GO!
染物織物とか
「また少し背が伸びましたね、御屋形様。」
「このくらいの子供は、竹の様にスクスク大きくなるっすよね。」
茜が私を細かく採寸しながら、陽鞠がメモを取って居る。
紡いだ糸から大きな反物を作り。
そこから着物や洋服などを作成する。
この世界の服屋は、糸を紡ぐ段階から遅れて居て。
布は機織りか木枠と木の杭(釘サイズの物)での手織り。
獣の皮をはいでなめした物。
又は編棒での手編みで作った物が中心だ。
手入れも入手も少なく、値段も高いから。
庶民はだいたい子ども時代に機織や裁縫をならい、服作りを覚えさせられる。
貴族も中には花嫁修行で、習わされる者達も居るらしいが。
本格的な物ではないそうだ。
例に漏れず、私も月一で新しい服を必要とする成長期な為。
陽鞠に習いながら、私も簡単な作業を手伝って居る。
まあ、まだまだ下手なので。
確実なクルミボタンとかポケットや。
多少よれても見え無い裏地、手持ちの小物入れなどだ。
裁縫は前世は苦手だったから、針が良く指に刺さって痛いです。
でも、物が溢れた。
あの使い捨て有りな前世と違い。
可愛いい服も物も少ない生活は、流石に淋しいから私は頑張って覚え中です。
糸の色が少ないので、染物も覚えられたらいいんだけれど。
(色が多ければ、タータンチェックや市松模様とか、複数の模様の有る布が作りやすくなる。
その辺りは、専門の本とか取り寄せないとダメだろうから、そこは夕日さんに探してもらって居る。
私が覚えたい物や、多少聞きかじりの事柄などは。
工業的な物や、農業的な物が中心なので。
口伝がまだ主流の庶民の文明では、専門書が中々確保出来無い。
もう少し大きくなったら、大きな都市の図書館的な所に行きたいと思うのだけれど。
まぁ、しばらくは霧隠さん達か、エルフさんの知恵袋さん方に聞く方式しか無いな。
「やはり、ここは可愛い浴衣が良いとおもいまーす。」
「んー、まだこの体格なら先月の浴衣で大丈夫かと思われますわ。
どちらかと言うと、秋口なので、厚手のエプロンドレスとか、長ズボンとか袴とか。
割烹着なども作って。
収穫の汚れを半減させたいわね。」
「絞り染めもいいですが。
茶染めと桜染めと、桑の実染めを組み合わせて、ロウで模様を白抜きする方法を入れる実験にはどれも良さそうです。」
千早の言葉に、茜も陽鞠も頷く。
養蚕して居ると、桑の葉は使うし。
その桑の実は、木苺みたいな木の実で。
甘い酸っぱく美味しい。
けれど、口の中が紫と言うかドドメ色に染め上げ。
中々色落ちし無い、まさにザ・染料と言った木の実だった。
ただ、私の知る染料と、染物の多少の知識を持っている住人の情報にしても。
5種類しか知らなかった。
他の里の人から聞いてもやっと10種類だ。
女子たちには、好みの色や柄が切実な程欲しいのだから協力的だ。
少ない男子には、材料集めを頑張ってもらっている。
紅茶で染めた柔らかな薄い茶色の布を、千早は取り出した。
「ねえねえ、これ紅茶染めなの。
思ったよりも、薄く柔らかい感じに色付いたから、これで作業シャツとかイイカナ?」
「おお!お茶とはまた色味が違うっすね。」
「確かに汚れが目立たなそうなのに、濃い色では無い落ち着いた色合いですね。」
感心した様子です微笑む二人。
作ったのは紅茶染のシャツと白のエプロンドレスと、桜色のワンピースと割烹着。
それらの裾には、ロウで唐草模様や三角や四角を白抜きしている。
ロウを塗ったのは千早だ。
やはり、簡単な作業を手伝って居た。
自分が手伝って作った物は、気持ちが入るのかかなり大切にする。
男子のように転がり回ら無いから、物持ちはいい方なのだが。
里の女子たちよりは、長持ちさせていたと思う。
数日後、早起きした千早は、完成した桜色のワンピースを着てニコニコしていた。
「コケコッコー!」
茜も朝の一鳴き。
「おはよう茜。」
「あ、新作っすか?
ロリピンク幼女爆誕っすか?」
「誰がロリピンクや!」
「細かい事はいいんです!」
「この笑顔、殴りたい。」
「ちょっと⁉御屋形様!
オッケー、落ち着こう、な?
拳を下ろして、話し合いましょ?
って!ふぎゃっ!」
拳を止めて、スパーン!とハリセンで叩く。
ズベッと地面に伏す。
音は凄いが、それ程痛くは無い。
どちらかと言うと、その音が耳の良い茜には天敵だったようだ。
耳を押さえて悶絶していた。
「またアホの茜を倒してしまった。
千早は罪な女ね。」
「うう、最近御屋形様は、茜に容赦無くなってるっす。
優しさプリーズっす!
「あらあら、朝御飯の用意が出来ましたわ。
ふふっ、茜ちゃんダメよ?
御屋形様は桜色のワンピース似合うって褒めなきゃ、なのに変な事言ってはだ〜め。」
「はぅ、ごめんちゃい。」
「まったくもう、…食卓に行くよ。」
溜息ついて、先に食卓へと向う。
食事の後、日課の茜のもふもふ尻尾をブラッシング。
今も気持ち良さそうに、狐耳をピクピクさせている。
茜は基本美味しいご飯と、ブラッシングしてあげると機嫌が治る。
まさに単純さんである。
それを横目に、陽鞠はやれやれといった微妙に生温かい視線を、チラリと投げて来る。
今日も隠れ里は平和です。
茜がボケ、千早がツッコミ、陽鞠がフォローのフリしてトドメ役です。
それでは又