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3話―シノ―

シノ君登場!

 腕が……腕が折れそうだった。

 考えてみて欲しい、いきなり掌の上に標準的な体型の青年が現れる光景を。

 その青年は重力に従って垂直に落下、それを受け止めようと腕を差し出す。

 当然、受け止め切れるはずが無い。

 腕がバキッとならなかったのは奇跡だと言えよう。

 いや、この場合は肩が外れる方が先か?


「申し訳ありません。よく考えずに擬人化してしまい」


「あぁいや、それに関しては俺も悪かったから」


 すぐに謝って来た青年は見た目が18歳くらいで長身、長めに伸ばした空色の髪を後ろで一つに結んでいる。

 着ているのは漫画やアニメで見かけるような執事服。


 顔はイケメン、超イケメン。

 いわゆる美形と言われる部類だ。

 キレ目でつり目がちの俺とは違い、開かれた眼は柔らかい。

 そこから覗く碧の光も優しそうだ。


 俺もそこそこ容姿は整っている方だが、これは完敗だ。

 くっ……俺マスターなのに……。

 それはともかく。


「なぁ……いい加減この格好でいるのもアレなんだけど……」


 そう、今の状況を説明すると俺が仰向けになって倒れている上に、シノが四つん這いで覆いかぶさっているのだ。

 床ドンである。

 誰かに見られたら誤解を産みそうだ。

 まぁその心配は無さそうだけどな。


 ……なんだろう。

 今悪寒がしたような……。


「すっ、すいません!」


チッ


 何か聞こえた気がしたが気のせいだろうか……。


「おう、もう大丈夫だ。

 それで……やっぱりシノなんだよな?」


「はい」


「だよなぁ」


 うんうんと頷きながら胸をなで下ろす。

 これで現れたのが、『シノ君かと思った? 残念! コルティオーネちゃんでした』とか言って来る某ポンコツ駄女神だったら問答無用で殴りかかっていた。


「さて、取り敢えずのこれからの予定なんだけど……」


「はい」


「まずさ、その敬語やめにしない?」


「えっ?」


 だってそうだろう。

 これから長い間を共にするのだ。

 敬語で話しかけられていたら、なんとなく壁が出来ている気分になる。

 折角あまり歳も変わらないみたいだし、フランクにやっていきたいというわけだ。


 その説明をすると、納得はしてくれたようだが。


「なるほど、ですがそれは少し難しいです」


「えっ!? もしかしてシノちゃん反抗期!?

 こんな子に育てた覚えは無いのに……

 お母さん泣きそうだわ!」


「……」


「おい今めんどくせぇって思っただろ」


「はい」


「素直でよろしい」


 こうして話してみると結構仲良くは出来そうなんだが……。


「それはそうと、どうして?」


「この口調が私の素なんですよ」


 なーるほど。

 つまりは丁寧語で話す癖があるっているってことか。


「それなら、そのままで良いよ。

 けど俺とシノは、主従関係じゃなくて、あくまで相棒として過ごして欲しい」


「それは……」


「な?」


「……分かりました」


「よしよし。

 そう言えば素ってさっき言ったけど、俺が転生する前から生きてたのを俺が引っこ抜いたわけ?」


「いえ……トシヤが転生するに当たり、女神様が私という存在を創りました」


 Oh……それはかなりハードだな。


「なので、知識はありますが実際に体験した事はありません」


「そうか……」


「あと……私という存在が創られたものなので、等も創られたものに――」


「それ以上は言うな」


「――っ!」


「仮に創られた存在・性格であったとしてもお前はお前だろ?

 自分の存在を否定したら駄目だ。

 自分が自分を信じなくて誰が信じるんだよ。


 ――だから胸を張って生きろ。


 シノはシノで、俺は俺だ。

 どちらにも違いが合る、唯一無二の存在だろ?」


 俺がマスターである限り、そんな考えは許さない。

 まぁ主従関係はとっぱらったから今言っても強制力は無いんだが……。


「俺はお前と――シノと旅をしたい。

 それにシノが創られたとかは関係無い。

 俺はシノ自身をかっているんだ」


「ありがとうございます……ぐすっ」


 な、泣いてしまった……。

 だがこういう時に受け入れてやるのが男と言うもの。

 腕をバッと開いてこう叫ぶ。


「さぁ、こいっ! シノ!!

 俺の胸を貸してやるから存分に泣け!」


「あ、そういうのは大丈夫です」


「立ち直り早いな!」


 くそっ、これまでのシリアスな空気を返してくれ。

 けど……。


「もう普通に話せているだろ?

 この関係で良いんだよ」


「ふふっ、確かにこれくらいの方が居心地は良いですね」


「あぁ、改めて宜しく頼む!」


「こちらこそお願いします。

 トシヤ」


 上手くまとまって良かった。

 シノとは仲良くやっていけそうだ。


 だがまずはあれをせねばなるまい!


「よし、それでは早速気持ちを切り替えて」


「ガチャですか」


「……なんだその目は」


「いえ、本当にガチャが好きなんですね」


「当たり前だ」


 何を言っているんだ。

 ガチャは俺にとってのバイブル。

 まさに言葉通り、キリスト教徒にとっての聖書と同じくらい価値がある。


 それを懇切丁寧に説明すると、シノは諦めた様子で首を横に振った。


 何でだろうな。


「いいからガチャいくぞ」


「はいはい」


 ……呆れてるな。


「……はぁ。

 ところで【マジックガチャ】のシステムはどうなってるんだ?」


「あ、そうですね……では説明しましょう。

 【マジックガチャ】は敵を倒すとガチャポイントが溜まっていき、一定数溜まればガチャを引くことが出来ます。

 出てくるアイテムのレア度はN(ノーマル)R(レア)HR(ハイレア)SR(スーパーレア)UR(ウルトラレア)の五つ。

 ガチャの種類は、今はノーマルガチャだけですが、トシヤのレベルが上がると次のガチャが解放されていきます。

 10連ガチャもあって、10連で引くと各ガチャに決められたレア度のアイテムが必ず一個は排出される仕様になってます。

 あ、ちなみにガチャ画面はトシヤが死ぬ直前にやっていたソーシャルゲームの物を流用させて頂いてます」


 その話は忘れてくれ……。

 けど気になることを言っていた。


「ちょっと待て、レベル? ってことはステータスのレベルか?」


「その辺りも説明しなければなりませんね……

 トシヤはRPGのプレイ経験はありますか?」


「勿論」


 RPGはどの世代でもやったことはある人の方が多いだろうな。


「そのゲームのステータスとほぼ同じですね。

 『ステータスオープン』と言うと、自分にしか見えない半透明の板が出現します。

 そこにレベルやその他諸々の情報が……という具合です」


 まぁ、よくある設定だな。

 試してみるか。


「えっと……"ステータスオープン"」


 シノの言った通り、胸の前に半透明の板が出現した。

 ノートパソコンを触ってるイメージだろうか。


 ステータス坂を開いたのでやる事は一つ。

 ステータスを見ること。


「俺のステータスは……」




Name:藤堂俊也

Sex:Male

Lv.1

Skill

【言語理解】【アイテムボックス】【鑑定】【マジックガチャ】




「……情報少なくないか?」


 表示されているのが名前、性別、レベル、スキルだけとは少な過ぎる気がする。

 しかもスキルにレベルが存在しないのか?


「レベルがあるスキルは魔法系と武技系だけです」


「武技系?」


「剣術や槍術、盾術等の戦闘時に使うスキルのことです。

 スキルは魔法系、武技系、技術系、それらに位置しない特殊系の四つに大別されます。

 【言語理解】【鑑定】は技術系、【アイテムボックス】【マジックガチャ】は特殊系になりますね」


「色々とあるんだな……。

 だが、関係ない。

 そこにガチャがあって引かない理由があろうか、いや、ない!!」


 そう力強く宣言して気合を入れる。




 今からガチャタイムだ。




 そんなに冷たい目で見るなシノよ。


 ちょっと泣きそう……。

生前のトシヤ「ガチャを引く為なら何でもする。それが漢だ。課金はしない、身を滅ぼす」



課金のご利用は計画的に

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