はち
御屋形!空からショタが落ちてキタコレ。
「た、た、た、大変ですぅ〜!」
あれ?いつものコケコッコーどうした?
茜の絶叫が響いたので、襖を開ける。
「なぁに?」
「へ、へんな格好した殿方が、空から落ちて、来たっす!」
はて?
空から落ちて来る人間…。
一・転移失敗。
二・異世界からの迷い人。
三・もしかしたら、天空のし…ゲフゲフ。
幻の有翼人族が落下。
四・茜の寝ぼけた勘違い。
「…四だな。」
「ちょっと、何勝手に納得してるです?
茜の寝ぼけた勘違いじゃ無いッスよ!」
あんるぇ〜?
声に出てた?
「んで、その殿方は何処に落ちたの?
まさか隠れ里の中?」
誤魔化すようにキリッと答える。
「はい、裏の林檎園の受粉をして居たら。
林檎園の真ん中の、休憩場所に。
空からふんわり落ちて来ました。」
「怪我は?」
「怪我は無いですが、意識不明でして。
今休憩所の長椅子に寝かせてます。」
「ふぅーん?年はどの位?」
「そうっすね、パッと見13〜15歳位の姿に見えたっす。
ただ、変なんっすよ。
見た目は人族なのに、気配が違うと言うか。
嗅いだ事の無い良い香りがしました。」
異世界からの迷い人の可能性が高そうね。
「まあいいわ。
私も見にいくから、案内して。」
茜の案内で、林檎園にたどり着く。
この時期は、林檎の花が咲いて居た。
梨は白だが、林檎は白と言うか桜より薄いピンクっぽい花を付けるんだよね。
桃は濃い桃色だけど。
桜とは違った花見が出来るから、目の保養で有る。
古来から有るような、日本風の果物や花や食べ物は、充実して居るので。
こういった景色は、一瞬異世界なのを忘れそうになる。
林檎の花を軽く眺めた後、視線を休憩所に向ける。
うはっ、どう見てもこいつ日本の中学生位の学生服着た男子じゃん!
クリクリの坊主頭が昭和臭を奏でるが。
部活か校則が厳しい所はそう言う事も有るらしい。
あどけない寝顔は、愛らしさも有るが。
この位の男子は、カッコつけ初めて女子と距離置きたがったり。
色々面倒な感じだ。
まぁ、女子は小学校高学年あたりから面倒な感じになるのだが。
まあ、それはいい。
迷い人な場合、召喚人と違って言葉の翻訳能力を付加されてい無いケースが多いらしい。
なんでそんな事知っているかって?
この世界の創造神パニマ様は、私にこちらの世界に転生させる時。
粘って理由を聞いたら、幾つか教えてもらったのだ。
千早は一応加護付き異世界転生、と言う扱いになるのだが。
それ以外にも、召喚人や迷い人と言うのがあり。
召喚人は神々の加護や、言語翻訳などが有るけど。
迷い人には言語翻訳などの能力が付与され無い、召喚事故として扱われるそうだ。
まぁ、ギフトなさそうな子だし。
厄介な事になりそうだな。
と、千早は少年を眺めた。
目覚めた少年は、キョロキョロした後、日本語でまくし立てた。
「あれ?ここ何処?
つーか、何あんた達?
え?モフモフ獣耳にエルフ?
コスプレ?え?」
案の定、テンプレ反応だった。
しかも微妙にウザい。
「御屋形様、此奴何話してるか全然分からないッス。」
…何だろう、茜が増えた気がする。
面倒な気配がする。
一方的に話す少年の言葉は、私には懐かしいが、茜には未知との遭遇だろう。
彼の独り言を纏めると。
「ヒャッハー!
俺異世界に召喚されたの?
勇者無双キタコレ。
可愛い娘ばっかだなあフヒヒ。」
あー、残念な思考の坊主だわ。
「残念ながら、貴方は召喚された勇者じゃないですよ?
だから、チートは全く無い迷い人だと思われます。
後、私前世日本人なので、変な独り言垂れ流しても、残念なの丸わかりなので。
追い出されたくなかったら、良い子にして居てくださいね?」
どう見ても異世界人の顔立ちの幼女に、ガッツリ突っ込み入れられて。
少年は固まった。
ギギギとこちらを向いて、じっと見てくる。
「こっち見んなw」
年頃の男子が知ってそうなネットスラングを呟く。
「おっ、おう。」
通じたらしい。
「御屋形様、外国語ですか?
茜の知らない言葉っすよ。」
「そのうち覚えて貰いますよ。
この子はここらの言葉分からないから。
私が教えます。
会話出来るの私だけだと可哀想だから、茜も覚えてね?」
「え?何で?」
「あんたが拾ったんだから、最後まで責任持って面倒見なさい。」
「せ、責任とか、そ、そんな。
茜恥ずかしいッス。」
真っ赤になってクネクネしている。
分かりやす勘違いです。
「学生君、偽名でイイからさ、名前はなんてーの?」
「え?偽名?なんで?」
この世界は結構奴隷とか、平民や獣人族を平気で使役駆使する治安の危うさと、その地に縛る効果が有るので。
本名バレは異世界だと捕まって身を滅ぼす危険を避ける為だと教えた。
「ん?ペンネームみたいなもんか?」
わかりやすい答え有難う。
「俺名前とかゲームでもすぐ浮かばなくて、ああああとかにしちゃう方なんだ。
だからあんたが決めてくれよ。」
脳筋か?こいつもやはり脳筋なのか?
溜息を吐いて、じっと相手を見つめる。
この世界だと希有な黒い瞳。
愛嬌の有る童顔な丸顔。
少し伸び始めたクリクリの坊主頭。
髪も漆黒は希有だから、伸びたら目立つだろう。
身長は150位だが、女子なら頭打ち。
でも、男子はこれ位から伸び始まるのでもう少し大きくなるだろう。
性格は、軽くオタク入ってるけど。
まあ、スポーツ少年みたいだから、ニートって感じでは無いな。
「源義経にしてやるよ。」
「へ?」
「私が源の棟梁。
うら若き御屋形様なのですよ。
私が身元引受人になったげるから、それっぽく素敵な名前付けてあげたわよ?
義経様って言うより、いっきゅー様って感じだけどね。」
明らかに名前負けして居るし、死亡フラグ満載の名前だけどね。
「え?俺そんなにイケメンなの?」
「義経様はイケメン説と影武者ブサ男が殺された説が有るんだ。」
スルーして答えたら、硬直してらっしゃる。
「俺影武者ブサ男じゃ無いもん。
えぐえぐ、ぐしぐし、メソメソ。」
豆腐メンタルだったー!
こうして我が家に、義経たんと言う義兄様(オモチャ二号)が増えました。
「コケコッコー!」
翌日、茜の声と共に何故か義経たんも鳴いて居た。
…もしかして義経たんは、女子の押しに弱くていらっしゃる?
今日も隠れ里は平和です。
迷い人義経たん(仮)の登場です。
因みに、オモチャ一号は茜です。
どんどん千早がどえすにシフトして居る気がする。
気のせいだよね?
これから千早は、義経たんにファーブラの共通語とかを教えるのと。
茜に簡単な日本語教えます。
アホの子同志、恋仲にさせようと企んでるわけでは無いです。
元気そうな人が、あまり会話が出来ないのは、辛くなると思う。
千早なりのツンデレです。
それでは又