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1話―使えないチート―

2月半ばに投稿した短編を冒頭部分として、改稿したものです。

ゆっくりゆっくり更新します。

一週間に一話を目指して!

 それが起きた日はいつもと変わらない日常を過ごしていた。

 いつもと同じ時間に起き、いつもと同じように学校に行き、いつもと同じように部活をして――

 そこにあるのはいつもと変わらない、平凡でありふれた日常だった。

 だが、それは突然起こった。


 ----------


 ある日の学校からの帰り際、今流行(はや)りのソーシャル・ゲ―ムのアプリを開く。


「やっぱりソシャゲの醍醐味はガチャだろ!」


 そう呟きながら、早速貯まったゲーム内通貨でガチャを引く。

 因みに俺はガチャが引ける状態にあったらすぐに引くタイプだ。

 ガチャのためにゲームをしているといっても過言ではない。


「お!」


 俺はスマホを握りしめた。

 画面上でクルクルと回っていた魔法陣の輝きが、銅→銀→金→虹色と色を変えながら段々増していき、アイテムが排出されたからだ。

 虹色の輝きの時は最高レア度を誇るアイテムが出現する。


「なんだこれ?

 アイテム【災厄の魂】?

 効果は――」


 効果を確かめようとしたその時、叫び声が聞こえた。

 うるさいな、と煩わしく思いながら顔を上げた俺の目に飛び込んできたのは、真っ赤に輝く信号。

 どうやら赤信号に気付かずに横断歩道を渡っているようだ。

 思わず横に視線を移すと、けたたましいクラクションを鳴らしながらトラックが突っ込んで来ている。


 見えている景色が全てスローモーションになる。

 ざわめき声が聞こえる。

 女性の叫び声も聞こえてきた。


 あぁ、とうとう死ぬ時が来たか。

 まだ高校生だったのにな……

 歩きスマホなんてするからこうなったのか……

 いよいよぶつかる瞬間……


 ………………


 ……………


 …………


 ………


 ……


 …






 ----------


「知らない天井だ」


 目を覚ました俺は辺りを見回してからそう言った。

 誰もが一度は言ってみたい(?)セリフだろう。

 いや、天井は無くただただ真っ白な空間が広がっているだけなのだが。


「取り敢えず俺は死んだってことでいいのか」


 そうだ、俺はトラックに轢かれて死んだのだ。

 まさにこの状況はラノベで良くある展開の一つ、『猫や子供を助けようとしてトラックに轢かれたら転生しちゃった』なんじゃないか?

 いやまぁ俺の場合は歩きスマホだから俺が悪いんだけど……。


 死ぬ直前にガチャで当てたアイテムは何だったっけ?


 分からない。


 そもそも今置かれている状況が飲み込めない。


 そうやって悶々としている俺の姿を見かねたのか。


「ようこそ、藤堂俊也とうどうとしやさん。

 ここは死後の世界です。

 貴方はトラックに轢かれて死にました」


 突然声が聞こえてきて目の前が歪み、純白の衣を着た何やらオーラを感じる幼女が現れた。

 そう、幼女である。

 俺は目が点になり、マジマジとその幼女を見つめた。


「な、何ですか?

 ロリコンなんですか!?

 優しそうに近づいてきて懐柔して。

 そして私は犯されてしまうんですか!?

 嫌です! それは嫌です! こっち見ないでください!

 しっしっ!」


「いや犯さねぇよ! そもそも俺はロリコンじゃない!」


「そんなこと言って私を油断させるんでしょう!

 私はそんな手に乗りませんよ!」


「待て待て、いいから落ち着け。

 ほら深呼吸深呼吸」


「嫌です! 落ち着かせていい雰囲気にさせてからいずれ犯すんでしょう!

 私は絶対に深呼吸なんてしません!」


 何故コイツは俺をそんなにロリコン扱いしたいのだろうか。

 というか、コイツは犯されたいという願望があるんじゃなかろうか。


「分かった分かった、じゃあ見ないから。

 そしてもう関わらないでおこう、いいね?」


「えっ?あっはい......」


 俺の見たところコイツは"構ってちゃん"だ。

 何故分かるかというと、俺もそうだったから。

 話題作りの為にソシャゲを始めて、友達ができたのはいいが、がっつりソシャゲにのめり込んでしまうという残念な結果に終わってしまった。



 それはともかく。



 構ってちゃんであるならば、放置しておけば向こうから接触を図ってくるはずだ。

 俺はもう構ってちゃんは卒業したから、無言になっても平気だ。

 いや、本当ですよ?

 あ、でも流石に長い間はもたないか……


「あのぅ……その……」


 ほら来た。

 やはり構ってちゃんだったのだ。


「……」


「……あの、聞こえてますか?」


「……」


「聞こえてますよね?

 絶対に聞こえてますよね!」


「……」


「あのっ! 実は私女神なんですよ!」


「……っ!」


「あっ! 今反応しましたよね!

 これでもう聞こえてないなんて嘘は通用しませんよ!」


 チッ。

 普通、あんな幼女が女神だなんてビックリするだろ。

 あれだな、ロリ神だな。

 だが、少々おつむが悪いようである。


「貴女がロリコンだのどーのこーの言ってきたから無視してたんですよ。ロリ神様?」


「ろっ、ロリッ!?

 言うに事欠いてロリ神呼ばわりですか!」


「だってロリコンって言ってきたって事は、自分がロリだってことを認めてるんですよ?」


「まっ、まぁ確かに、そうですが......

 でも他にも言いようはあったんじゃないですか?」


「例えば?」


「えーっと――麗しき女神様とか、神々しい女神様とか!」


「もうどうでもいいですよ。

 ところで俺は何でここにいるんですか?

 死にましたよね? 俺」


「なっ! はぁ。

 もういいです……」


 おっと落ち込んでしまったようだ。

 子供には少しきつかったかな? HAHAHA


「そうです。

 私は輪廻転生を司る女神コルティオーネ。

 藤堂俊也さん。

 貴方はトラックに轢かれて死にました。

 今貴方がここにいる理由ですが、貴方には異世界に行ってもらおうと思います」


「は? 異世界?」


「はい、異世界です。

 ラノベなんかでよくある剣と魔法の世界です。

 ラノベはよく読みますよね?」


「えぇ、まぁ。

 異世界転生ものとか好きですが……。

 それはまたどうして俺が?」


「貴方はまだ死ぬべきではなかったんです――とかいうもっともらしい理由は無くて、単純に暇潰しです」


 「暇潰しかよ!」


 「えぇ暇潰しです」


 少し不満は残るが例え神様の暇潰しとはいえ、死んだはずの人生がまだ続くのだ。

 有り難く受け取っておこう。

 どこか腑に落ちないが。


「さて、貴方には異世界『ウルムタ』に行ってもらいます。

 先程も言ったようにベッタベタな剣と魔法の世界です。

 貴方にはウルムタで生きていく為に、少しの間生きていけるだけの金銭と衣服、スキルの【言語理解】【アイテムボックス】【鑑定】を」



「【言語理解】と【アイテムボックス】と【鑑定】か。

 名前から俺が想像しているので多分合ってますよね?」


「そのままの意味ですからね」


 だけどこれだけだったら普通だよな……。

 そう、異世界転生と言えばお決まりの!


「あの……チートとかは貰えないんですか?」


 そう、これはとても大事なことだっ!

 チートを使って、俺TUEEEEEEEするまでが様式美と言うものだろう。


「あ、勿論ありますよー」


「イエスッ!」


 思わずガッツポーズしてしまった俺を、コルティオーネが優しい目――いや、あれは憐れみの目だ。

 やめろ! そんな目で俺を見るんじゃない!


「チートは【〜の魂】と言うスキルです」


 どういうことだ? 『〜の』と言ったということはまだ決まってないってことか?


 頭上にはてなマークを浮かべた俺に触れずに、コルティオーネは一人勝手に盛り上がる。


「あっ! 死ぬ直前にゲームで当てたアイテムの名前に『魂』ってついてますね。

 これを流用しましょう!」


「え、ちょっと」


「えっと……【災厄の魂ソウル・オブ・ディザスター】ですか?

 ……なにか気になりますが良いでしょう」


「ちょっ、今不穏な言葉が――」


「はいっ! 先程述べたスキルとチート能力の付与完了です!」


 まじか、コイツ話聞いてねぇ……。

 少し、と言うにはかなり大きな不安を抱えながら尋ねる。


「そのチート能力って何ですか?」


「えっとー、効果は――」


 コルティオーネが固まる。


 悪い予感がする。


「どうかしましたか?」


「あの……『使用者の運をとある条件下で下げる』 です」


「えっ? もしかして俺ってそのチートを持っていることになってるんですか?」


「……はい」


 うぉおおおおっ!

 何ということだ!

 運が悪かったら死ぬかもしれないだろ!

 というかそれチートじゃないじゃないか!


「それが俺のチート……ですか」


 はぁ、と溜息をついて頭を振りかぶる。

 このままじゃ俺の明るい異世界ライフがパーになってしまう。

 それだけはなんとしても阻止しなければ。


「うっ……。じゃ、じゃあ!貴方はガチャを引くのが好きだそうなので【マジックガチャ】を差し上げます!」


「【マジックガチャ】?」


「スキル【マジックガチャ】は、まぁガチャが引けるようになるスキルです。

 スキルを発動するとスマホが現れてガチャを引くことができます。

 ガチャからは便利アイテムや武器・防具等が手に入ります。

 ガチャを引くためには敵を倒していけば良いです。

 あ、あと一定値までは時間経過で貯まるようにサービスしておきました」


 なるほど、かなり有用そうなスキルじゃないか。

 色々買わなくても手に入る、というのはかなり助かる。


「有難うございます。

 そう言えば転生? ってことは生まれ変わるんですか?」


「生まれ変わってゼロからやり直してもよし、今の貴方の外見そのままでウルムタに行くもよし、の二択です。

 私はスキル的に転生するのはおすすめ出来ませんが……」


 確かに、自分の子供がわけの分からない物を取り出してそこからポンポンアイテムが飛び出して来たら、驚くとかのレベルじゃないしな。


「じゃあこのままということで」


「了解しました」


「あっ、そう言えば()()()の条件下って何ですか?」


「あっ、その、それはですね……ぁっ」


 コルティオーネが何やら「やばい」という様な顔を浮かべ、言葉を切った。

 沈黙がこの場を支配する。

 おいおい、やめてくれよ。


「ど、どうしたんですか?

 何かあったんですか!?」


「非常に申し上げにくいのですが......

 貴方の場合は、“ギャンブルの要素があるものをする時”です」


 ふむふむ......なるほど......って


「は!?」


 え、ちょっと待てよ。

 じゃあ......


「まさか、さっき追加で貰ったチート能力の......」


「はい――【マジックガチャ】のスキルを使うときにも効果は出ます」


「のおおおおおおおおおおお!」


 拝啓

 お父様お母様。

 どうやら私は異世界でチート能力が使えない状態で生活しなければならないようです。

歩きスマホダメ、絶対。

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