じゅうなな
井戸端会議状態で、中庭に有る井戸側の四阿で途方に暮れるパルーニャちゃんとセレナちゃんとクレアちゃん達。
彼女らは、私同様あのマジカル巫女セットをほぼ強制で渡されて居た。
パルーニャちゃんはコスプレ経験者らしく。意外と馴染んでましたが、他は困惑してましたよ、ええ。
因みに、金髪碧眼のパルーニャちゃんは、小型のハープに緑色のセーラコートをウエストで止めて、下はキュロットスカートと白いオーバーニーソックスが見えるかんじ。
赤銅色髪の赤目のセレナちゃんは、柄の部分に黒い肉球が付いた短剣に。
パルーニャちゃんのセーラコートをオレンジ色にし、更に長くし。
左右にスリットの入った特攻服に、黒スパッツにブーツ履いてます。
薄紫髪色藍色目のクレアちゃんは、白地に薄い水色ラインで、凄くシンブルな水兵服のようなセーラーワンピースです。
私はこの世界で珍しい漆黒の髪に金目、白と真紅の巫女アレンジ魔法少女服。
これは最早、性格が出るって事になのか?
不思議に思ってパニマ様に聞いてみると。
「あ、バレタ?
まぁ、イメージで多少はデザイン変わるよ。
何も考えないで着ると、その人に一番似合う服になるのさ。」
「なるほど。
所で主役色のピンクは居ませんが?」
「僕のヒロインは、今回連れてこなかったからね!」
…何を言っているのでしょうか?
私が首をコテンと傾げると、隣の地球の神家康様が苦笑している。
「あー、彼のお気に入りさんは、厳重な結界で監き…ゲフゲフ。
保護されてるから、一人足ら無いのは仕様だよ。」
え?今監禁って…。
トリッキーなパニマ神様に魅入られたお方には、南無としか言いようが有りません。
触らぬなんたらに祟り無しです。
魔王様からは逃げられ無い的な、パニマ様からは逃げられ無い。
ここは、気付かないふりをするのが乙女の対応でしょうか?
けれど、少しだけお節介。
「もしもそのお気に入りさんを泣かしたら、教えて下さいまし。
私がお気に入りさんの味方になりますね。
思い通りにならない女の子を泣かすのは、殿方としては最低ですし。」
小声で家康様に呟くと、何も言わず無邪気に破顔して頭を撫でてくれた。
家康様は、女性にモテソウデスネ。
と、少しだけ頬を赤らめながら思った。
うん、強くてさりげなく気配り出来る優しい男は人気高いからなぁ。
この人神様でなかったら、多分この里で一番人気だったと思う。
つーか、既にロックオンしたのか、陽鞠の目からハートビームでとるよ。
ヤレヤレ、流石に馬に蹴られたく無いから放置だな。
そして、又鈴の対象外具合が悪化する件。
つーか、家康様鈍感なのか気付いてない?
「あっ家康様、うちの女衆は男ロックオンすると、即夜這いなんで。
ファイトなのです?」
さぁーっと青ざめる、家康様。
分かっててスルーしてたっほいな。
「うん、ちょっと転移して来る。」
そう言って、家康様は逃げた。
もしてして女難系男神なのか?
生暖かい眼差しで空を見上げる。
所で、もう一人の加護持ちで男子のジン君だが、黒騎士様みたいな格好になっていた。
本人は、ゴテゴテして嫌なんだそうだが、ぶっちゃけ格好良過ぎる。
義経兄様は、それに対応した様な、白騎士様みたいな格好だった。
見てくれはゴテゴテしてるが、防御力がかなり上がり、とても軽いらしい。
因みに、パニマ様と家康様は何故か日本風のサラリーマンスーツ&サングラス装備姿で浮いていた。
「クールビズなんだぜ?」
と言われたが、世界観丸で無視っすか。
何処のエージェント?
と言った感想しか無い。
まぁ、ショタ姿でないのでパニマ様も似合ってますけども。
家康様は板についてますね。
まあ、そんな感じで新しい装備訓練とかやってました。
一人じゃないから、恥ずかしくないもん!
嘘です、すげえ恥ずかしかったんだすけども、頑張ったよ。
それから数日して、源の里の近くが戦場になった。
華麗なパニマ様の加護持ちのマジカル巫女姿の活躍は、本当に少しで終わってしまった。
アレです、足軽軽いよ的な無双で。
剣や杖を振るう度、魔物達は簡単に一掃。
何かもう、魔族も弱すぎて可哀想な感じになってました。
結局、倒した魔王幹部はイケメン揃い。
捕らえた魔王は綺麗な、青銀髪に青い目、肌も青いダークエルフ風の見た目で、可愛いというよりは妖艶なお姉様でした。
「くっ殺せ!」
と、あまりにど定番なセリフをはいたため、ちょっと男性陣が吹いていた。
パニマ様が完全に彼女の能力を無力化し、力を取り上げ。
魔力も戦闘技術も完全に私よりか弱い人になりました。
そうしたら、彼女は凄く涙目で鎖に繋がれてます。
何だかこっちが悪役みたいで、何ともいたたまれませんよ。
「何でこんな事したの?」
と聞いたら、周囲の過激派が暴走し。
持ち上げられて、やったそうだ。
元々戦闘がしたかった訳でもないのだが。
潜在能力が高すぎて、周囲がガッチリ形にハメて逃がしてくれなかった。
差別的な背景も有り、半分仕方なし半分無理やりだっようだ。
まぁ、何処まで本当かは不明ですけどね。
その後、彼女はパニマ様によって、そこから姿が消えた。
ファーブラへの転生違反者は、死とは別で転生身体を得る資格を失くす。
魂だけになるのだから死亡と変わら無いと思うのだが、そこに死の痛みや恐怖は無い。
生身をサクッと失くすだけなのだ。
まぁ、有る意味理不尽な感じだよね。
流石神様って所ですかね。
因みに、その残った魂は地獄の反省部屋的な所で怒られる、らしい。
反省が見られたら転生できるし。
反省もダメそうなら魂消滅なんかも有るのだそうだ。
その辺りは良くわからないので、気にしないでおく。
次の日の朝、茜がいつものように、コケコッコー!と鳴いていた。
あ、折角仲良くなった加護持ちの皆さんは、ここに住む事になりました。
クレアちゃんは里の真ん中に時計塔を建て、そこで生活しはじめ。
パルーニャちゃん達三人は、ここを足場に世界を股にかけての大冒険の日々に戻って行きました。
さて、なんだかんだともうすぐ二年がたちました。
そうです。
義経兄様の今後をどうするのか。
私は考えない様にしています。
多分、義経兄様が地球に帰ったちゃったら、凄く泣いちゃうだろうから。
桜の花の蕾が綻んだ頃、千早はぼんやりと空を見上げた。




