じゅうはち
モソモソと布団から這い出る。
今朝は何だか身体が怠い。
又熱が出たのだろうか?
ふと視界がブレる。
「ん?」
眩暈?
キュィィィィィィィン!
小さな小さな高周波が聴こえる。
「よん…でる?」
フワリと身体が空中に浮かぶと、千早の意識はブラックアウトした。
次に目が開くと、空間が普通ではなかった。
階段が上にも下にも張り巡らされ。
壁を通じて捻れた螺旋階段が出来上がる。
その先には幾つもの部屋が有った。
まるで童話のウサギ追い掛けるトリップ系幼女か、サイケなデザインアートである。
あからさまに夢だと思われるが。
ここは、ファンタジー世界観。
何かの魔法の様な気もする。
「魔法…だとしたら、囚われた?」
意味がさっぱり分からない事は、通常スルー方針ですが。
命の危険が有るかもしれない。
助けが来るか不明。
と言う二つの事だけでも、これから慎重に頭を巡らせなくてはならないだろう。
ココが肉体込みなのか魂のみなのかでも色々方針は変わるのだが。
取り敢えず少し頬をぺちぺちし、手の平を軽くつねる。
「痛くない、と言うか触れた感覚が無い?
誰かの夢に囚われた…一体誰に?」
そこまで思い巡らせて、有る事に気付く。
今日は義経兄様と共寝をした。
彼の心の迷宮だろうか?
まだ断言は出来無い。
スゥっと目を細め、千早は集中した。
少し前から気になっていた事が有る。
そもそも彼の魂は、本当に中学生なのだろうか?
「異世界に転移事故して来る者は、若返る事が稀に有るんだ。」
と言う話を、この前家康様がしてくれた。
まぁ正確には、異界渡りのお仕事の話を聞いた時に、ついでに教えてくれたのだ。
召喚者と違い、次元の歪みに引き摺られ、異世界に迷い込む者は、心に何かしら歪みを抱える者が多かったりする。」
「歪み?ですか?」
「うん、悲しい別れが有ったり騙されたり。
愛されなかったり。
まあ、心の隙と空間の隙は、昔から相性が良いんだよ。
逢魔が刻って言葉や神隠しも、その類なんだけどね。」
「義経兄様も、何かしら歪みを抱える者?」
「かもしれないね。
次元移動する時に、色々修正を図ろうとするんだよ。
その人本人も受け入れる世界も。
大抵は、能力や容姿あたりがガラッと変わるんだけど。
元の世界に戻れれば、元に戻るけどね。」
最後は苦笑しながら言葉を続ける。
「まぁ、歪な変化は、色々負荷が掛かって魔力暴走したりなんて事も有る。
義経君もそう言う系統かもしれないから、気を付けてあげて欲しいな。」
そう言って、私の頭を撫でてくれた。
うん、多分これ家康様の言う魔力暴走だわ。
私が取り込まれたのは…。
きっと私が誰なのか、魂で気付いてしまったのか…。
余計な思考を止め集中した。
ここからどうやって避難しよう?
新展開です。




