表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/29

じゅういち

急展開?

最近、義経兄様が変なんです。

そわそわ私を見たかと思うと、目があった途端真っ赤になって何処かに走って行きます。

…うざいから殴りたい、あの笑顔。

多分変身見られてから挙動不審なので。

アレが義経兄様の厨二心が刺激されたんだと思う。

変な妄想してそうでやだなぁ。

義経兄様の顔は悪く無いのに、いちいち残念な感じがするんだよね。

茜同様、いい人なんだけどねって言われそうなタイプだわ。


一方そのころ、本当に妄想して居た。

「お兄様になら、変身見られても、イイよ?

…うはっ!なんてな!」

ゴロゴロゴロゴロ!

「あの巫女アレンジの魔法少女服すげえ可愛かったよなぁ。

てか、あの姿御屋形様の成長後?

あと9年後か〜。

今のロリロリ姿も可愛いのに、成長したら可愛いくて綺麗になるとか反則だよな。

あの姿でお兄様とか言うんだぜ!

禁断の薫り、うはぁ、たまらん。」

自室で転がりながら、妄想ブツブツ垂れ流しで有る。

どう見ても腹パン祭り待った無しです。

しかし、少しして横になる。

悪ふざけの顔から真顔に変わると、溜息を吐いた。

「なんてな、多分あんな大量の能力追加とか今後ヤバイ事がありそうだよな。

俺、ここで多少戦闘訓練して貰ってるけど。

実戦未経験だから、いざって時ここの人達護れるのかな?

でも、まだ八歳の女の子を、戦闘の矢面に立たせたくは無いよな。

なんか、俺より強そうなのがアレだけど!」

ムクッと起き上がって、部屋を出る。

「考えるのやめやめ!

師匠に鍛えてもらおう、そうしよう。」

脳筋は、考えるより動けだった。


数日後、千早によって隠れ里の結界魔法が、重ね掛けされ強化付与されて居た。

住民に説明はされなかったが、魔力持ちは気付いて居た様だ。

けれど、千早のやる事に基本文句は言わない住民にとっても、結界魔法は命に関わるから文句など無かった。

せいぜい先日降臨なさったパニマ様の意向だろう、と推察するに留まる。

この結界魔法の影響で、周辺の魔物がガッツリ減り。

世界樹などの近くにある聖域でしか咲かないような貴重種の花や動物が、隠れ里の中に誕生すると言う副産物をもたらした。

花を咲かすのは世界樹イグドラシルの子供達と呼ばれる大木になる神樹で、千年を超えると世界樹に従属した木の精霊を宿すとも産み出すとも言われている。

名の通り、植物を司る精霊に愛された土地は、豊かな恵みをもたらし、繁栄する。

花は美味しい木の実を宿す。

桃の実に似ているが、体力低下状態異常病気怪我魔力低下など、大抵なんでも治すと言われる万能薬エリクサーと同様の効果があり。

種は基礎能力値を少し底上げしてくれる。

どちらも調合錬金すれば、練度もあがる代物だ。

花が咲いたのは、千早の所有地だったから。

問題無く、広い中庭に移し植えて隠した。

今の所他に無いので、露見したら奪い合いが始まる。

里全体に芽吹くようなら、里全体で隠さなくてはならない。

他に無い貴重種は、特に権力依存の有る貴族王族人族史上主義者にばれたらヤバイのだ。

この手の貴重種を巡る戦争は、よく有る。

やっと仮初めでも平和になったこの里を、花やタネごときに滅ぼされてはかなわない。

いや、折角の貴重種を大切にし無いで、ごちゃごちゃ煩い連中はアウトなのだ。

だから、慎重に隠した。

知っているのは、我が家の者だけなので、口止めは問題無かった。

しかし、我が家以外に露見した後の対応を、陽鞠と話し合っている。

もう一つの予想外の出来事だが。

茜の所に勧誘しに来て居た狐人族の者達が、結界が強まったら、潜入出来なくなったようで、気配を感じなくなった。

やはり、ただ茜を引き抜くだけで無く。

この里を襲って、里の者達。

特に人族の私を、奴隷にでもする算段だったのだろう。

ただ茜を呼ぶだけなら、里の位置位はわかるはずなのだ。

結界の中から彼らがウロウロして居ても。

こちらの気配も匂いも感じられなくなったのがよく分かる。

これは、茜には知らせないでおこう。

多分知ったら少なからず悲しむ。

そして、同族に失望するだろう。

けれど、もう少し私達が強くなって里から出ることがあれば。

いつか知るだろう。

茜の同族の裏切りを。

踵を返して、千早は部屋に戻った。


「御屋形様〜七の段からわかんないッス。」

アホの娘は、幼女から九九を習うも、残念ながら覚えきれていなかった。

「だから、茜!

あんたに上げた九九の表どーしたのよ?」

「寒かったからこの前うっかり火種に…痛い痛い痛い!

御屋形様!梅干しぐりぐ痛いッス!」

「この前は鼻かんだよね?

その前は紛失したわよね?

何度言っても分からないから、肉体言語って大事よね?」

「へ、変身してお仕置きは、アレだけは勘弁して下さい。

マジ死ねるッスよ!

っふぎゃぁぁあ!」

シリアス放置で、茜といつも通りのやり取りである。

因みに、茜は力強くも体も硬い獣人なので、人族で幼女の力など、本気でも実は痛くも痒くも無かったりする。

殴ったとしても、千早の手の方が痛くなるだけだろう。

このやり取り、実は大人っぽい千早を子供として構う為に、わざわざ茜がアホの娘のフリごっこをしている。

茜も相当捻くれているのだが、千早はまだそれを知らない。

「あらあら、仲がよろしいですわね。

でもそろそろ夕食の時間ですよ?」

微笑ましい物を見る様に、陽鞠が声を掛けてくる。

その黒い笑顔に、ガリガリ何かが削られる二人だった。

「陽鞠ちゃんが不機嫌ッスね?」

「あー、婚約者さんと喧嘩したみたいよ?」

「そ、それは…。」

陽鞠の背中に般若が浮かんで居た。

大人しい人は、怒らせると怖いのだ。

「い、今すぐ行くッスよ!」

二人はガクガク頭を縦に降りながら、陽鞠を追いかけて行った。

八つ当たりからの逃走、もしくは逃げるが勝ちである。

因みに、喧嘩の原因は結界魔法を使える千早を、エルフの里に招待して。

エルフの里でも結界を付加させたい。

と言う要求だ。

まだ幼い千早を、隠れ里から出す危険に反対して、珍しく喧嘩になったのだ。

世話になっている幼子を、婚約者は利用価値でしか見れ無なっただなんて。

とショックも受けて居たのもある。

隠れ里の外に千早が安全に出られるようになるのは多分15歳の成人後だろう。

彼女の能力は、幼子にしては高過ぎる。

万が一、人攫いにでも狙われたら。

我らだけでは守りきれまい。

それに、私はエルフの里に住まないと決めている。

そうで無くても、命を助けられた恩を返さずに彼らはこの隠れ里から離れたのだ。

術を要求するなど、恥知らずにも程が有る。

だから、反対した。

もしかしたら、この婚約が流れる事になったとしても。

陽鞠は千早を守るためならば、なんでもするつもりだ。

陽鞠の悲愴な決心に気づかないまま。

千早と茜の心は、もう夕食の事しか考えてなかった。

「ご飯〜ご飯〜ご飯は美味しい〜炊きたてご飯〜。」

茜は謎鼻歌を歌い出した。

微妙に音痴である。

「ぷっ!」

流石我らのシリアスクラッシャー茜様。

陽鞠は耐えきれず笑っちゃった。

「あったかご飯〜」

千早も続く。

「もちもち〜ツヤツヤ〜お米が立ってるあったかご飯〜。」

茜はまだ引き出しが有ったらしい。

陽鞠は悶絶していた。

こんなおバカな日が、ずっとずっと続いて欲しいと。

三人娘が同時に思って居たあたり、三位一体である。


次の日、茜がコケコッコーと鳴かなかった。

茜と陽鞠が血相を変えて屋敷を探し回る。

千早の布団に血糊を残し、忽然と千早が消えて居た。

布団は刀傷があり、誰が、どうやってこの強力な結界に入り込み。

千早を連れ去ったのか。

ほんの一瞬、眠りの魔法の匂いを嗅いだ気がした。

その気配を確認する間も、抵抗する間も無く眠りに落とされる。

茜も、陽鞠もそんな強い眠りの能力の使い手は知らない。

「あれ?義経君も居ない?」

「本当だ…さっきの血は…もしかして。」

慌てて千早の寝室に戻る。

茜が血の匂いを嗅ぐ。

「千早様じゃない、義経君の血だわ。」

「彼が潜入者から、千早様を…庇った?」

青ざめる二人。

結界は何処にも綻びが無い。

里から千早が出たら、付与した魔法で二人には分かるようになって居るが、出た形跡も無い。

里の内部に犯人が居る。

けれど、この千早様の結界は、彼女の意識無く外に出られなくして有る。

まだ、何処かに潜伏して居るはず。

慌てて外に駆け出した。

バリバリバリバリ!

チュドーン!

外に出た途端、爆音が聞こえた。

そこに、マジカル巫女姿の千早が、足元に陽鞠の婚約者を踏んづけて、地面にキスさせて居た。

その後ろで、傷口を押さえながら。

義経が別の狐人を縛り上げて居る。

「本当、この縁談終わったわ。

私の話聞いて無かったでしょ。

御屋形様を害する愚か者と、私が婚姻結ぶとでも思ったの?

舐めないでくれる?

あんたサイテー。

エルフの里とあんたとは縁切りね。」

失望した冷たい陽鞠の声に、婚約者エルフは蒼白になる。

言い訳も声が封じられて何も言わせてもらえない。

そのまま、縛られた狐人の住人と共に、バシュンと結界の外へと追い出された。

もう一人の狐人の住人も、外の狐人族の口車に乗せられて。

あのエルフの婚約者と結託し、事に及んだらしい。

彼らは知らなかったのだ。

千早も義経も、パニマ神から新たな能力を付加されて居たなんて。

幼子だから簡単に浚えると、多分舐めて掛かったのだろう。

尚、たまたま千早に呼ばれた義経は、完全にとばっちりで巻き込まれた模様。

果敢にも千早を守ろうとしたけど。

やはりとっさ対応にはまだ弱く、手傷を負った。

「義経兄様…マジドジっ子!」

「え?そこ、ドジっ子なの?

助けてくれた兄様優しいとかかっこいいとかじゃないの?」

すると、シラ〜ッとした空気が流れる。

「千早たん俺に冷たいっ!」

ガビーんとなって居る義経の手傷を治す。

「まぁ、無理はしないでね。

…有難う、義経兄様」

いいツンデレ有難うございました。

と、空気を読んで、心で呟く義経だった。


そんなわけで、陽鞠がフリーになった日になりました。


チョットシリアス寄りの急展開。

これで、陽鞠もフリーになってしまいました。

それでは又

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ