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異世界生活編 2

前回の話を少し変更しました。

ユーマは大剣を自由に使いこなせたのが感動したのか興奮している、そしてシズクは驚いてはいたがユーマの楽しそうな姿を見て微笑んでいた。

しかしヒロキは2人のそんな姿を見ながら混乱していた。

地球にいたころのユーマは確かに筋肉質だったがこんな大剣を軽々と扱うほどの力はなかったからだ。


これが異世界に来たためのボーナスとやらのせいなのか?と思考を巡らせて、そう結論付けた。

そしてヒロキ達はそこから丁寧に大幅に強化されたであろう自分たちの身体能力を確認していった。



確認から2時間ほどたった頃だろう。

いくら元の世界の自分の身体能力から1.5倍されたとはいっても結局は自分の身体であったため慣れるのにそこまでの時間はかからなかった。

そのためある程度把握できたハルトとユーマは実践でどれほど使いこなせるか知るために素手での組手を行っていた。


そんな時だった。


「助けてくれ!!」


そう後ろから助けを呼ぶ声が聞こえ3人は振り返った。


そこには13歳ほどの青ざめた顔の少年が息を切らしながら駆け寄ってきていた。





「えっと…どうしたの?」

イマイチ状況についていけていず、頭に疑問符を浮かべるハルト達に代わりシズクがそう質問した。


「も、森を歩いてたらいきなりブラスターウルフが襲ってきたんだ、は、早く逃げなきゃ囲まれる!

ねーちゃん達珍しい恰好してっけど、も、もしかしてギルドの冒険者か何かか?」


「あ~ごめんね、私たちは…なんていうのかな。その…そう、旅人!旅人みたいなものだからその冒険者とは違うんだ。」

「なっ!?」


自分たちの素性を尋ねられ、まさか異世界人とは言えないので旅人ということにたシズクはなんとか誤魔化したが、少年は彼ら3人を冒険者だと思い助けを求めていた為、当てが外れたことでその顔に絶望の影が差した。


「冒険者じゃないのかよ!クッソ、じゃあねーちゃん達も早く逃げるぞ!ブラスターウルフは時間が経つほど仲間を呼ぶ!

早くしないと囲まれて喰われちまう!」

「えぇ!?ユー君、ハル君。は、早く逃げなきゃ!」


少年の焦りが映ったのかシズクも慌てて荷物をアイテムバックに詰め始める。


「あ~、お2人さん、焦っている所悪いが悲報だ」

「あぁ、ユーマの言う通りだ。逃げるのはちょっと遅かったみたいだ。どうやら囲まれたらしい。」


そう伝えたハルトとユーマの前には体長2mほどのオオカミらしき獣が3匹いた。

ハルト達はここで改めて今いるのが異世界であることを実感した。

目の前のブラスターウルフはパッと見は大きい犬だがその身体は筋肉が浮き出て、長く鋭い犬歯を持っていて、目は赤くギラついている。

そして頭から2つの角が伸びていた。


「オ、オオカミ?」

「ぽいが、絶対的に俺たちの知るオオカミではないな」

「あぁ、俺の知るオオカミにあんな角はなかった。」


そう言うとハルトとユーマはそれぞれの武器を取り出し構え、それぞれに魔力を流した。

「お、おい!訳わからないこと言ってないで逃げるぞ。

まだ3匹なら逃げ切れる!」


いきなり武器を構えたハルト達に驚き、少年がそう声をかけた。


「それは無理だ!」


しかし、そんな彼の提案をハルトはキッパリ否定した。


「な、なんで…」

「言っただろ、囲まれたって。

俺の精霊は性質上、生き物の電磁波を感じられるみたいでな、今周囲10mに10匹はいるぞ。」

ハルトはそう言うと目の前のブラスターウルフに視線を戻した。


正直、オスカがこんなことができるとは知らなかった。

まさか後ろの少年の悲鳴が聞こえ周囲に気を配った瞬間、一瞬視界が広がる感覚を覚え、そして視界が戻った瞬間周囲の木の位置から、書けてきた少年やその後から来る獣の数まで頭の中に入って来るとは。

きっと、ユーマもクレナかシルフィのどちらかの力でブラスターウルフがいることを感じ取ったのだろう、戦闘態勢に入るまで時間が俺とそう変わらなかったのはその為だろう。


そんなことを考えながら、シズクと少年を背中にかばいながら、横のユーマに声をかけた。


「ユーマ、行けるか?」

「お前こそ大丈夫かよ、これは本格的に命の危機だぜ?」

「それくらい俺にもわかっている、だが、こんな状況なのにワクワクしている自分がいる。」

「戦闘狂ってやつか?」

「言ってろ。とりあえず目の前は任せた。俺は後ろをどうにかする。」

「あぁ、それでいいぜ、どこまでできるか、いきなりの実践戦闘だな。だが、俺も地味にワクワクしてるぜ。」

「人のこと言えにな。…初陣で死ぬなよ?」

「お前こそな。」


そして2人してフッと笑うとハルトは反転しシズクと少年を挟んだ反対側へと素早く移動し、小石を2.3個拾い両手に魔力を集め、雷が腕全体に纏い始めた。


(魔法はイメージが大切…大丈夫だ、イメージは出来た、場所もわかっている。)


そして、両腕を前に出し、小石を弾いた。


『爆ぜろ‼』


ドゴンッ!!


そうハルトが叫ぶと小石は弾丸となり、轟音と共に前方5mの位置の地面をえぐりクレーターを2つ作った。

そして、クレーターの中心にはブラスターウルフであったであろう肉片と紫色に光る小石が転がっていた。


そして、轟音に驚いたのか数匹のブラスターウルフが逃げ出し、隠れていた数匹も姿を現した。

ハルトは右手に小太刀を構え、姿を現したブラスターウルフに向かって走り出した。


「シズク!こっちはなんとかするからその少年を守るのを優先して考えろ‼」


走りながらシズクに指示を出して、小太刀に魔力を流し、雷を纏わせ、そして目の前で先ほどの轟音に驚き、混乱していた1匹のブラスターウルフの喉元に刀を突き刺した。


「グル…グシュ…」


ブラスターウルフは口から血を吐き、悲鳴のような声を上げたがハルトは突き刺したのと同時に纏っていた雷を放ち、内側からブラスターウルフを焼き殺した。


そして、すぐに小太刀を引き抜き、側にいたもう一匹に狙いを定め刃をふるった。

しかし、流石に混乱から立ち直ったらしく、前足を振り下ろし、小太刀を弾き後ろに下がり態勢を立て直した。


(流石にそう上手くは殺らせないか…)

そう思いハルトは一旦後ろに下がり態勢を立て直した。


その間、他の4匹のブラスターウルフもハルトの前に集まった。

両者は数秒にらみ合った後、ブラスターウルフ達は数の有利で勝利を確信したのか2匹同時に飛び掛かってきた。


しかし、ハルトは後ろに避けず、あえて一歩前に出て、振り下ろされたかぎ爪を紙一重で左にかわすと、足元に着地した瞬間に足に魔力を流し横腹を蹴り飛ばし、側にいたもう1匹諸共、近くの木の根元までぶっ飛ばした。


「キャウン!」


ぶつかった方の声と確かな手ごたえを感じ、足の魔力をそのまま電流に変換し全身に巡らせると一時的に身体の速度を目視不可能な速度まで上げ、一瞬にして残りの2匹の元に駆け寄り、その速度のまま雷を纏わし切れ味を上げた刃を振りぬき、油断していた1匹を横に切り裂いた。


血が噴水のように吹き出し生温かな血が頬に触れるのを感じながら、最後の1匹の背中に刀を突き刺し、それを媒体にブラスターウルフの体内に電流を流した。


「ググゥ…グギャア…」


そして電流に焼かれたブラスターウルフは白目をむき、口から湯気を出しながら地面に倒れ数秒ピクピクと痙攣し絶命した。




「ふぅ…」


身体に纏わしていた魔力を解くと急な脱力感が襲い膝から崩れ落ちた。

そうするとシズクが駆け寄り、ハルトを支えた。


「バカ!!

準備もないのにいきなり2人して飛び出して、ケガが無かったから良かったものの下手すれば死んでいたかもしれなかったんだよ!!」


そうシズクは泣きながら心配していた。

どうせあのまま逃げてても土地勘のないハルト達がうまくに逃げれる確率は極めて低かっただろう。


「心配かけたみたいだな、スマン」


しかしハルトはあえて口にはだず、無理したことも事実であったためシズクへ素直に謝罪した。


「おう、なんとか生きているか?」


そうすると、ユーマが声をかけてきた。

ユーマも特に大きなケガはなく無事なようだ。

しかし、Yシャツの前が大きく裂け胸が開いている、おおよそブラスターウルフのかぎ爪に引っかかったのだろう。


「お前もな。しかし、危なかったみたいだな」

「紙一重ってやつだな」


裂けたシャツをピラピラさせ笑いながらハルトの側に腰を下ろした。


「シズク、ハルトの奴にもあれやってやれよ。こいつあのオオカミの血で汚れてるし。」

「まったく、2人して調子良いんだから…説教は後でだからね!」

「「はい…」」


シズクのプレッシャーに負け2人は頭を垂れうなだれた。

そんな2人を無視しシズクは精霊を呼び出した。


「アクア、この血まみれの子を綺麗にしてあげて。

フィナリス、その後に傷の回復をお願い。」


シズクは精霊にそうお願いするとアクアは頭から水を落とし綺麗にして、その後フェリスが傷口の治療をしてくれた。


(随分荒いな…)


などと感想を浮かべている間に傷口は完治し、ただの濡れネズミが出来上がった。


「ほら、2人とも着替えちゃって、そしたらジャック君の話を聞こう?」


そう言い、シズクは着替え(冒険者風)を渡し着替えるように諭した。


(あの少年はジャック君っていうのか)


いつの間に名前を聞いたのか不思議に思いながらハルトとユーマは着替え始めた。


最後までお読みいただきありがとうございます。

感想・コメント・指摘などあれば遠慮なくお願いします。


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