にゃにゃ
茜視点です。
炎上する城を呆然と見上げる。
誰かの悲鳴も、武器の奏でる不協和音も。
茜の耳に、他人事の様に遠くに感じた。
その頃、茜は違う名前だったのだが。
細かい事はいいんです!
幼い茜の朦朧とした思考の中。
その身体を横抱きに助け出したのは、先代源氏頭領、御屋形様源義宗様だった。
30代前半の義宗様は、とんでもない屈強なイケメンさんです。
茜には眩し過ぎて、ガン見出来ません。
次に目覚めると、茜は包帯グルグル巻で布団に寝かされてました。
幼い身体に強い回復術は負担が大きく。
数日掛けて治療して頂きました。
本来なら、茜は小国のお姫様でした。
けれど、どこで見られたのか。
隠れ人族史上主義者に惚れられ。
獣人族を奴隷の様な扱いをする人族史上主義者が、正妻ですら無い側室的な婚約の申し出をして来た。
もちろん、そんな婚姻愛娘にさせるのは屈辱として婚約を断った。
その後、逆恨みで攻め込まれ。
戦力の元々低かった我が家は、私を除いて一族郎党斬首されました。
相手は義宗様に倒されましたが。
この身元は知れるとマズイので、くノ一茜として源氏の隠れ里に匿われ。
移り住んだのです。
茜はドジで物知らずですが。
元々姫様だったので、何も自分からした事が無く。
周囲がやってくれる環境に長く居た為。
くノ一としての振る舞いも。
女性的な家事炊事洗濯など、今だに上手く出来ません。
それでも、からかいながらでは有りますが。
源の前御屋形様も、今の千早御屋形様も、茜を暖かく見守ってくださります。
特に千早様は、いつも辛辣なフリして。
茜の見えない所で凄くフォローして下さるので、頭が上がりません。
あの方は、本当八歳とは思えない才女です。
見習いたいですが。
無理!と先に言っておきます。
茜の死を疑う人族史上主義者達から、今だに指名手配されて居ます。
なので、里から外出時は覆面必須です。
そう、先代様ご夫婦が亡くなられたのも、この人族史上主義者達が巻き起こす対獣人族や対エルフなどとの戦果の犠牲です。
先代ご夫婦も千早様も、人族ですが。
無差別に人族以外を害する人族史上主義者とは相反する考えなので。
人族以外を沢山匿ってました。
先代が亡くなられる少し前に、幾つかの種族は独立して旅立っしまいました。
独立した他の村との交流は、先代ご夫婦の死後数カ所だけ残りましたが。
音沙汰の無くなった者達の末路は、流石に分かりません。
明日は我が身。
気を引き締めて周辺警護をするしか無いのです。
朝早く、陽鞠ちゃんが朝食準備で台所へと向かって居た。
茜は陽鞠ちゃんの食事の支度が終わり。
千早様の起き上がる時間前までは、声を掛けずに屋形周りを走り込む。
屋根に飛び移ったり。
木と木の間も、飛び移る。
スルスルと降りたり登ったりする。
気配を消し、静かに動くのも忘れ無い。
時々周囲の気配を探る。
あれから10年、茜も多少は強くなった。
まぁ、手合わせでエルフの陽鞠ちゃんに今だに勝てないのは解せぬけどね。
なにが可笑しいって、エルフは本来なら獣人族よりか弱いのだ。
幾ら身体強化魔法の影響とは言え。
結界魔法の付加された鎧や扉とか、簡単にばきばきにするのだよ。
どーなってんだ?
あ、ソロソロ千早様の起き上がる時刻だ。
スゥッと大きく息を吸った。
「コケコッコー!」
今日も隠れ里は平和です。
実は茜ちゃんは、陽鞠ちゃんよりもドシリアス設定です。
彼女をメインに据えた不幸の大盤振る舞いより。
アホの娘として天真爛漫に動かす方が良いと判断したので、彼女が主役では無いのです。
さて、先代を苦しめ、三人娘を戦争孤児にした原因として散々出てくる名称、人族史上主義者達ですが。
時代的にアレクより後でマニ姫より前の時代になります。
因みに、戦国時代的な世界観の、治安が微妙な、別作品の国とはかなり離れた島国となっております。
戦国なので、群雄割拠し過ぎて島の名前は有りません。
外国からは、ニッポネア諸島と呼ばれています。
多分パニマ神命名っぽいのは秘密。
何と無く、異世界ファーブラのお話増やして見たけど、まぁ流れで。
それでは又。