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異世界召喚編-3

実在の人物・団体・宗教とは一切関係ありません。

完全フィクション作品です。


 

 「それは…これから貴公達に異世界…私の創った世界に行ってほしいからだ」


この言葉を聞いた彼はある種予想通りだと、納得した。

異世界の神様が地球で亡くなった人間を自分の世界に連れてきて無双する。

最近流行りの異世界転生小説の流れが同じだと。

普段のハルトなら、いや、常識ある人物なら信じはしなかっただろう。

しかし、ここまで常識外のことを見せられれば信じるしかない、自分たちは死んだと。

そしてもうあの平和でそれでいて退屈な幸せな日々には戻れないのだと。

そんなことを考えながらハルトは質問を続けた。


「なぜ、そんなことを…そこには我々と同じ様にそこに住む人がいるのでは?」


「そうじゃな、まず貴公達には色々と話さねばなるまい」

というと彼は自分の世界のことを、俺らを呼んだ経緯を話し始めた。


世界の名は『オルディス』

文明レベルは地球時代の中世ヨーロッパと類似しているらしいが精霊の助力による魔法で全く違った発展をしているらしい。

そこには様々な人種がいるらしく、主だったのが『ヒューマン種』『エルフ種』『ドワーフ種』『獣人種』『幻獣種』の5種族で総じて『人種』と呼ぶらしい。

そしてそこに『精霊族』を加えた6種族がゼフィロスの創った種族らしい。

『精霊族』以外の種族は、それぞれに特色ある進化・発展をし、頻繁に他種族と交流をしており、種族差別もなく、敵対しているとか、戦争中であるとかそういうことはないらしい。

逆に『精霊族』は他の種族と国単位での交流は無いらしい。

そして『精霊族』の国は別の空間にあるらしく人種からの干渉は空出来ないらしい

それを聞いてヒロキは一先ず安心した、飛ばされたとたんに戦争です。なんてことにはならないようだ。


しかしこの世界には『魔族』『魔物』と呼ばれる種族も存在している。

魔族はどこから来るのか全く予想が立たないらしい。

神なのにと思ってしまったが、なんでも別の次元から生れ出る知性ある怪物を総じて魔族と呼ぶようで、流石の神でも他次元に関しては干渉は出来ないらしい。

しかし、魔族は神出鬼没で数もいないことからあまり脅威にはしていなかったらしい。

だが最近、知性が低い魔物がその数を増やしているそうだ。

ヤツら圧倒的に数が多いのだ、人種のすべての人口の最低でも10倍はくだらないと言われている。

そのせいで毎年洒落にならない量の死人が出ている。

そして新たに新種の魔物が生まれ始めたこと。そして今以上に死人が出ていること。

それによりただでさえ、人不足にもかかわらず、死者の魂もそんな世界に好き好んで転生したがるわけもなく、人不足が加速しているらしい。

そうして危機感をつのらせた神ゼフィロスは異世界の住人でありそして死んだはずの魂である俺たちをこちらの世界に呼び寄せたそうだ。


「そして貴公らに頼むのは1つだけだ。この世界には魔物・魔人を発見・討伐する職業がある。彼らと共に魔物・魔人の間引きをしてほしい。」


最後にそう締めくくりこの世界の説明を終えた。



ある程度の説明を受けたハルト達は何とか先ほどのショックから立ち直り外面は普段通りの冷静な顔つきに戻っているが、ゼフィロスの話に内心ある種の興奮が渦巻いていた。


俺は魔法に精霊、そんな世界に行けるのか!?

不安がないわけではない、今までただの学生であり特にかじる程度の武芸しかしたことのない自分がいきなりそんな世界に行っても役に立てるなど自惚れてはいない。しかし彼も男の子だということだろう。




そんな中1人の生徒が声を上げた。

彼女は『鈴木千沙(チサ)』クラスでは目立つ方ではないがしっかりと自分の意志は持つ、強かな女性というイメージだった。

 「私はそんな世界に行きたくは無いの、あなたが神っていうなら元の世界に生き返らせることだってできるでしょ?」

「…すまないが、それは無理なのだ」

「なっ!?」

彼女の質問にゼフィロスは申し訳なさそうに答えた。


「いくら神といっても命を蘇らすことは難しい、そして『世界』よって個人差はあれど元来神による直接生者に対しての干渉は『世界』によって防がれておる、だから貴公達は今まで神の存在を感じたことはなかったであろう?」

「それは…」

「そして何より、わしは貴公達の世界の神ではない、できることなど貴公らの神に掛け合いその死者の魂を呼び寄せることで精一杯じゃよ、それにのう、貴公らの『世界』自身が貴公らの死を認めてしまっている、もし、今戻っても記憶を消されて輪廻の渦に呑まれもう二度と貴公らとしてその意識を目覚めされることはないだろう」

「…!?」

「貴公らには厳しい事だとは承知の上だが、改めて頼む。」


そう、ゼフィロスは言い頭を下げた。

他の生徒もその言葉を聞き様々な感情が渦巻いていた。

異世界に希望を見出すものや、元の世界への後悔をするもの。


ハルトもまた彼らのような感情を持ちながら思考を巡らせた。

今、この場所が文字通り分かれ道なのだと気付かされたからだ。


未来への可能性を捨て、過ぎ去った過去への後悔の念に苛まれながら朽ちていくか。

もしくは、自ら死地である異世界に飛び込み、その身を危険に晒して生きていくか。

(どちらにしても元の世界には帰れない…なら…!)


そう結論づけたハルトは後ろにいる不安そうな幼馴染2人へ顔を向け、ニカッと悪戯っぽく微笑むとゼフィロスの前まで歩いていき一言言葉を発した。


「俺を異世界へ連れてってくれ!!」


その時の彼の顔は冒険譚を読む前のキラキラとした少年の顔そのものだった。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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