種についてご説明をさせていただきます。」
そう言い、顔を引き締め、ガブリエルは説明を始めた。
「まずは、ここの類似する文明レベルですが、ゼフィロス様は中世ヨーロッパレベルとおっしゃいましたが、魔法や精霊、そして魔物などの恩恵により、王都や大都市レベルの場所でしたら上下水道などのインフラ設備は地球時代の近代とあまり遜色はありませんし、街程度でも地球の中世とは比べ物にいはならないレベルで発展しているでしょう。ですので、暮らすうえで快適とはいきませんが、それほど苦労もすることはないでしょう。」
「それはお風呂もあるってこと!?」
「はい、文化的にお湯につかる、という文化はありませんが、場所によってはそういう地域もありますし。どの宿や家もシャワーはありますのでご安心ください。」
「ん~やった~!これで後顧の憂いなく冒険に励めるね!」
やはり女性にとってお風呂の有無は死活問題なのだろう。
シズクはその質問の答えに満足したのか、喜びの声を上げた。
「喜んでいただけて幸いです。
そして、ハルト様、ユーマ様、シズク様。貴方様方はこの世界に召喚した時点で、身体能力や動体視力など、ステータスの面でこの世界の『冒険者』と比べまして約1.5倍の力を持っていると思ってください。これはぶっちゃけてしまいますと、わざわざ苦労して異世界召喚させたのに簡単に死なれては困るという事情を考慮した結果の処置になります。」
「なんか大人な事情だね…」
「シ、シズク!シッ!静かに!」
「と、ということは、今までの感覚で行動していたら何かトラブルに巻き込まれるかもしれないってことか?」
「そういう認識でお願いします。なまじ力がありますが、技術面ではずぶの素人ですから」
「な、なるほど、わかったぜ。」
ハルトは親指を立てながら歯をキラッと見せ微笑みカッコをつけるユーマを無視しこれからの立ち回りを考えていた。
…たしかに異世界転生主人公よろしくいきなり絡まれたり、襲われたり、必要以上に目立つことになったりするのは御免こうむりたいな
「そして、この世界にはスキルや称号などステータスの補助をしてくれる恩恵などはほぼ無いと思ってください。あるのは自分が考え努力し掴み取った経験と技術のみです。怠ければ落ちぶれ、努力すればそれはすべて自分の力になります。要するにここオルディスは完全実力主義の弱肉強食の世界だと改めてご理解ください。」
ガブリエルは少し声を落とし忠告するように言った。
「わかった。でも『ほぼ』とは限りなく少ないがあるにはあるということか?」
「はい、もちろんです。例えば、今御三方が話している言語はもう『日本語』ではありません、そして、今御三方が何か文字を書きましたなら、すべてこちらの世界の文字になります。もちろん、書くこと以外にも読むこともできますのでご安心を。
これが『異世界言語翻訳』と呼ばれるゼフィロス様のみお与えすることのできる加護となっています」
「なるほど、では、他に取ることのできるものはあるのか?」
「もう一つだけ。これはほぼすべての人種が持っています。『精霊の恩恵』と呼ばれるものです。」
「「「精霊の恩恵?」」」
三人はその心躍る言葉に食いついた。
「はい、この世界の住人はほぼ全てが1人、若しくは2人の精霊と契約をしております。その契約した精霊によって加護が与えられています。」
「その契約って私たちもできるの!?」
ガブリエルの説明にシズクが食い気味に質問した。
「はい、もちろんです。そうしなければ冒険などできませんから。」
そう答えたガブリエルは持っていた鞄から直径2㎝ほどの丸く透明な宝石のついたペンダントを三つ取り出しハルト達に渡した。
「これは精霊石と呼ばれる物です。これを手で包んでいただき、魔力を込めて頂ければ、その魔力に反応した原始精霊がそれぞれに合う属性精霊として生まれ、あなた方の前に現れます。
その精霊はあなた方の一部となりますので、あなた方が死ねば精霊も死に、その逆もあるということをお忘れなきを。」
「精霊とは運命共同体なのか?」
「ほぼその認識で大丈夫です。彼らは皆様の潜在意識の中に眠る人格の一種なのです。ですから、もう一人の自分、なんておっしゃる方もいるくらいですから。」
「な、なるほど…」
やや厨二チックな説明に苦笑いを浮かべる3人。
そんな3人にガブリエルは手を叩き意識を戻させた。
「百聞は一見に如かず、と申しますし、先ずは握ってみてください。そしてその宝石が光るのを想像していただくだけでかまいません。魔力は無理に意識しなくともすでにその身体を流れております。イメージがしっかりできていれば自然と発動いたします。」
そうガブリエルに教わった通りに俺たちは宝石を握った。
そうすると、色まではっきりと想像でき、身体から何かが抜けるような感覚の後、その宝石は淡く光を持ち始めた。
そして自分の中から抜け出たものが何かと混ざり合うのを感じ目を開けるとそこには、体長15㎝ほどの雷を帯びた黄色いワンピースを着た金髪碧眼の少女の精霊が浮かんでいた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
感想・コメント・指摘などあれば遠慮なくお願いします。




