天国へようこそ
重たい瞼を開き、
天井もなく宇宙のように広い真っ白な空間を見上げる。
自分が何をしていて、
どうしてここにいるのか。
自分が何者なのか何も思い出すことができない。
しばらく思い出そうと抗ったが、
諦めたように重たい体を起こした。
正面には自分の何倍にもなる壮大な扉と2人の門番らしき人が目に入った。
それ以外は何もなく、
真っ白な世界に浮かんでいる自分と扉と門番。
何が起こっているのか整理できていない頭をフル回転させていると、目が合った
門番が突如口を開いた。
「天国へようこそ」
扉の向こうに広まる景色は、まるで昔の京都のようであった。木を基盤とした、全体的に茶色に統一されて連なる建物。
生きてきたときに見ていた風景とは全くもって似つかない。
人の服装は昔ながらの着物であったり、ミニスカで袖がない着物が改良されたものや普通に洋装であったりと、建物とは違いこちらは様々だ。
2人の門番に挟まれながら歩いていく中で見渡して分かるのは、この程度だろう。
門番は私に、確かに『天国へようこそ』と言った。聞き間違いではない。確かに、そう言ったのだ。しかし、この風景を見るとその自信も一気に喪失してしまう。天国など来たことないのだから勝手にイメージしていたこととはいえ、自分が思っていた天国のイメージとは大きく異なりすぎた。もっと、永遠に続いているかのように広がるお花畑、草原の中で白衣のように真っ白なワンピースに身を包み、楽しく会話して毎日を送れるような気がしていたのだ。こんなことを言うと、絶対笑われるだろうなと乾いた笑いを零した。
「どうだ、思っていたところと全然違うだろう」
「うえっ?!あ、はい…」
さっきまでだんまりを決め込んでいた門番が急に喋りだすものだから、動揺を隠しきれるはずもない。




