にじゅうはち
あの後、取り敢えずパニマ様と家康様に念話。
すんごく焼け石に水だろうが女神様達が家康様の気配に気づいて館へ訪れた事を報告した。
「ん!了解だよん。
まぁチハヤンはスルースキル高いからこういう時助かるよ。
ワザワザありがとね。」
と呑気なパニマ様の返事。
「あ…ワザワザすまない。」
とぎこちなく答えが返って来る。
わたしはそれに応える事も無く、念話を切った。
業務連絡対応だ。
実はこの二人、館の結界内に居るのだ。
私の結界の中に、クレアさんやパルーニャさんが創り上げた異空間が有り。
部屋なのに作物や果物が生い繁り、綺麗な小川が流れ食べるには困らない環境になって居る。
小鳥や小動物も居て、無機質では無い。
無茶な訓練をしても自動修復し、何時でも住める居住区画も有る。
そこには更にパニマ様と家康様の二人が練り込んで創り上げた結界が有って、豪華な訓練所や避難所として用意されていた。
なまじっか上位神の血筋な為か、そこは二人の女神様には感知出来なかったようだ。
その所為だろう、二人の女神様に段々八つ当たりされる様になった。
「ねぇ?どうしてパニマだけじゃ無く家康の加護持ちなの黙って居たの?」
「加護持ちなら分かるはずよね?居場所。」
「居場所はわかりません。」
「なら連絡は出来るわよねぇ?祈りついでに。」
「報告はしておりますが、ご多忙なのか以前から余りお返事有りません。」
「本当役に立たない娘ねぇ?
折角だしぃ?加護止めて頂いたらどうかしら?」
「そうね?身の程知らずは早く加護を解除して頂いたらどう?
パニマの加護だけでも宝の持ち腐れでしてよ?」
などと数時間置きにネチネチ口撃が始まって、ほとほとウンザリする。
加護解除はもう言ってあるし、余計な御世話だコンチクチョー!
だが、私が未熟で気も回らない馬鹿女扱いは別にスルーすればいい。
だが、この里の者達への悪口は、ダメだと分かっていたのについ反応してしまった。
「あと何?あの鶏の真似して吠えてる馬鹿狐、アレ何なの?」
「アレは無いわよねぇ。
ぷぷっマヌケ過ぎるわ。」
「い、いい加減にしろよクソビッチども!
女神様だと思って我慢してりゃあ良い気になって何言ってんだ!
茜は私の家族、馬鹿にするんじゃねぇよ!」
「何をイキナリ吠えてますの?」
「煩え性格ブス!
そんなんだからどうでも良いのに好かれて、本命男が逃げるんだろう!
馬鹿じゃない?」
礼儀正しい言葉を捨て、噛み付くように吠える。
初めは面食らってキョトンとした二人だったが、反抗されたと知ると、逆上し始めた。
「無礼者め!
そんなんだからそなたは愚かなのだよ。」
「無礼な…家康の加護だけで無く、パニマの加護も取り上げさせよう。
ほんに見る目が無いのう。」
「好きにしな!
私は全てを返納し、ただ人となりて世界に消えよう…ん?むっ!」
そう言って、祝詞を唱える。
加護を解除と能力返納の術をだ。
その最後のフレーズを止められた。
いや、塞がれた。
柔らかな家康様の唇で。
微かに酒の香りがした、それは苦くて甘い大人のキスだった。
触れる様な優しいキスでは無く、貪る様な…。
その唇が離れる頃には、千早の身体のチカラと言うか腰が抜けた。
少し彼女には刺激的過ぎるキスだった様だ。
「俺は加護を解除するとは言ってない。
ったく、もう!
勝手に俺の者じゃ無くなるんじゃ無いよ。」
そう言って、家康は千早の事を抱きしめながら頭を撫でた。
そして、何か騒ぎ出した女神二人を睨み、二人に呟いた。
「俺はあんたらみたいなの、タイプじゃねぇんだ、悪いが帰れ。」
そう言って、指をさすと二人は消えた。
彼女らの世界に次元移動させたようだ。
だが、腰が抜けた千早はそれどころじゃ無かった。
「なぁ千早ちゃん…パニマの世界での一生終えたら、俺の妻として召し上げたいんだけど…駄目かな?」
「へ?」
「あ、勿論ヤマハとしても、君の事を愛すると誓います。」
「は、ハイ私も貴方の事を愛すると誓います。
って…え?」
「はい、言質取ったど!」
ラブラブしている二人をニマニマしながら割り込むパニマに千早は真っ赤になって狼狽える。
そうして、千早は家康と結ばれる事となったのだが。
彼女以外にも、今後奥さんが増えて行く事案には、今はまだ気付いて居なかった。




